アーティスト・鈴木このみのライブイベント「鈴木このみ 5th Live Tour ~CurioCity~」の東京公演が5月26日、TOKYO DOME CITY HALLにて開催された。

  • 「鈴木このみ 5th Live Tour ~CurioCity~」

ニューシングルを引っさげた東名阪ツアーのラストを飾ったこの公演でも、ツアータイトルに繋がる彼女の好奇心からくる挑戦も織り交ぜつつ、バリエーション豊かになった彼女の持ち曲を生かす構成となっていた。

■1曲ごとに表情を変える、多面的な魅力を発揮したライブ序盤

オープニングSEの流れるなかバンドメンバーが入場し、最後に鈴木がメインステージ中央に立ち「Nice to Me CHU!!!」でライブスタート。冒頭フレーズを歌ってから花道まで出て行き、ファンを煽って本格スタートへ。のっけから超楽しそうな、伸びのいいパワフルな歌声に“ライブアーティスト”としての姿をみせると、1サビ明けには客電も灯って恒例“今日のラッキーさん”を観客から選出。

鈴木と掛け合うラッキーさんのノリのよさも相まっていきなりライブは大盛り上がり。2サビ明けには2階ステージに上がってコール・アンド・レスポンスも交わし、さらに場内のボルテージを上げる。

と、続く「Redo」で鈴木の表情は一気に凛としたものへと切り替わる。髪を振り乱しながら、観客側へとボーカルを打ち出してくるかのような勢いで歌う鈴木。2サビ前のシャウトで観客もノセながらも、そのすごみで場内を呑んでいくかのようでさえもあった。

かと思いきや、直後に歌った初披露曲「Sparking light」は快晴だったこの日の天候にもリンクするような、タイトル通りの爽快ロックチューン。優しさも感じられるような後味の歌声を響かせながら、アリーナ・スタンドとも笑顔で視線を交わしていく。

そして頭のフレーズを高らかに歌い上げてから再び力強く突入したのが「AVENGE WORLD」。冒頭から激しい楽曲だが、サビで感情をより爆発させつつ、歌いながら拳を突き上げて観客も先導。スポットに照らされてからの大サビの力強さにも、思わず視線が引き込まれるようなかっこよさがあった。

ここまでだけでも、1曲ごとにスイッチの切り替わる非常に面白い構成のセットリスト。しかしこの日の初MCで、鈴木はさらに「今日は、すごいことになりますよ!」と宣言。「私の好奇心を詰め込んだライブ。でもひとりだけの好奇心じゃなくて、みんなで一緒にワクワクできるツアーを作っていけたら!」と意気込みを語ると、「My Days」のイントロでダンサーが登場。

歌唱中もダンサーとのやり取りを交えたり、サビでは揃えてのダンスを披露しながら、歌声の力は決して疎かにせず、魅せつつ聴かせていく。さらに2サビ明けにはダンサーとのフォーメーション展開も生かしたコンビネーションダンスを披露。

ショーのような魅せ方の1曲としていた。そのダンサーが降壇してのミドルロック「運命のEngagement」はAメロを若干引き気味のアプローチにし、サビとのコントラストをより明確なものとする。落ちサビでも細く細く入ると自然と大サビへと向かって広がっていき、圧倒するというよりも聴かせるナンバーとしていた。

■魂そのものが歌に宿る、中盤の聴かせどころ

2曲歌ってのMCでは、「セットリストを組んでいくうちに、やりたいことがどんどん増えてきた。そうして夢や目標、好奇心に満ちたものが出てくるのは、本当にみなさんのおかげ」と感謝を述べると、「ここにいるみんなと、今まで関わってくれたすべての人に感謝を込めて」との言葉に続いて歌われたのは、アコースティックバージョンの「歌えばそこに君がいるから」。

青のライトに照らされながらピアノ1本をバックに優しく歌い始めると、他の楽器も加わってからの1サビでは大きく広がるような世界観を歌声で表現。2番からは曲に呼応した鈴木の心の動きが、歌声に生々しく反映されていく。Dメロはもはや歌声に乗せた鈴木の心の叫びであり、単なる言葉以上のメッセージだった。

また、Eメロは演奏の一切ないアカペラで、両腕を広げて観客の顔を少しずつ見回しながら、歌詞通り聴いてくれるすべての“you”のために歌っていた。しかもそこから、「Love is MY RAIL」という未来への夢と愛とを歌った楽曲へと繋がる構成も、また非常にエモいもの。

ブルーの客席の輝きを前に再び、エネルギッシュにステージを展開していく鈴木。2サビ明けには2階ステージへと駆け上って、Dメロを全開で歌って自らのメッセージとして届けると、それに呼応してか落ちサビでは一斉にウルトラオレンジが、夕陽のように焚かれる。その光景の美しさと大サビのコールに向けて「ありがとう!」とシャウトし、鈴木は一旦ステージを降りた。

刹那の暗転中、ツアーロゴが光を放つと2階ステージに鈴木が再登場し、タップダンスを披露。とくればお次は最新シングル収録のタップダンスをフィーチャーした曲、ツアーのテーマ曲でもある「Curiosity」の始まりだ。三味線奏者の匹田太智もステージに登場し、鈴木はイントロでも続けて音源同様にタップダンスを披露。

もちろん気持ちよさそうに楽しそうにボーカルを響かせながら、間奏でもそのタップをバシッと決め、2サビ明けには三味線ソロとタップとの掛け合いになるような見せ場も。まさしくこの曲こそ、ひとつのショーのような魅せ方の曲として、ひとつチャレンジを成功させてくれた。

ちなみに裏話として、タップダンス習得のために毎週千葉まで通っていたと曲明けに明かした鈴木。この和と洋の組み合わせも自身の好奇心から来たものだと改めて語ると、同じ編成でもう1曲「BE THE ONE」を披露。比較的テンポの速い曲ではあるがイントロにしっかりタップダンスも織り込みつつ、それでいて腕などの振付には少々オトナ感も。

2サビ明けの間奏では三味線ソロとタップにシンセストリングスも融合するというさらに新鮮なセッションをみせると、最後までパワフルに歌いきったところで鈴木は一旦降壇。三味線ソロを経て、「I say “Happy day!”」のイントロで再び鈴木が登場すると、満開笑顔でポップなナンバーをタイトル通りハッピーに歌唱。Bメロでは再び観客から大きなコールも起こり、ショーの第二幕が始まったかのような印象を与えてくる。

さらにそのまま続いたハイスピードな「yell! ~くちびるからはじまる魔法~」でも、引き続きポジティブに明るくファンを乗せていく。2番では2階ステージを上手から下手まで往復しながら、会場全体と視線を交わし、多幸感ある歌声や表情をもってファンと繋がっていった。

そしてダンスナンバー「One day sky」では、Bメロでは再び登場したダンサーと歌いながら振付をきっちり揃えて踊り、大サビ前には鈴木の先導で一斉にジャンプしたりと“一緒に楽しむ”という方向性は残しつつ、大サビ冒頭のアカペラでの圧巻の力強い歌声ではボーカリストとしての強い姿も示していた。