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【この記事のエキスパート】
アウトドア&旅ライター・編集者:大森 弘恵
オートキャンプ雑誌、アウトドア雑誌の編集部を経て、フリーランスに。
現在はアウトドア(おもにキャンプとウインターアクティビティ、野外料理)、旅をテーマに雑誌やWEBマガジンで活動。
趣味は30年ほど前からはじめた国内外でのオフロード・ツーリング&キャンプ。最近、ハンモック泊の心地よさに感激。
キャンプやアウトドアで人気の燻製器(スモーカー)。肉や魚、ナッツ、チーズ、ゆで卵などをスモークするだけで驚くほどおいしくなります。しかし、熱燻や温燻、冷燻によって選ぶ燻製機も変わってきます。そこで本記事では、燻製器の選び方とおすすめ商品を紹介します。
燻製機とは
燻製器とは、木材を熱して出てくる煙で、食材を燻すための機器です。使う木材には、スモークチップとスモークウッドがあります。
燻製器によって、どちらかしか使えない場合、どちらも使える場合があります。まずは、このちがいを理解しましょう。
●スモークチップは「熱燻(ねつくん)」に
スモークチップは、燻煙用の木材の破片です。バーナー、ガスコンロなどで加熱して高温にし、出てくる煙で燻製にします。燃焼時間が短く、燃え尽きやすいため、高温・短時間でスモークする「熱燻(ねつくん)」というスモーク法に向いています。バーナーなどで燻製器を外から加熱し続ける必要があり、段ボール製の燻製器は燃えてしまうため、使用できません。
●スモークウッドは「温燻(おんくん)」に
スモークウッドは、燻煙用の木材の固まりです。スモークウッド自体に火をつけて、煙を出します。中温で長時間かけて燻製にする「温燻(おんくん)」に向いています。逆に、高い温度で加熱し続けると燃え上がってしまうため、「熱燻」には向いていません。また、スモークウッドそのものを燃やすため、換気が必要で、空気孔のないタイプの燻製器では使用できません。
燻製器の選び方
野外料理のプロである大森弘恵さんへの取材をもとに、燻製器を選ぶときのポイントを解説します。
【1】スモーク方法で選ぶ
「熱燻法」は初心者の方でも作りやすいのが魅力
「熱燻法」は、80~140度の高温で燻煙をかけるスモーク方法です。温度管理がかんたんなので、燻製づくりが初心者の方でもチャレンジしやすいのがうれしいポイント。食材と燻煙スペースを確保すれば省スペースでも調理可能ですし、コンパクトサイズでもじゅうぶんに熱燻法が楽しめます。
乾燥時間が短いため保存には向きませんが、作ったらすぐにその場で食べることの多いアウトドア向きだといえます。
「温燻法」はじゅうぶん煙が循環する燻製器を選んで
「温燻法」は、30~80度ほどの温度で燻煙をかける方法です。一般的に燻製といわれるものは「温燻法」のことを指すことが多く、数時間から一日かけてじっくりと燻煙します。完成した燻製の水分量は50%と高めなので、長時間の保存には向きませんが食材の口当たりが柔らかくなるのが特徴的です。
温燻法は煙がしっかりと循環しなくてはいけないため、ある程度の大きさがある燻製器を選んでください。
「冷燻法」はアウトドア向きではない
「冷燻法」は、15~30度ほどの低温で長時間燻煙をかける方法です。温燻法よりも長い時間燻製しなくてはいけないことと、食材の下処理に時間がかかるため、基本的にアウトドアには向きません。
完成した燻製は水分が40%ほどになるので、長時間の保存が可能になります。いろいろな燻製料理にチャレンジしてみたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
【2】サイズと形状を選ぶ
燻製器のサイズや形状を選びましょう。
●大型か、小型か
燻製器が小型であれば、固まり肉や丸ごとの魚など、大きな食材はスモークできません。しかし、小さな燻製器は扱いやすく、煙の量も、燻す時間も少なくて済むというメリットがあります。また、小型の燻製器は持ち運びしやすいというメリットがあります。
●深型か、浅型か(縦置きか、横置きか)
一般に、大型の燻製器は深型で、縦に長い(背の高い)構造になっています。大型の食材を吊るしてスモークすることができます。一方、浅型のものは一般にコンパクトで、構造もシンプル。大型の食材はスモークできないものの、扱いやすいことが多いです。鍋のように丸い形のもの、お弁当のように四角い形のものがあります。
初心者がはじめて燻製器を買う場合は、小型の浅型のものから気軽に始めてみるのがいいでしょう。大型・深型の燻製器を選ぶなら、庭に設置しっぱなしにできるなど持ち運ぶ必要がない場合を除き、折りたたみタイプや組み立てタイプで、小さく収納できるものを選びましょう。
【3】しっかりと食材を煙に当てることが大切
燻製はしっかりと食材に煙が当たらなければいけないため、煙が漏れにくいつくりの燻製器を選びましょう。煙がたくさん出ても、密封度が高くなければ意味がありません。煙が燻製器の横から漏れずに、しっかりと立ちのぼるように抜けるものがいいでしょう。
燻製器の密封度がどれくらいなのかは、商品紹介を見るだけではわかりにくいため、製品を選ぶときは口コミもしっかりとチェックしましょう。
【4】使いやすさをチェック
【エキスパートのコメント】
ふたの開閉がラクで、網をしっかり支えるものを
ふたを大きく開けられると、食材を置いたり、スモーク具合を確認したりということがラクにできます。スモークチップやスモークウッドの確認・追加もかんたんです。
しかし、ふたの開閉に手間取るようなものだとせっかく安定していた温度が下がり、煙も逃げてしまいます。ふたの開閉を素早くおこなえることも、重要なポイントです。
また、使っているうちに熱によってゆがみ、網が落ちやすくなるモノが稀にあります。網を支える台やフックが、しっかりしていることも大切です。
【5】メンテナンスしやすさ、後片付けのことまで考えて
【エキスパートのコメント】
汚れる部分は取り外して洗えるものがおすすめ
燻製器を選ぶときには、使いやすさだけでなく後片付けのことまで考えることが大切です。
スモーク後の食品はいい風味がついていますが、使用後のスモーカーにはタールや脂分がべったり付着しています。これがイヤなニオイの原因となるのです。そのため、細部までしっかり水洗いできる燻製器であれば、ニオイが残りにくくなるでしょう。
とくに、深型スモーカーは手が届きにくいので、壁面をバラバラにして水洗いできるもので、なおかつ組み立てがラクなものがベストです。
【6】求める燻製のレベルに合わせて選ぶ
初心者向けの、家庭で手軽に楽しめる簡易スモーカーも
アウトドアでなくても、家庭のキッチンや、卓上ヒーターでも燻製が楽しめるモデルが増えています。家庭のガスコンロや電気コンロ、IHヒーターに対応したマルチ熱源対応のモデル、百均で買える固形燃料や単3電池を使って手軽に使えるモデルも登場しています。
家庭用の燻製器は一般に浅型コンパクトなもの、鍋型のものが多いのが特徴。また、燻製以外にもいろいろな料理が楽しめる汎用タイプも多くなっています。
本格的な燻製はできないけれど、短時間で簡単に煙の風味をつけることができる、安くて手軽な簡易スモーカーも登場しています。初心者さんは、こうしたモデルから始めるのもいいですね。ただ、燻製による保存性は望めないため、そのままでも食べられる食材を選び、作成後はなるべく早く食べきるようにしましょう。また、屋内で使えるモデルでもある程度の煙やニオイは出てしまうので、換気をしっかりしながら使ってください。
本格派は、温度管理しやすいものを選んで
本格的に燻製にこだわりたいと思ったら、重要なのは燻製器内の温度管理です。
燻製器を屋外で使用する場合、風などで温度が左右されやすくなります。最適な温度をキープできなければ、燻製時間が長くなったり水分がじゅうぶんに抜けきらなかったりして、えぐみが強くなってしまうのです。厳密に温度管理するためには、温度計の付いているタイプか、温度計を後付けできるタイプがいいでしょう。
逆に、温度が高くなりすぎると、食材が焦げてしまうということも。コンパクトな燻製器では、熱源と食材の距離が近いため、とくに焦げつきやすくなります。これを防ぐためには、ある程度深さのある燻製器を選ぶ必要があります。
高さ調節や吊り下げフックがあれば燻製の幅が広がる
燻製器は、ひとつでいろいろな食材を燻製できるものを選びましょう。網棚の枚数が多く、高さ調節ができれば燻製する食材の量を増やすことができます。また、吊り下げフックが付属されていれば、魚やお肉などの大きい食材の燻製も可能です。
川辺でキャンプをしているときに、釣った魚を吊り下げフックに吊るして燻製にすれば盛り上がること間違いなしです。
選び方のポイントはここまで! では実際にエキスパートが選んだ商品は……(続きはこちら)