ファミリーマートがいよいよ7月1日よりスマホ決済アプリ「ファミペイ」の提供を開始する。その特徴や他社のPayサービスとの違いを明らかにすべく6月27日、ファミリーマートは都内で説明会を開催した。

  • ファミリーマートの「ファミペイ」って、どんな特徴のサービス?

オールインワンの設計思想

ファミペイは、ファミリーマートがiOS / Android向けに提供するアプリ。コンセプトにも「クーポンもポイントも決済も。毎日のお買い物を便利で楽しくするオールインワンアプリ」とある通り、クーポンの提示、ポイントカードの提示、代金の支払いを同アプリひとつで完結するサービス設計だ。

  • ファミペイの利用イメージ。7月1日よりApp Store / Google Playストアからダウンロード可能になる

ファミリーマートでは顧客にファミペイを普及させ、バーコード決済「FamiPay」の利用を促進していく方針。他社Payより優位なポイントとして、ファミマ店頭で現金チャージできるほか、収納代行(水道・電気・ガスの支払いなど)にも対応するとしている。アプリに実装される機能は以下の通り。

・おすすめ商品のクーポンを会員属性や購買履歴などをもとに配信
・スタンプ対象商品購入により、スタンプが自動的に貯まり、すべて貯まるとクーポンやゲーム挑戦権が付与される
・お買い物内容をスマホで確認できる「電子レシート」機能
・ネット通販「Kaema(カエマ)」との連携
・「FamiPay回数券」でお得にお買い物(2019年8月予定)
・dポイント、楽天スーパーポイント、Tポイントとのアプリ連携(2019年11月予定)

  • アプリを開くと、トップ画面にバーコードが表示される仕様。これをレジで読み取ることでFamiPayの決済が完了する

  • クーポンのほかにも、スタンプを貯めたり、FamiPay回数券を利用できたりと買い物を楽しくする機能を実装。買い物の履歴は電子レシートで確認できる

クレジットカードの「ファミマTカード」ならオートチャージできる。ゆくゆくは銀行口座とも連携させるとしている(2019年秋を目処)。会員登録も簡易化されており、電話番号、郵便番号、生年月日、性別のほか、パスワードを設定するだけ。筆者も実際にテスト機を触ってみたが、分かりやすくシンプルなUIが印象的だった。これなら、スマホに詳しくない人でも使いこなせそうだ。

お財布のいらないコンビニを爆速で

登壇したファミリーマート 代表取締役社長の澤田貴司氏は「お客様の利便性の向上を第一に考えました。また加盟店の皆さんのオペレーションが簡易になり、仕事の負担を軽くすることも重要だと捉えています。ファミペイは、お客様とのコミュニケーションを深めるとともに、店舗における省力化を実現するもの。日本のキャッシュレス化を推進していきます」と意欲的に説明する。

  • ファミリーマート 代表取締役社長の澤田貴司氏(右)。社長自ら、全国の研修を回ってファミペイの使い方をスタッフに徹底させたという

ファミペイの開始にあわせ、ファミリーマートでは大規模なキャンペーンを行う。経営企画本部の植野大輔氏は「当社ではお財布のいらないコンビニを爆速でつくっていきたい。そのため、お客様にはとてつもなく大きなお得を用意しました」と意気込む。そして指で8を示すと、競合他社を意識して「7ではなく8です。末広がりで縁起の良い8」と強調した上で、『ファミマ商品など総額88億円あげまくっちゃう』キャンペーンを行うと発表。まずは7月に、登録した全員にファミチキなど無料クーポンを配布し、チャージするだけで最大15%のボーナス還元をすると説明した。

  • 経営企画本部 デジタル戦略部長の植野大輔氏

  • 『ファミマ商品など総額88億円あげまくっちゃう』キャンペーンを実施

同社では数値目標として、2020年度内にアプリ1,000万ダウンロード、2022年度内にキャッシュレス比率50%(他社決済含む)を掲げる。最後発ではあるが、その言葉には”コンビニが変わらなければ社会が変わらない”という自負が感じられる。

「ほかのコンビニでもPayサービスが始まりますが、一騎打ちは望むところ。競争することで、国内のキャッシュレス化も進みます。いま、現金が溢れているのはリアルの小売の現場。コンビニでキャッシュレス化が進まなければ、日本のキャッシュレスは進まないと考えています。ファミリーマートでは、お財布レスの取り組みを進めていきます」(植野氏)

  • 会場には、ファミペイ公式キャラクター「ファミッペ」が登場した

ちなみに、全国で約1,000台導入しているセルフレジもFamiPayを含むバーコード決済に対応する見込み。そしてセルフレジは今期4,000台を導入し、今年度中に累計5,000台になるという。徐々にあちこちのファミマで、レジに並ぶ必要がなくなりそうだ。

非接触型の決済には対応する?

質疑応答に、澤田社長と植野氏が対応した。

他のコンビニでは、ポイント還元を利用して食品ロスをなくす取り組みを進めている、という指摘に澤田社長は「ファミリーマートでもやっていきます。現金の値引きが良いのか、ポイント還元が良いか。いま数十店舗の規模で実証実験しており、間もなくその結果が出るところです。お客様のお得、加盟店の負担などを勘案した上で決めていきます」と回答した。

  • 多機能のファミペイ。今後、非接触型の決済には対応する?

88億円あげちゃうキャンペーンが経営に与えるインパクトについて聞かれると、植野氏は「全額が販促金というわけではありません。還元する商品、ポイント、ボーナスなどを含めた総額が88億円ということ。従来のアナログだった販促をデジタルにシフトする側面もあり、すでに事業計画の中に盛り込まれています」と回答。

また、非接触型の決済サービスへの対応について聞かれると「現時点では検討していません。というのも、『買い物をどれだけ便利にするか」という観点で考えています。非接触型の決済を導入してもクーポンがある場合、結局、紙やカード類をお財布から取り出さないといけなくなってしまう」(植野氏)と説明。顧客の利便性を必ずしも高めないという理由で、非接触型の決済には興味を示していない様子だった。