Microsoftは米国時間2019年6月19日、Windows 7およびWindows 8.1向けに、Chromiumベースの新Microsoft Edge(Canaryチャンネル)をリリースした。Windows 7は2020年1月14日に延長サポート期間終了を迎え、残すところ半年でEoS(End Of Support)となるWindows 7向けに新Edgeをリリースした理由は、Windows 7のシェアが大きいからと見る。
日本マイクロソフトが提示した数値によれば、2018年12月時点でWindows 7が稼動しているデバイス数は、法人が約1,581万2,000台、個人が約1,107万7,000台。合わせて約2,688万9,000台だ。同社はEoSその日を迎える段階でも、約1,750万5,000台のWindows 7が残存すると見込んでいる。
現在も、仕事用PCのOSがWindows 7という読者諸氏は多いことだろう。筆者が身近に感じる例として、いろいろな発表会でスクリーンに動画が流れるとき、Windows Media Playerのコントロールが現れる場面があると、「この企業もリース期間の関係でWindows 10に移行できないのだろう……」と残念に思ってしまう。
Microsoftは、Windows 7とWindows 8.1向け新Microsoft Edgeのリリースについて、「サポート対象となるすべてのWindowsとmacOSで、常に最新のプラットフォームと同一の開発者ツールを提供する」と述べている。Microsoftの開発者向け年次イベント「Build 2019」では、Internet Explorerモードサポートを発表するなど、新Microsoft Edgeの企業内利用をうながす意図が見え隠れした。
さらにMicrosoftは、新Microsoft Edgeの利用者増で得られたフィードバックやテレメトリーデータを用いて、ソフトウェアの品質向上を目指す狙いもあるはずだ。この流れで考えるなら、一部で噂されているLinux版の新Microsoft Edgeのリリースもあながち否定できない。
個人的には、ブックマークや拡張機能の同期はマルチデバイスで利用するWebブラウザに欠かせない機能だと思う。しかし、旧Microsoft Edgeは同期ロジックの変更に伴う不安定さがあり、新Microsoft Edgeは開発途上ということもあって、最新バージョン(77.0.197.0)でサポートしているのはブックマークと設定の同期のみだ。
今回リリースしたWindows 7とWindows 8.1向けの新Microsoft Edgeも、ダークモードやAAD(Azure Active Directory)サインインの未サポートなど、見劣りする部分は少なくない(Microsoftは「間もなく解決」と述べている)。
Microsoftがユーザーコミュニティーの意見を吸い上げながら開発を進めているのは重々承知している。だが、新Microsoft EdgeがGoogle ChromeやMozilla Firefoxユーザーの関心を引くためには、よりアジャイルな開発が必要ではないだろうか。新Microsoft Edgeに期待を込めて、開発陣には奮起を期待したい。
阿久津良和(Cactus)