住んでいる地域の一般経費をまかなうために徴収される「住民税」。この住民税は、基本的には誰もが支払う義務のある税金ですが、一定の要件を満たす場合には、減額されたり免除されたりすることがあります。また、非課税対象となると、社会保険料の負担が軽減されるといった優遇措置も受けられるのです。
そこで本稿では、住民税が非課税になる要件や住民税非課税世帯のメリット、デメリットなどについてご紹介しましょう。
住民税の仕組みとは
まず、そもそも住民税とはどのような税金なのか解説していきます。住民税とは、その地域の費用を負担するために徴収されるもので、「所得割」や「均等割」などから成り立っている税金です。
所得割とは、前年の所得金額に応じて課税される住民税です。税率は10%で、そのうち6%が道府県民税、4%が市町村民税となっています。ただし、税率は全国一律とは限らず、地方自治体ごとに決められるため、標準税率である10%より高い税率や低い税率を課しているところもあります。
一方の均等割とは、一定以上の所得がある人なら均等に課税される住民税です。均等割の標準税額は、道府県民税1,500円、市町村民税3,500円の合計5,000円です(いずれも年額)。なお、2014年度から2023年度までの間は、復興財源に充てられるため、500円ずつ(合計1,000円)増額されています。また、自治体によっては、森林環境保全などの財源として300~1,200円程度を超過課税している場合もあります。
住民税が非課税になる要件は
では、住民税が非課税になるのはどのようケースなのでしょうか。住民税の所得割が非課税になる場合と、所得割と均等割の両方が非課税になる場合の要件を見てみましょう。
所得割が非課税になるケース
所得割が非課税になるには、前の年の総所得金額等が次の項目の金額以下のケースです。
・控除対象配偶者や扶養親族がある場合
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+32万円
・控除対象配偶者や扶養親族がいない場合
35万円
所得割と均等割が非課税になるケース
所得割と均等割が非課税になるのは以下のケースです。
1.その年の1月1日現在、生活保護法による生活扶助を受けている場合
2.障がい者、未成年者、寡婦(夫)で、前年中の合計所得金額が125万円以下の場合(給与収入では204万4,000円未満の場合)
3.前の年の総所得金額等が次の項目の金額以下の場合
・控除対象配偶者や扶養親族がある場合
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円
・控除対象配偶者や扶養親族がいない場合
35万円
なお、均等割が非課税になる基準は、各自治体の条例で定められていますので、お住まいの地域ごとに詳細の確認が必要です。
住民税が非課税になる年収の目安
それでは、具体的には年収がどれくらいだと住民税非課税世帯(世帯全員が所得割と均等割どちらも非課税の状態である世帯のことを指す)となるのでしょうか。
一人暮らしで非課税になる年収は?
独身の会社員の場合、所得金額が35万円以下で住民税が非課税となります。年収としては、100万円以下です。
給与所得控除は年収によって変動するものの、最低65万円を差し引くことができます。給与収入から給与所得控除65万円を引くと35万円になりますので、逆算して考えると、年収は100万円になるというわけです。
非課税世帯の年収の目安は?
それ以外の家族構成ではどうでしょうか。夫婦(配偶者を扶養している)二人の場合では年収156万円、夫婦と子ども一人の世帯(配偶者と子どもを扶養している場合)では年収205万円以下で住民税が非課税となります(給与所得者の場合。いずれも東京23区などにおける基準を元に計算)。
住民税が非課税だと受けられる優遇措置
住民税非課税世帯には、低所得者層を救済する目的で、様々な優遇措置が設けられています。どのようなものがあるのか確認してみましょう。
国民健康保険、介護保険、高額療養費制度における自己負担額の軽減
所得によって、国民健康保険の保険料が減額されます。東京23区の場合、所得に応じて2割から7割の減額となりますが、詳しくはお住まいの自治体に確認が必要です。
高額療養費制度においても軽減措置があり、自己負担分上限額が低く設定されます。また、住んでいる自治体によっては、介護保険サービスの自己負担額が軽減される場合もあります。
臨時福祉給付金の支給対象になる
臨時福祉給付金は、平成26年に実施された消費税率引き上げによる低所得者層の負担軽減を目的に給付されるものです。この「低所得者層」とは、住民税非課税世帯を指しています。
臨時的な措置で毎年支給額に変更があり、また、今後いつまで継続して支給されるかわからない給付金である点には注意しましょう。
NHKの受信料が免除になる場合も
住民税非課税世帯で、家族に障がいを持つ方がいらっしゃる場合には、NIKの受信料が免除になります。また、自治体によっては、保育料の減額、予防接種が無料になるといった恩恵もあります。該当される方は、一度自治体に相談してみてください。
住民税非課税のデメリット
住民税非課税世帯には様々な優遇措置が用意されています。では、住民税が非課税となることでデメリットはあるのでしょうか。
たとえば、子どもや親を扶養していた場合、住民税非課税世帯としてのメリットを享受するために「世帯分離」を行ったとします。すると、これまで適用されていた各種の所得控除が受けられなくなり、世帯主の所得税や住民税が増額されることがあるのです。
世帯分離とは、同じ住所に二つの世帯が住むことを指し、それにより「住民税課税世帯」と「住民税非課税世帯」に分けることができます。ただし、世帯分離を行うことによって、控除による税額の軽減がなくなり、場合によっては課税額が高くなることがあるので、慎重な見極めが必要です。
住民税非課税の要件に該当する場合は手続きを
このように、住民税非課税世帯は、住民税が非課税になるだけでなく、保険料や医療費の軽減、臨時福祉給付金の受給など多くの優遇措置があります。
例にあげたように、全てがお得になると安易に考えることはできませんが、もしご自身が非課税の要件を満たす場合は、お住まいの自治体にて必要な申請を行いましょう。