7月5日より全国劇場にて公開される映画『GOZEN -純恋の剣-』は、東映と東映ビデオが立ちあげた「映画」と「演劇」の融合を目指した新プロジェクト「東映ムビ×ステ」の第1弾として制作された本格"時代劇"作品である。

物語の時代設定は徳川二代将軍秀忠の「元和」時代。北陸にあった府月藩の藩主・望月甲斐正が選りすぐりの武芸者たちを集め、"御前試合"を行うというシチュエーションを同じくして、「映画」と「舞台」で異なる物語が描かれる。

映画『GOZEN -純恋の剣-』の主人公は、犬飼貴丈演じる青山凛ノ介。その凛ノ介と激しい恋に落ちる美しい娘・神谷八重を演じるのは、ドラマ・映画など幅広いジャンルで活躍を続ける優希美青である。"時代劇版ロミオとジュリエット"というべき情熱的な恋愛模様に挑んだ際の心境や、映画撮影時の裏話、時代劇ならではの苦労話など、興味深いエピソードを話してもらった。

優希美青(ゆうき・みお)。1999年生まれ、福島県出身。2012年、ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを獲得し、芸能界入り。2013年にはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』でアイドルグループGMT47のメンバーで、東北出身の小野寺薫子を演じて知名度を高めた。また2015年にはNHK連続テレビ小説『マッサン』で、主人公マッサンとエリーの養女・エマ役としてふたたび朝ドラへの出演を果たした。『名探偵コナン』の大ファンで、コミックスやアニメグッズをコレクションしている。撮影:大塚素久(SYASYA)

――今回の映画『GOZEN -純恋の剣-』は東映京都撮影所で撮られた本格的な時代劇作品ということですが、優希さんはこれまでに時代劇への出演経験はありましたか。

テレビドラマで一度だけ時代ものの撮影をしたことがあります。ですが、時代劇の本場といえる京都の撮影所で、これだけ本格的な作品に出演したことは初めてでした。

――最初に台本を読まれたとき、率直にどんな思いを抱かれましたか?

難しい役柄だと思いましたね。登場した瞬間で、「この女の子は病弱なんだ」ということを観ている方に伝わるように演じなければならない、という部分もそうですが、八重の場合は身体こそ弱いものの心の中にしっかりした強さを秘めていますから、あまり"か弱さ"ばかりを強調するのは違うと思ったんです。身体が弱っている中でも、内面の強さを引き出すような表現を心がけていましたが、それがとても難しかったです。

――現代劇とは異なる、時代劇ならではの演技について、どういったところがたいへんだったでしょうか。

まず、セリフのしゃべり方ですね。今ではまったく違和感なく普通に話している言葉でも、江戸時代では発音が違うもの、語尾の言い方、イントネーションについては、音声さんから何度も指摘を受けていました。あと、全体的な立ち振る舞い、所作についても専門の先生がモニターをご覧になって、この時代の女性らしい仕草を指導してくださいました。八重が凛ノ介への思いを込めて、弱っている身でありながら道を駆けるシーンがあるのですけれども、私としては早く待ち合わせ場所に行きたいという思いから身体が前へ前へ向かっていて、足も大股になっていたところ「もうちょっと小股で走ってね」と指導していただいたんです。

――そういった細やかな所作を積み重ねることで、時代劇の演技というものができあがっていくのですね。

手紙を書くシーンも難しかったんですよ。筆の持ち方や角度、紙との距離感とか。でも、考証の方だけでなく、カメラマンさん、音声さん、照明さん、どなたに尋ねても「ここはこうするんだよ」と、時代劇に必要なことを丁寧に優しく教えてくださるんです。とても勉強になりました。

――石田秀範監督の印象はいかがでしたか?

最初にお会いしたときはちょっと怖い印象だったのですが、サングラスを取っているふだんの様子を見ますと、いつもニコニコされていて、とても優しい監督さんでしたね。先ほどのしゃべり方の話に戻りますが、私の言葉遣いがつい現代風になってしまうと「(現代人に)戻ってるよ!」と、よく注意されました。「今のセリフじゃあ筆頭家老の娘に見えないよ」って(笑)。

――着物やカツラなど、時代劇ならではの衣装についてのご感想をお願いします。

こういった着物やカツラは初めて体験したので、新鮮な気分でした。最初のころはやっぱり着慣れないものですから、ちょっと恥ずかしかったんですけれど、だんだんとこの格好で毎日の撮影をこなしていくと、すっかりなじんでしまって「私、いつもこんな感じだったっけ」と思えてくるくらい、安定感が出てきました。メイクさんや衣装さんからも「もうすっかり八重ちゃんだね」と言っていただいて、うれしかったです。

――屋敷での八重は、神谷の後妻に入った早苗から疎まれていて肩身の狭い思いをされていましたが、乳母のきぬだけが味方になって支えてくれている……という設定で、きぬ役の大島蓉子さんとご一緒のシーンが多いんですね。

お芝居についてのお話はほとんどなくて、もう世間話ばかり(笑)。大島さんはとても優しい方で、常に周囲の雰囲気を明るくしてくださり、私にも優しく接してくれました。撮影しているころはとても寒かった(2018年12月)ので、「こっちあったかいよ~」なんて、ストーブの前に呼んでくださったりして、劇中と同じくずっと一緒にいましたね。

――映画の中で八重が激しい恋に落ちてしまう凛ノ介を演じられた犬飼貴丈さんの印象を聞かせてください。役作りのためにどんなお話をされていましたか。

それが、犬飼さんとそれほどお話をする機会がなかったんですよ。現場で演技に集中している犬飼さんの姿を見て、刺激になりました。それで、私も八重の演技を頑張って、次のシーンに集中しようと努めました。