日本企業の伝統である「飲み会」は、上司と部下がホンネを話し合うコミュニケーションの場として重用されてきました。そのやり取りが結果として仕事の成果につながっていたわけですが、しかし、それは飲み会でしかできないことだったのでしょうか?
今回は、世界的なパフォーマンス向上のための面談である「1on1ミーティング」について解説します。
1on1ミーティングの目的
1on1ミーティングは「チームメンバーのパフォーマンスを最大化する」ための、一対一の定期面談です。
上司と部下が一対一でする面談というと「目標設定面談」や「評価面談」などがすぐに思い浮かぶのではないでしょうか。しかしこれらは、管理者のためのミーティングです。課題や達成度を「計測する」ことが主目的でした。
1on1ミーティングの時間は、「成長のため」に使います。
大人というのは、人にアドバイスされても、なかなか行動を変えることができないものです。真の学習と成長には、自分のやったこと、言ったこと、考えたことを客観的に振り返る「内省」が必要です。
リーダーが問いかけることによって、この内省をうながすことが1on1ミーティングの狙いです。メンバーの悩みがクリアになり、モチベーションがふつふつと湧き上がるようになることで、チーム全体が力を発揮できるのです。
1on1ミーティングが必要とされている背景
1on1ミーティングが注目されるようになった理由に、ビジネススピードの激化が挙げられます。市場は気まぐれに変化し、従来のセオリーはもう通用しません。ダメだったらすぐに引き返す。行けそうだったら突破する。といった「探索力」が必要になってきました。 大きな組織ではどうしても動きが鈍くなります。小回りの利くチームを精鋭化する方法として、1on1ミーティングの重要性が認識されるようになったのです。
具体的な1on1ミーティングの実施方法
1on1ミーティングは1回30分程度と短時間ですが、その代わり週に1回くらいの頻度で実施します。あまり間が空くと、前回話したことを互いに忘れてしまうからです。
初回はミーティングの目的をしっかり共有してから実施しましょう。
ヤフーは、日本における1on1ミーティングの先駆者ですが、まずは上司から「今日は何を話す?」と投げかけることを習慣化しているそうです。上司が提起したい問題を取り上げるのではなく、あくまでも主役は部下というわけです。
このとき、部下の話を受け止めるという「傾聴」がとても大切です。分析のために聞くわけでも、批評するために聞くわけでもありません。長々とお説教でもしたら、台無しです。仕事での経験や失敗から何を学ぶことができるのか、今日から何を改善できるのか、「気づきを引き出すこと」がミーティングのゴールです。
1on1ミーティングのアジェンダ例
いきなり「何か話したいことある?」と聞かれても、人によってはなかなか答えづらいでしょう。1on1ミーティングでよく交わされるテーマは下記の通りです。
・業務の困りごと
・専門性を高めるためには
・今後のキャリアについて
・体調、メンタル
・プライベートの悩み
ただし、プライベートに踏み込みすぎるのは逆効果ですので、注意して下さい。
1on1ミーティングの歴史
"One-on-One Meeting"の取り組みは、米国シリコンバレーで始まりました。日本では2012年からヤフーが導入し、現在、ビズリーチの調査によれば約70%近くの企業が導入(※)しています。
※出典:2019年4月ビズリーチ実施「人事業務に関するアンケート」より
さらに世界の潮流として、1on1ミーティングは、単なるパフォーマンスアップの取り組みにとどまらず、リアルタイムな人事評価制度として発展しています。