6月13日、第78期順位戦B級1組1回戦の全6局が東西の将棋会館で行われました。

「鬼のすみか」B級1組が開幕

行方尚史八段―深浦康市九段戦は総手数215手の大熱戦となりました。矢倉の出だしから先手の行方八段が先攻しペースを握りましたが、深浦九段は決め手を与えないよう抵抗を続けます。耐えに耐えた深浦九段に初めて攻めの手が許されたのは行方八段が攻めを開始してから実に40手以上も後のこと。その攻めも真の目的は自玉の安全を優先したもので、玉の逃走経路を塞いでいた銀を取ることに成功します。行方八段も手を尽くして深浦玉を攻め続けましたが、最後は盤面中央に泳ぎ出されて詰ます見込みがなくなり、投了となりました。

  • 初戦を白星で飾った深浦九段(左)と菅井七段

10時に開始され、日付をまたいで午前1時過ぎに終局した激闘でした。前期A級降級の憂き目を見た深浦九段が、即復帰へ向け大きな1勝です。

もう一局、終了が遅かったのが菅井竜也七段―永瀬拓矢叡王戦。先手の菅井七段は形にとらわれない力強い振り飛車を得意としていて、本局も力戦形の振り飛車を選択し、永瀬叡王は居飛車で対抗しました。中盤、角を差し出す代償に金と銀を得る、いわゆる「二枚替え」という得な取引となる攻めを敢行した永瀬叡王でしたが、本局においてはあまり得策ではなかったようで、すべての攻め駒を効率良く使える形となった菅井七段が優位に立ちました。

菅井七段は決して攻め急がず、一歩ずつ優位を拡大する方針で指し、盤石の態勢を築いてから永瀬玉を仕留めました。強敵を破った菅井七段の指し手も参考になるものでしたが、特筆すべきは、色紙に好んで「根性」と揮毫する永瀬叡王の指し手。苦しい局面に何手も、何時間も向き合った根性は本局では報われませんでしたが、すごみを感じずにはいられないものでした。

終了時刻はこちらも日付をまたいだ午前0時30分頃。

全結果は以下の通りです(左が先手)。

  • 行方 尚史八段●―○深浦 康市九段
  • 阿久津主税八段●―○千田 翔太七段
  • 畠山  鎮七段●―○屋敷 伸之九段
  • 谷川 浩司九段●―○山崎 隆之八段
  • 郷田 真隆九段●―○松尾  歩八段
  • 菅井 竜也七段○―●永瀬 拓矢叡王