IntelのCore XやAMDのRyzen Threadripperなど、高速・高発熱のCPUが登場したことを受け、2019年のCOMPUTEXでは、各社がハイエンド向けのCPUクーラーを出展していた。水冷クーラーも、各社がそれぞれ独自機能を盛り込んでいたりして面白い。ここでは、COMPUTEXで見かけた冷却アイテムについてまとめてみよう。

Noctuaは「NH-D15」後継モデルをデモ

Noctuaブースで展示されていたファンレスCPUクーラーについては、別記事で紹介したので、ここではそれ以外の展示について見ていこう。

まず注目したいのは、大型CPUクーラー「Dタイプ」の次世代モデル。冷却性能が向上しており、Ryzen Threadripperにも対応するという。

  • 「Dタイプ」次世代モデルのプロトタイプ。来年の発売予定だ

Dタイプは、ツインタワーのヒートシンクに14cmファンを搭載する同社のフラグシップ製品。現行モデルは「NH-D15」であるが、後継モデルは、ヒートパイプの本数を6本から7本に強化、フィンの表面積も10%以上増えているという。放熱能力は400W以上とのことで、ブースではThreadripperを使った動作デモが行われていた。

  • オーバークロック動作のRyzen Threadripper 2990WXによる動作デモ

  • CPUのステータス画面。400Wを超えるような動作でも対応するという

  • 新モデル(左)と旧モデル(右)では、2度ほど差が出ていることが分かる

  • 「Dタイプ」次世代モデルのプロトタイプ。来年の発売予定だ

そして高性能ファン「NF-A12x25」を使ったUSB扇風機のプロトタイプも展示。4本の通風口を備えた独特な形状のアダプタにより、エアフローを強化する「Airflow Amplification System」(AAS)を採用したもので、2018年に展示したプロトタイプよりも、今回の展示はかなり製品に近いという。

  • NF-A12x25のエアフローは強力。高いが最強のUSB扇風機になりそう

そのほか、同社製ファンを使った製品として展示されていた「room fan」も面白かった。これは、天然の木材が詰まった筒の下側から風を通し、室内に木の香りを放出するというもの。オーストリアのzirbという企業が販売しているそうで、ちょっと欲しいかも。

  • zirbの「room fan」。ボディも木材でインテリアとしても良さそう

Cooler Masterは水没PCの参考出品も

Cooler Masterのブースで興味深かったのは、いわゆる"水没PC"のデモ。通常、電子機器を水に浸けるとショートして動かなくなってしまうが、このデモ機は電気絶縁性が高い3MのFluorinertという特別な液体を使っており、問題無く動作させられる。空気より熱伝導性が高いので、強力な冷却が可能だ。

  • 水没PCのデモ。左側にマザーボード、右側にグラフィックスカードを格納

  • このように内部は完全に水没。インタフェースには工夫が必要かも

同社はもともと、コンシューマ向けと工業向けの製品を別々の組織で開発していたが、工業向けの技術をコンシューマ向けに応用する取り組みを始めたそうで、この展示はその一環となる。発売は全くの未定だが、そのうち内部をFluorinertで満たした完成PCが発売されることがあるかも?

新製品の展示も目白押しだ。注目は、14cmファン×2と3Dベイパーチャンバーの組み合わせが強力なCPUクーラー「MasterAir Maker 3DVVC」。250W以上の高い冷却性能を持ちつつ、本体は比較的コンパクトで、メモリ等との干渉も少なそう。2020年の発売予定だという。

  • 「MasterAir Maker 3DVVC」。コンパクトながら高い冷却性能を持つ

  • ヒートパイプではなく、U字状のベイパーチャンバーを使っている

オールインワン水冷CPUクーラーでは、「MasterLiquid ML240P Dual Mirage」が面白い。CPU上に大きなユニットが見えるが、これはデュアルポンプとのことで、流量と水圧を高めているという。またラジエータファンのブレードは外周がリング状になっており、振動とノイズを抑えたそうだ。こちらも2020年の発売予定。

  • デュアルポンプの見た目が特徴的な「MasterLiquid ML240P Dual Mirage」

  • ラジエータファンはRGB対応。ブレードの外周がリングになっている

  • 新型ファン「MasterFan MF120M ARGB」の展示も。何か違和感が……

  • 実はハブの上面が回転していない。ロゴが見えるのが利点だという…

Corsairは本格的なDIY水冷に参入

Corsairはこれまで、オールインワン型の水冷CPUクーラーしか発売していなかったが、「Hydro X」シリーズでDIY水冷にも本格参入する。同社のRGBファンは鮮やかさに定評があり、統合管理ソフトウェア「iCUE」による連携が強み。ブース説明員は「EKより安い」と、価格面もアピールしていた。

  • 「Hydro X」シリーズ。DIY水冷に必要なパーツは一通り揃う

  • Hydro Xで構成した水冷PCのデモ。3系統の水冷が入っている

便利なのは、WEBサイトでシミュレートが可能なこと。この同社WEBページでケースやマザーボードなどを選択すると、オススメの水冷パーツを提示。1つ1つパーツを選んでいくと、システムの完成イメージがCGで確認できるほか、パーツリストまで出力してくれるので、ショップでの購入も簡単になる。

  • WEBサイトでのシミュレートは非常に便利。自宅でじっくり検討できる

もう1つ注目したいのは、新型LEDの展示だ。同社は従来よりも小さく、高密度実装が可能なLEDへの移行を進めるそうで、これにより、明るさを増やしつつ、消費電力は40%も抑えることができるという。

  • 従来型(右)と新型(左)。写真では分かりにくいが、新型は小さいLEDが密集

Zalmanはペルチェ素子でノートを冷却

ここしばらく目立った動きがなかった印象のZalmanだが、Grand Hyattホテルのプライベートブースでは、今後発売予定の新製品が多数展示されていた。まずハイエンド向けのCPUクーラーが、ツインタワーのヒートシンクに14cmファンを2つ搭載する「CNPS20X」だ。

  • 世界初の「4Dフィンデザイン」を謳うCPUクーラー「CNPS20X」

同社がアピールする「4Dフィンデザイン」というのは、3Dに波形を加えた独特のフィン形状のこと。フィンを波形にすることで、表面積を増やしつつ、エアフローの直進性を増しているという。またフィンの中央部のみ銅製にすることで、重量の増加を抑えつつ、冷却性能が向上しているのも特徴。

  • フィンが波形になっているのが大きな特徴。ヒートパイプは6本だ

オールインワン水冷CPUクーラーとしては「Reserator 5」を展示。デュアルブレードのポンプを採用したことで、流量が大幅アップ、同時にノイズを低減したという。また水圧を調整するレギュレータも内蔵したことで、液漏れのリスクを抑えたそうだ。

  • 「Reserator 5」。ラジエータは24cm/28cm/36cmの3モデルをラインナップ

  • 入口側と出口側にそれぞれブレードを搭載。性能が向上しているという

また、冷却にペルチェ素子を採用したというノートPCクーラー「NC5000」も気になるところ。ノートPCの底面に接触する大型の冷却プレートは触るとひんやり冷たく、夏は自分の冷却用にも1台欲しいかもしれない。

  • 「NC5000」。ファンからの風ではなく、ペルチェ素子で冷却する

  • ファンは裏側に搭載されている。表側から吸収した熱をここから放出

RAIJINTEKはなんと20cm角のラジエータ

今年のCOMPUTEXでは、アドレッサブルRGB LEDを搭載した20cmファンが増えた印象だが、それにマッチする20cm角のラジエータ「BIA 200 RBW」を出展していたのがRAIJINTEK。同社の20cmファン「Anemi 200 RBW」と組み合わせて、静音性と冷却性能を両立した水冷を実現できる。価格は、ファンが24ドル、ラジエータが49ドル程度。

  • 20cm角のラジエータ「BIA 200 RBW」とファン「Anemi 200 RBW」

また、オールインワン型の水冷CPUクーラー「Nyx RBW」シリーズは、大型水冷ブロックの採用が特徴。大型のため、ポンプの揚程は2.5mと強力で、クーラントの容積は400mlもあるという。ラジエータサイズは24cmと36cmの2種類があり、価格はそれぞれ、170ドル、200ドル程度。実際の製品では、水冷ブロックはもう少し小型化する予定とのこと。

  • 「Nyx 360 RBW」。ポンプ内蔵の水冷ブロックはかなり大きい

  • 水冷ブロックには、クーラントの温度を表示する機能も搭載する