新幹線の速達性を活用し、各地で水揚げされた新鮮な魚介類を東京へ。水産物の卸・小売を手がけるフーディソンとJR東日本スタートアップが協業し、新たな物流サービスの実現に向け、新幹線物流による鮮魚輸送・販売の実証実験を開始した。

  • 佐渡沖で獲れたえびを載せ、上越新幹線E7系「とき320号」が東京駅に到着(写真:マイナビニュース)

    佐渡沖で獲れたえびを載せ、上越新幹線E7系「とき320号」が東京駅に到着

6月11日に実証実験の報道公開が行われ、東京駅での荷降ろし作業、品川駅構内にある鮮魚店「sakana bacca エキュート品川店」での販売風景などが公開された。上越新幹線において、新幹線を利用した鮮魚の輸送は今回が初だったという。

■地元の交通機関も活用、速達性重視の輸送ルートに

新幹線で海産物を直接運ぶことにより、従来のトラックを使用した市場経由の輸送と比べて時間を短縮できる。その結果、新鮮な海産物をよりおいしく食べられる。

  • 東京駅では新幹線からの荷降ろし作業を公開

  • えびを積んだ箱が品川駅へ向かう

今回の実証実験では、岩手県宮古市田老で水揚げされたうに、新潟県佐渡市で水揚げされた南蛮えび(甘エビ)がそれぞれ新幹線で運ばれた。三陸沿岸で獲れたうには、前日のうちに加工され、瓶詰め。朝7時35分発の岩手県北バスで盛岡駅へ運ばれ、同駅11時7分発「やまびこ44号」に載せられた。車内では車販用の業務用スペースを使用し、氷で冷やして鮮度を保ったとのこと。「やまびこ44号」は14時24分に東京駅20番線ホームに到着し、荷降ろし作業の後、トラックで品川駅へ向かった。

佐渡沖で獲れる南蛮えびは鮮度の落ちやすい食材といわれ、基本的に地元でしか食べられないという。朝4時台の漁で獲られたえびは、両津港を9時30分に出発するジェットフォイルに載せられ、新潟港に10時35分に到着。新潟駅12時35分発「とき320号」で都内へ運ばれた。「とき320号」は今年3月に上越新幹線へ投入されたE7系で運転。14時44分、東京駅22番線ホームに到着し、荷降ろし作業を経て品川駅へ向かった。

  • 東京駅での荷降ろし作業の後、品川駅構内の「エキュート品川」へ運ばれる

  • 品川駅構内の「sakana bacca エキュート品川店」でうに・えびを販売

どちらの海産物も、新幹線だけでなく地元の交通機関も活用され、速達性を重視した輸送ルートとなっている。

■「新幹線の超高速輸送のメリットを感じてほしい」

実証実験は6月11・13・14・18・20・21日の計6日間実施。ショッピングサイト「ネットでエキナカ」で前日に事前予約し、品川駅構内の「sakana bacca エキュート品川店」で受取り可能に(店頭での予約も可)。新幹線の速達性と、フーディソンの水産流通システムを使用することで、鮮度落ちの早い海産物を都心部でも入手できる。「sakana bacca エキュート品川店」では16時30分以降に手に入れられる。

うには160グラムで3,600円、えびは200グラムで1,600円であるものの、都心部での希少性、鮮度の高さを考えるとお得感はある。

  • 店内ではうに・えびともにメインの商品として並べられた

  • この日の朝に獲れたばかりのえび

  • 三陸沿岸で獲れたうには瓶詰めで届く

  • 生のうにも店内に

  • スタッフたちも鮮度をアピール

報道公開で取材に応じたフーディソンの代表取締役CEO、山本徹氏は今回の実証実験に関して、「売り切る自信はあります」と語る。「市場を経由することによるタイムロスがこれまで問題となっていました。新幹線で着いた場所が売り場となっているというのが、この実験のポイントだと思っています」「海産物は買う場所も売る場所も限られています。みんなが集まる場所で売る、つまりターミナル駅に出店することによって利便性を確保でき、さらに新幹線を活用することでリードタイムを短くでき、おいしさを実現できたと思います」と説明した。

JR東日本スタートアップの代表取締役社長、柴田裕氏は、実証実験を通じて「今後もニーズがあるなら新幹線の本数を活用したい」との考えを示し、「新幹線の超高速輸送のメリットを感じてほしい」とコメントした。

  • (写真左から)「エキュート品川」店長の清水理三郎氏、フーディソン代表取締役CEOの山本徹氏、JR東日本スタートアップ代表取締役社長の柴田裕氏

鮮度が重視されるために、普段なかなか食べられないという海産物は多い。今回の実証実験で、新幹線を活用した高速輸送の可能性だけでなく、新鮮な海産物の味わいをより広い範囲で楽しめるようになることを期待したい。