東海道新幹線を利用した際、車掌が英語で車内アナウンスを行っていることが気になった。以前は録音した音声を放送するだけだったと記憶しているが、現在は車掌の肉声による簡潔な英語の車内アナウンスが加わっている。

  • 静岡県内を走行する東海道新幹線N700系(写真:マイナビニュース)

    静岡県内を走行する東海道新幹線N700系

■駅・車内での英語放送を充実させるJR東海

JR東海は昨年9月、東海道新幹線の駅・車内における英語放送を充実させることを発表している。訪日外国人にわかりやすく、安全に、安心して東海道新幹線を利用できるように、2019年度中に駅ホーム上の自動放送に英語の放送を導入するほか、駅コンコースでの案内放送や車内での英語放送を行うという内容だった。

車内では乗務員が所持するスマートフォンのアプリを活用した英語放送を行う。放送内容は列車の遅延、行先変更、運転再開見込み、到着遅れ見込みなど。アプリにあらかじめ登録した英語の定型文から必要な文章を選び、車内の放送装置に接続して放送する。

この発表に前後して、東海道新幹線の車内で肉声の英語アナウンスが聞かれるようになった。新聞等でも報道されており、訪日外国人の利用者が増えていることを受け、英語での対応力を高め、外国人へのサービス向上を図ることが目的とされている。JR東海の訪日外国人への対応は、以前と比べて格段に良くなっていると感じる。

■新幹線の英語放送、真価を発揮するのは

先日、東京駅から静岡県内まで東海道新幹線を利用した。朝の下り「ひかり」は発車時からほぼ満員であり、車内では外国人の乗客を多く見かけた。訪日外国人向けの「ジャパン・レール・パス」は東海道・山陽新幹線「のぞみ」への乗車を不可としていることも、「ひかり」「こだま」に乗る外国人が多い理由だろう。今回乗車した「ひかり」でも、車掌やパーサーは外国人の乗客に英語で対応していた。

東京駅を発車した「ひかり」は品川駅・新横浜駅に停車。新横浜駅の次は静岡駅に停車する。各停車駅の手前で車内アナウンスがあり、静岡駅では日本語で停車駅と到着ホーム、乗換えの案内、忘れ物がないかの放送を行った後、英語で「We are stopping at Shizuoka station.」「The doors on the left side will open.」とアナウンスした。

翌日の夜、帰りに乗車した上り「こだま」でも、同様の英語アナウンスが行われた。こちらの列車も外国人の乗客が多かった。「こだま」は途中の各駅に停車し、とくに三島駅で下車する外国人の乗客が多数いた様子だった。

  • 東海道新幹線の車内(2019年5月の報道公開で撮影)

新幹線での英語アナウンスに関して、現段階で必要最小限にとどまっているように思える。同じ内容でも、列車によって流暢な英語で話す車掌もいれば、カタカナの英語をそのまま読んでいるような車掌もいる。発音に関して、日本人の英語の発音でも問題ないだろうとは思うが、実際に外国人がどう感じているか気になるところでもある。

英語アナウンスはトラブル発生時などに真価を発揮すると考えられるが、その場合でも臨機応変な車内アナウンスができるように、車掌本人の勉強だけでなく、JR東海のシステム的な対応こそ必要になると思う。車内での外国人の乗客への対応も、それこそ車掌やパーサーの英語力で差が分かれるところだが、これも社内での研修等によって対応すべきものである。そのあたりをどうするか、今後の課題であるように感じる。

  • 今年5月に行われた東海道新幹線の訓練では、列車が停車した後、英語の車内テロップが流れた

  • 訪日外国人の駅利用者に向け、ポケトークを使用した情報提供の訓練も実施(2019年5月の報道公開で撮影)

JR東海は今年5月に本線上での異常時対応訓練を行った際、訪日外国人向けに多言語で情報提供する訓練もあわせて実施している。車両故障が発生したという設定で、車内では日本語・英語でアナウンスがあり、英語の車内テロップも流れたほか、外国人の乗客へ多言語運行情報ウェブサイトに誘導し、駅構内においてポケトークを使用した外国人利用者への情報提供の訓練も行ったという。

同社公式サイトの運行情報(新幹線・在来線)は7言語に対応しており、さらに日本語・英語・中国語・韓国語の4言語で運行情報を提供するTwitterアカウントが開設されている。これらの取組みからも、国際的なイベントが間近に迫っていることもあり、訪日外国人に向けた情報提供の充実を全社的に進めていることがうかがえる。

■新幹線の車内で「Shinkansen Free Wi-Fi」も試す

東海道・山陽・九州新幹線では現在、車内無料Wi-Fiサービス「Shinkansen Free Wi-Fi」の導入も進んでいる。これまでの新幹線のWi-Fiサービスは有料であり、しかも通信速度が遅かった。新サービスでは乗ったその場で登録すれば使用でき、トンネルが連続する区間を除いて通信速度も速くなったようである。

東海道新幹線のWi-Fi対応列車は専用のTwitterアカウントから確認できる。2020年3月までに全列車で利用可能となる予定で、最近はWi-Fi対応列車が増えてきた。

  • 「Shinkansen Free Wi-Fi」を導入した車両にステッカーを掲出(2019年5月の報道公開で撮影)

筆者が東海道新幹線で静岡県内へ往復した際も、下り「ひかり」の車内に「Shinkansen Free Wi-Fi」のステッカーが貼られてあったので、試しに利用してみた。登録はメールアドレスの記入やSNSを使った認証を行うだけという簡単なものであり、1回登録すると30分間連続して接続することができる。30分を過ぎると再度接続しなければならないが、おそらく回線全体が重くなることを防ぐためだろう。

「Shinkansen Free Wi-Fi」に接続中、JR東海の公式サイトから見られる新幹線の列車走行位置も確認してみた。東海道新幹線の1駅間だけでも何本もの列車が走っており、東京圏の中距離電車並みの過密さであることを実感させられる。

  • JR東海の公式サイトから東海道新幹線の列車走行位置も見られる

このように、東海道新幹線の車内サービスは変化を続けており、今後も新たなサービスの導入、あるいは現行サービスの改廃があるのではないかと予想される。これから乗車する機会があるなら、車内放送に耳を傾け、「Shinkansen Free Wi-Fi」を活用するなどして、サービスの変化を感じ取るのも良いのではないかと思う。