ついに公開を迎えたディズニーの名作アニメーション映画を実写化した『アラジン』で、重責のプレミアム吹替版キャストを務めた中村倫也と木下晴香。名曲「ホール・ニュー・ワールド」を、2人はどのように熱唱し、アラジンとジャスミンのロマンスをどう紡ぎ上げたのか?
貧しくも自分の人生を変えようとする清い心を持つ青年アラジン(メナ・マスード)と、自分の人生を自由に切り開きたいと願う美しい王女ジャスミン(ナオミ・スコット)。2人のロマンスは、今の世相を反映して、バージョンアップされ、勇気と力強さが加算された。また、アラジンの願いを叶えていく愉快なランプの魔人、ジーニー役にウィル・スミス!このキャスティングの妙にもうなる。
洋画の吹替えは初挑戦となった中村たち。2人はスクリーンで再現されたドラマティックな名シーンに陶酔しながらも、心を込めてキャラクターに息吹を吹き込んでいったそうだ。
――まずは、実写版の映画を観た感想から聞かせてください。
中村:アラジンたちがアニメーションから飛び出してきただけかと思いきや、よりグレードアップされた映画になっていました。実写化という意味では、ウィルたちがキャラクターを演じることで、熱量がより強くなった気がして、僕自身はより感情移入できました。やはり、人間にしか奏でられない“音色”が出ていた気がしました。
木下:本当に愛おしかったです。改めて客観視してみると、ジャスミンの恋をしている乙女ならではの表情や、アラジンの戸惑っている表情などを見ることができました。実写映画だからこそ描かれている繊細な部分と、華やかで壮大なシーンが期待を裏切らない、素晴らしい映画になっていると思いました。
――洋画の吹き替えにトライしてみて、いかがでしたか?
中村:初めての経験だったので手探りで、演出の方に教えていただきながらやっていきました。僕がアラジン役に抜擢されたのは、きっと、芝居のニュアンスをもつ歌や、芝居の掛け合いの部分などが大きかったのかなと。
実際、アラジンも、人とコミュニケーションを取ることでいろいろなことを学び、成長していくキャラクターなので、僕も「この時、アラジンはジャスミンから何を与えられたのか? それをどう返していくのか?」と、1つずつ丁寧に感じながら演じていきました。
木下:オーディションでジャスミン役に決まった時は信じられなくて、胸いっぱいになったところからスタートしましたが、時間が経つにつれて、『アラジン』という作品が大好きだからこそ、すごくプレッシャーを感じていき、自分を追い込んでしまったところがありました。
それで、監督やいろんな方にアドバイスをいただきながら作っていくうえで、だんだん楽しくなっていった感じです。一番大変だったのは、マイクに向かって台詞を言う時の距離感で、そこは本当に難しかったです。
――「ホール・ニュー・ワールド」を歌う名シーンには心が震えました。実際に歌ってみていかがでしたか? プレッシャーなどはありましたか?
中村:プレッシャーは考えないようにしました。考え出したら、背負うものが大きすぎて、自分の頭のなかでどんどん想像が膨らんでいってしまうから。最近はもう、余計なことを考えないようにする癖がついています。
フットワークを軽くするには、常にニュートラルなところにいないといけないから、あまり考えずにやっています。緊張や気合、何かのためにやることとか、そういう外的圧力や要因で、自分のギアが変わるのが嫌だし、たとえそれで結果を出せたとしても、まぐれだと思うんです。だから、もっと純粋な力で、いろんなことに取り組めたほうが、柔軟性が出ていいのかなと。
――そんなふうにプレッシャーと向き合えるようになったのはいつ頃ですか?
中村:20代の頃かな。大作に臨む時でも、舞台の本番前でも、もちろん緊張はします。だからこそ、ニュートラルにいるために、逆の分銅を用意しないと釣り合わなくなるんです。それはきっと、これまで生きていくなかで徐々に身についていったことかなと思います。
本来なら、きっと今も心臓がバクバクしているはずです。宣伝としてちゃんとしたことを言わなければいけないと思うから。でも、そういう気持ちを敢えて抑えて話したほうがいい気がします。
木下:私は「ホール・ニュー・ワールド」の収録時は、1フレーズごとに演出の方と相談しながら撮っていきました。ジャスミンはあの1曲のなかで、いろんな気持ちが動いていくので。
――木下さんが出演されている通常のミュージカルで歌うのとアフレコとでは勝手が違いますしね。
木下:そうなんです。ミュージカルでは、感情の流れを自分で組み立てられるけど、今回はオリジナルの映像があり、そこの微妙な表情に合わせて演じながら歌わなければいけなかったので。それは初めての経験でしたが、やっていくうちに、自分のなかでカチッとハマると、すごく歌いやすくなりました。
――アニメーションにはない、ジャスミンのソロでの歌唱シーンが圧巻でした。
木下:あのシーンを初めて観た時、すごすぎて固まってしまいました。全身からすべてを出し切るような歌い方だったので、自分が準備してきた歌い方だと足りないなと感じ、強く歌うように変えました。すてきな化学反応が起きていたらいいなあと思っています。
中村:僕もあのシーンは、すごく楽しみです。
木下:また、ジャスミンはあまりジーニーとの掛け合いがなかったのですが、ジーニー役の山寺宏一さんの吹き替えにもワクワクします。テンポ感がすごくいいので。
中村:うらやましいでしょ(笑)。僕はいっぱい掛け合いのシーンがあったから。そこは作品の魅力でもありますし。個人的には山寺さんと掛け合いができたのはすごくうれしかったので、大いに期待してほしいです。
1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年に映画『七人の弔(とむらい)』で俳優デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台に数多く出演。主な出演映画は『星ガ丘ワンダーランド』(16)、『日本で一番悪い奴ら』(16)、『伊藤くん A to E』(18)、『孤狼の血』(18)『美人が婚活してみたら』(18)『長いお別れ』(19)など。『屍人荘の殺人』が公開待機中。
■木下晴香(きのした・はるか)
1999年2月5日生まれ、佐賀県出身。2015年日本テレビ『全日本歌唱力選手権・歌唱王」で決勝進出。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(17)のジュリエット役でデビュー。その後『モーツァルト』(18)のコンスタンツェ役、「ロミオ&ジュリエット』(19)で再びジュリエット役、「『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠」(19)メーテル役など、大役に抜てきされている。