最強に見える光加工機のたった1つの弱点
とはいえ、なんでもできるとも思えるLasermeister 100Aだが、たった1つの弱点が現在存在している。それは、安全に配慮した結果、粉塵爆発が起きないステンレス材(SUS316L)しか公式に対応をうたっていないという点。金属パウダー自体は複合材料なので、ステンレス以外のハイス鋼や炭素鋼もいけるとのことであるが、さまざまな場所で使うことを可能にした一方で、安全面にも配慮した結果であるという。
ただ、これは現時点での問題であり、今後も同社は光加工機シリーズとしてラインアップの拡充を図っていくとしていることから、さまざまなサイズに対応する製品やさまざまな金属パウダーの対応が図られていくことが期待される。特にサイズについては、同社は半導体のみならず、液晶ディスプレイを中心としたFPD向け露光装置として、数m×数mのガラス基板を加工するノウハウを有しており、そうした技術を応用すれば、似たようなサイズの造形も可能になるかもしれない。また、より半導体露光装置で培った技術に磨きをかければ、デスクトップにおける光加工機も生まれるかもしれない。
そうした広がる市場への期待からか、ニコンも2019~2021年度の中期経営計画において、光加工機を中心とした材料加工事業(デジタルマニュファクチャリング)のほか、ビジョンシステム/ロボット、ヘルスケアといった長期成長領域の合計で2021年度までに最大200億円の営業利益を目指し、2023年度以降は200億円以上を目指すことを掲げており、研究開発、設備投資に対しても積極的な姿を見せている。
みんなの社外実験室も整備
とはいえ、まだまだ金属3Dプリンタを使ってみたいのだが、どれくらいのことが本当にできるのか、実力未知数の装置に数千万円をポンっと出すのは、ちょっと控えたい、という企業も多いのは事実。ニコンも、そうしたニーズがあることは承知しており、ニコン熊谷製作所内に「Lasermeister Technology Center」という実際にLasermeister 100Aを使った造形を試せるエリアを用意した。
実はこのセンター、まさに開発チームの隣とも言える場所に設置されており、利用ユーザーと開発エンジニアが直接意見の交換を行うことも可能となっており、細かな疑問点なども即座に答えてくれるという実に親切な作りをしている。そのため、同社では「みんなの社外実験室」という呼び方をしている。実際に利用するには、同社担当への事前の連絡による予約が必要で、利用可能時間は平日10~17時(休みは基本土日祝日だが、別途定休日もあるとのこと)。利用そのものに費用はかからないが、データを持ち込んで、何かを作る、という場合は、それに応じた費用がかかるという(利用可能データの形式はSTLとのこと)。
このほか、ユーザーにどういったことができるのかといったことを紹介する講習会や紹介セミナーといったことも毎週1回の頻度で行っているが、すでに6月いっぱいまで埋まっている状況で、回数を増やすことも検討しているという。
ちなみに、発表以来、さまざまな業界から問い合わせが来ているとのことで、同社でも単なる製造業以外での活用を模索していくとしている。直近では6月11日から13日にかけて東京ビッグサイト(青海展示棟)で開催される「第24回 リフォーム&リニューアル 建築再生展 2019」に出展する予定だとしているので、興味のある人は、同社ブースを訪れてみるのも良いだろう。
最先端のハイテク装置である半導体露光装置の技術が生んだ、新たな加工装置。それが生み出す新たな産業の発展にこれからも期待したい。