豊島将之棋聖に渡辺明二冠が挑戦する第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局が6月4日、兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」で行われ、豊島棋聖が勝利を収めました。

絶好調モード渡辺二冠の先手番を逆転で「ブレイク」

後手番で大きな1勝を挙げた豊島棋聖

対局は渡辺二冠の先手で始まり、互いに居飛車で玉を角のいる側に移動させる「矢倉」の戦型へと進みました。しかし、昔から指されている、まずは玉を金銀3枚の城に収め、それから飛角銀桂で敵陣攻略を目指す矢倉ではなく、両者とも玉の守りは金2枚、銀は2枚とも前線に繰り出し中央に勢力を集めるというスピード感のある駒組みとなり、盤面中央を争点とした激しい戦いが始まりました。

終盤、渡辺二冠の猛烈な攻めにより豊島陣は風前の灯、一方の渡辺陣に迫る攻め駒は玉の退路をふさぐ銀1枚のみで、渡辺二冠の勝利目前かと思われましたが、豊島玉がわずかのところで捕まらずに逆転。豊島棋聖が渡辺二冠の攻め足が止まった一瞬に渡辺玉を詰まし上げました。

プロ公式戦では先手番の勝率がわずかに後手番のそれを上回っていて、一般的にトッププロ同士の対局であるほどその傾向が顕著に表れると言われています。例として、豊島棋聖が初タイトルを獲得した第89期本棋戦五番勝負では、第1局から第4局まですべて先手が勝ってフルセットにもつれ込み、第5局のみ後手が勝っての決着。並行して行われ、王位・棋聖の二冠となった第59期王位戦七番勝負では、第1局から第7局まですべて先手が勝っての決着でした。

その意味では、豊島棋聖にとっては後手番での逆転勝ちという大きな1勝となりました。タイトル戦は第1局に振り駒が行われて先手、後手が決まり、その後は交互に先後を持ち合って、最終局にもつれ込んだ場合は再び振り駒が行われます。3勝した側がシリーズを制する五番勝負で、第2局と第4局、あと2局の先手番が約束されています。一方の渡辺二冠が先手番と決まっている対局は第3局のみ。痛い黒星となりました。

とはいえ、シリーズはまだ始まったばかり。絶好調同士のタイトル戦、後手番の第2局に渡辺二冠がどんな作戦を用意するのかに要注目です。第2局は19日、名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われます。