毎年ボーナスの時期が近づくと、使い道を考えたり、貯金が増える様子をイメージしたりと、ワクワクしてしまうものですね。一方で、50万円もらえると思っていたのに、実際には40万円程度しかなかった……などと、ボーナス支給日当日に少しガッカリしてしまった経験を持つ人も多いと思います。
毎月の給与から税金などが引かれるように、ボーナスからも引かれることが決まっているものがあるためですが、金額が大きいだけにインパクトも大きく感じてしまいがち。しかし、引かれるものの内容や計算の仕組みを知っておけば、手取り額を増やすことができるかもしれません。
ボーナスから引かれるもの
ボーナスから引かれるものには、大きく分けて「社会保険料」「雇用保険料」「所得税」の3つがあります。これらは「法定控除」と言われるもので、法律で控除することが義務付けられています。
具体的に言うと、次の5つの項目(年齢によっては4項目)です。
1.健康保険料
2.介護保険料(40歳以上の人のみ)
3.厚生年金保険料
4.雇用保険料
5.所得税
これを見ると、毎月の給与とほぼ同じことに気づく人もいそうですね。そのとおり、給与とほぼ同じ項目が徴収されますが、給料から引かれている「住民税」はボーナスからは引かれません。それは住民税が、前年の所得に基づいて算出された税額(年額)を12で割って月々の給与から天引きする「特別徴収」という制度を取っているため。徴収の仕組みがどうであれ、ボーナスをもらう人にとっては引かれるものが少なくなるのはうれしいことですね。
ところで、40歳以上の人のみ引かれる介護保険料ですが、正確には「40歳の誕生日の前日が属する月」から徴収されることになっています。たとえば、ボーナス支給日が6月10日の会社に勤める人で6月30日に40歳の誕生日を迎える人は、ボーナスをもらう時点では39歳ですが、介護保険料の対象となります。40歳が近いという人は、このことも知っておくといいでしょう。
ボーナスから控除される金額は?
冒頭で「金額が大きいだけにインパクトも大きい」と述べましたが、合計すると数万円単位で引かれるのが一般的。ボーナスの支給額によっては数十万円ということもあり得ます。予定していた使い道を変更しなくてはならない……なんてことが起こらないように、大まかにでも控除される金額を事前に知っておきたいものです。
先ほど述べたように、ボーナスから引かれる項目は大きく分けて「社会保険料」「雇用保険料」「所得税」の3つ。ちなみにさきほど紹介したした項目のうち、(1)~(3)が社会保険料です。どれも控除額を算出するために、税率もしくは保険料率を用いて計算することになりますが、これら3種の控除では計算のもとになる基準が異なります。
社会保険料
実際のボーナス支給額(額面)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」が計算基準になります。
例:ボーナス支給額(額面)が578,934円の場合、標準賞与額は578,000円
前述したように、社会保険には3つの保険があります。それぞれに決められている保険料率を標準賞与額(※)に乗じて保険料の額を算出することになりますが、健康保険、介護保険、厚生年金保険は雇用者と労働者が半分ずつ負担します。
なお、健康保険料率は加入している健康保険組合ごと、協会けんぽの場合は都道府県ごとに異なります。協会けんぽ(東京都)に加入の場合、労働者の負担分の計算は次の料率を使用します(2019年5月現在)。
1.健康保険料:4.95%(東京都の場合)
2.介護保険料(40歳以上の人のみ):0.865%
3.厚生年金保険料:9.15%
(※)健康保険では年度の標準賞与額の合計が573万円、厚生年金保険では支給ごとに150万円と上限が設けられています。
雇用保険
実際のボーナス支給額(額面金額)が計算基準になります。雇用保険料率の労働者負担分は0.3%です。
所得税
ボーナスから源泉徴収される所得税の計算は、ざっくり言うとボーナスが支給される前の月の給与額をもとに計算します。もう少し詳しく言うと、「1.前月の給与額(社会保険料等を差し引いた額)」「2.ボーナス(額面)額」「3.今回のボーナスから差し引かれる社会保険料の額」の3つの金額を用います。
税率は国税庁が公表している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(2019年分)」を用い、次の3つのステップで計算していきます。
1.前月の給与(額面)から社会保険料等(※)を差し引きます
2.1で算出した金額および扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率(ボーナスの金額に乗ずべき率)を求めます
3.ボーナス(額面)金額から今回のボーナスから差し引かれる社会保険料等を差し引いた金額に上記(2)で求めた税率を乗じます
(※)ここでいう社会保険料等には雇用保険料を含みます。
モデルケースで手取り額のシミュレーション!
それでは、2つのモデルケースを使ってボーナスの手取り額を計算してみましょう。
モデルケース1:45歳、扶養家族1人、協会けんぽ加入(東京都)、ボーナス額面 578,934円、前月給与(社会保険料等控除後)310,000円
社会保険料の計算:
578,000円×(4.95%+0.865%+9.15%)=86,498円(円未満51銭以上切り上げ)
雇用保険料の計算:
578,934円×0.3%=1,736円(円未満切り捨て)
所得税の計算:
1.社会保険料等差し引き後の前月の給与額=310,000円。
2.310,000円かつ扶養1人の場合の税率=6.126%
3.(578,934円-86,498円-1,736円)×6.126%=30,060円(円未満切り捨て)
ボーナス手取り額:
578,934円-86,498円-1,736円-30,060円=460,640円
モデルケース2:45歳、扶養家族1人、協会けんぽ加入(東京都)、ボーナス額面 578,934円、前月給与(社会保険料等控除後)280,000円
社会保険料の計算:
578,000円×(4.95%+0.865%+9.15%)=86,498円(円未満51銭以上切り上げ)
雇用保険料の計算:
578,934円×0.3%=1,736円(円未満切り捨て)
所得税の計算:
1.社会保険料等差し引き後の前月の給与額=280,000円
2.280,000円かつ扶養1人の場合の税率=4.084%
3.(578,934円-86,498円-1,736円)×4.084%=20,040円(円未満切り捨て)
ボーナス手取り額:
578,934円-86,498円-1,736円-20,040円=470,660円