今週はWindows 10 バージョン1903以降における削除予定の機能リストに触れようと思ったが、リンクの紹介にとどめて、日本マイクロソフトが2019年5月29日から2日間開催した開発者向け年次イベント「de:code 2019」の基調講演に注目したい。Microsoft Technical FellowのAlex Kipman氏が来日し、Microsoft HoloLens 2の日本初上陸もポイントだが、ここではWindows 10とOfficeの話題を紹介しよう。

  • エキスポ会場に設けたMicrosoft HoloLens 2体験コーナー。セッション中でも結構なにぎわいを見せていた

目立つところでは、Windows 10 バージョン1903から加わったライトテーマや、Windows Updateの更新タイミング変更、Chromiumエンジン搭載の新Microsoft Edgeが実装する予定のCollections機能を披露。Web閲覧時に気になったテキストや画像といったコンテンツを格納し、WordやExcelなどにエクスポートすることで、業務を遂行しやすくするというものだ。

また、MicrosoftはWindows 10やOffice 365が備える一連の新機能について、「Microsoft Graphはアプリ間の障壁をなくせる」(Microsoft Senior Product Manager, Mary Shepherd氏)と話す。Microsoftが米シアトルで開催した「Build 2019」の動画を視聴した限りでは、基調講演やステージでは紹介されず、ホール内のライブビルドで披露した機能だったため、気にとめていなかった。

だが、日々使用するPCで特定コンテンツをクリップするのは意外と便利だろう。ただし、本機能はCanaryチャネルの最新版(バージョン76.0.174.0)でも未実装のため、実際に我々が試せるのはしばらく先の話だ。

  • Microsoft Senior Product Manager, Mary Shepherd氏

  • 右上のツールバーに並ぶ(お気に入りとユーザーの間にある)ボタンから起動するCollections機能

今すぐ使用できない機能でも大々的に取り上げられたのは、「Windows Terminal」「WSL(Windows Subsystem for Linux) 2」である。詳細は割愛するが、基調講演ではWSL 1とWSL 2のパフォーマンス比較をリアルタイムで実施。また、Linux版Visual Studio Codeの実行など開発者向けのアピールが行われた。

  • Windows Terminalのタブ追加機能。各環境を呼び出せる

  • Microsoft CVP, Jared Spataro氏は、Unicodeの絵文字にも対応すると、Windows Terminalをアピール

  • 右側はWSL版、左下はWindows版Visual Studio Code。そして左上にコードの実行結果をWebブラウザーで表示し、「開発体験が向上する」とアピールした

  • WSL 1とWSL 2のパフォーマンス比較。Build 2019と同じくnpmパッケージのインストールに要した時間は約13.6秒(WSL 1)と約4.4秒(WSL 2)と大きく開きがある

Office 365に関してはWordの「アイデア」機能を披露した。すでにPowerPointやExcelには、コンテンツをAIが判断して、適切なデザインを適用したり、テーブルを加工したりする機能が加わっている。Wordの「アイデア」は校閲機能を拡張し、読了時間や略語、異なる表現を提案する機能になる予定だ。

筆者はこのアイデア機能が日本語の文章に有用となるのか注目している。揺らぎが多い日本語ではあるものの、類語などのテーブルを用意すれば対応できそうだ。アイデア機能がOffice Insiderに展開された際には、折を見て紹介したい。

  • 今後のWordに実装されるアイデア機能。読了時間や略語などが右ペインで確認できる

  • 「continually expanding(継続的拡大)」を「ever-expanding(拡大し続ける)」「constantly expanding(常に拡大)」「ever-growing(ますます増加)」といった単語との置換を提案する

  • Fluid Frameworkに関してはBuild 2019でも同様のデモンストレーションを披露していたが、de:code 2019ではベースとなる言語を日本語で行った

最後に、りんなの話にも触れておこう。de:code 2019の基調講演は2時間半(実際には3時間)にもおよぶため、休憩時間としてりんなが登壇(?)し、「人間の集中力は1時間程度って聞いたよ。平野社長に協力してもらった、ダンスの振り付けも学習中」と、キレキレで踊る平野社長のPVが会場に流された。

だが、よく見るとCG加工されたものであり、音楽からダンスの振り付け(スケルトン)を生成するAIと、振り付けから人が動くCGを生成するAIを元に、ある朝15分ほど踊った平野社長の映像を掛け合わせたものだった。平野氏は、「将来的に、りんなチームが独自開発したこの技術を応用して、AIのステージパフォーマンスなどを楽しみにしている」とコメントした。

  • キレキレの動きで踊る日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏

  • 実は複数のAIを使って動画を生成していたと説明する平野氏

阿久津良和(Cactus)