Microsoftは、COMPUTEX 2019の基調講演においてインテリジェントエッジのイノベーションとそのビジネスチャンスをアピールした。冒頭にステージに登壇したニック・パーカー氏(同社CVP, Consumer and Device Sales)は、例年のようにPCエコシステムを構成する台湾コミュニティに対する謝意を丁寧に伝え、今、まさに進行中のインテリジェントクラウドとインタリジェントエッジへの取り組みで、これからも密接に団結して未来を勝ち取ろうとコミュニティを激励した。
将来のPC業界のエコシステムは、いわばビジネスモデルそのもののトランスフォーメーションがカギを握っているということを再確認したわけだ。
と、これまでの蜜月が永遠に続くかのような穏やかな論調で基調講演は幕を開けたが、そのあとがちょっとこれまでとは違った。
これから求められるのはWindowsではない
パーカー氏がステージを去り、続いて登壇したロアンヌ・ソンズ氏(CVP、Operating Systems Platforms)は、モダンOSとしてのWindowsに関するビジョンを披露、やはりファンタスティックなデバイスの数々をありがとうと台湾勢に謝意を述べ、Windows 10のスマホ同期アプリでクラウドAIのマシンラーニングによる顔識別などの新機能についてひとしきり紹介した。
だが、そのあと、すでに変わっている世界の中で、期待しているものが今までとはちがう未来のカスタマーについて真剣に考えることを提案したのだ。
MicrosoftのモダンOSは、ローカルのコンピュータとクラウドのコンピュータパワーを組み合わせ、使う側の人々が中心にいるとソンズ氏はいう。早い話がWindows自体はどうでもいいということだ。それよりも、クラウドを通じてスマホとPCの両方をつなぐことで、双方のデバイスがフルパワーを発揮することができるというのが、クラウドと密接に連携するモダンOSの真骨頂だとアピールする。
デジタルとフィジカルがつながる世界
さらに、基調講演後半ではIoTパートナーに対して、トランスフォーメーションを促す内容に訴求内容が一変した。これまでとはビジネスモデルを変え、パートナーシップの形態も変わるであろうことを切々と訴え、この先の業界で起こるトランスフォーメーションについて語り始めた。
Microsoftが考えているのは、デジタルワールドとフィジカルワールドの融合だ。そのためにも、これまでのビジネスモデルを変えて、考え方をシフトする必要があるという。
それには、アグリゲーション(集合体)のためのバリューチェーンを築く必要がある。それこそが、MicrosoftのIoTポートフォリオであり、そこに投資を集中するという。それによってイノベーションを牽引していこうというわけだ。
基調講演の後半は、大成功している今の体制を再構築し、もういちど新しいエコシステムを作り、その成功を勝ち取ろうというアジテーションに終始した。今がそのときであり、そのためにもニューウェイブのアプリケーションを考えようと訴える。
もちろんそれは簡単なことではない。でも、いっしょにやろう。PCのときにそうしたように、すでにプラットフォームは用意した。たとえば、Azure IoT Centralはオープンなクロスプラットフォームとして何でもできるように作られている。それがなぜ、それほど重要なことなのかと問われたとき、何でもつながるからだとMicrosoftは考えている。そしてそのことこそが重要なバリューになるというのだ。
何でもPCにつながったあの頃を思い出してほしいと観客に訴えるソンズ氏。こともあろうにIRQ(割り込み要求)などという言葉も持ち出した。観客のどれほどがIRQにまつわる苦しみを覚えているのかどうか。言っている本人だって年齢的に知っているかどうかあやしい。
デバイスからクラウドへ、新しいエコシステムの構築を
今、USBなどを使って何でもカンタンに周辺機器類がつながるようになったのと同じことをIoTの世界でできるようにしようと、IoT Plug and Playというオープンな新しいモデリング言語も提案された(もとは2019年5月のBuildで発表)。それをいっしょにやっていこうというわけだ。同時に、自動的にPlug and Playのコードを作るVisual Studioの新機能なども披露され、IoTデバイスの洗練について注力していることがアピールされた。
今回の基調講演は、このままデバイスそのものにこだわっているだけでは、Microsoftとの蜜月は続かないという布告でもある。
いつまでも今のビジネスモデルとエコシステムが持続するわけではないという、ある意味でMicrosoftが起こした変革についてこれないことはパートナーとしての死を意味するという宣言だ。台湾のパートナーたちにとっては辛辣だったにちがいない。