豊島将之王位への挑戦権を争う第60期王位戦挑戦者決定リーグプレーオフの木村一基九段―菅井竜也七段戦(紅組)と永瀬拓矢叡王―羽生善治九段戦(白組)が6月4日、東京・将棋会館で行われ、木村九段と羽生九段が勝って挑戦者決定戦に進出しました。
羽生九段 歴代1位となる通算勝数1434勝目!
木村九段―菅井七段戦は後手菅井七段が得意の中飛車へと進め、木村九段は銀をすばやく繰り出し攻めの姿勢で対抗しました。互いに押したり引いたりの中盤戦でリードを奪ったのは菅井七段でしたが、受けの得意な木村九段も決め手を与えず、すぐ後ろを追走する展開となりました。
勝負の分かれ目は両者持ち時間がわずかになった最終盤。形勢の針がゆれ動く中、飛車を敵陣深く打ち込んだ菅井七段でしたが、木村九段のほうにその飛車をすぐに消す手段が生じて勝負あり。1局の将棋は概ね100手前後で終局しますが、本対局は総手数207手! 両者の気持ちがぶつかりあうような熱局でした。両者は令和初日の5月1日にもリーグ本戦で317手の死闘を演じていて、2局連続での長手数決着となりました。
永瀬叡王―羽生九段戦は羽生九段の先手で華々しい戦いになりやすい「横歩取り」の戦型へと進みました。鋭い攻めを繰り出す永瀬叡王に対し羽生九段は終始丁寧に受け、やがて局面をリードします。相手の攻めが息切れしたと見るや反撃に転じ、最後は盤の片隅で一度も動かず眠っていた桂馬まで攻めに参加させ全軍躍動。追いすがる永瀬叡王を突き放しました。
羽生九段はこの勝利が通算勝数が歴代1位となる1434勝目。大山康晴十五世名人が持っていた1433勝超えを達成しました。両者の記録は棋戦数が今より少なかった時代のものと現代のものですので、同列に語れるものではありませんが、これからも現役生活が続くことを考えれば、今後羽生九段が歴代2位となった1433勝をはるかに上回る第1位の記録を樹立することは間違いありません。
今期王座戦の挑戦者決定戦は、羽生九段と木村九段によって争われることとなりました。両者の対戦成績は羽生九段の32勝、木村九段の16勝、1持将棋(※引き分け)。タブルスコアとなっていますが、直近10局に限れば5-5のイーブンであり、一番最近の対局、5月30日に行われた第32期竜王戦ランキング戦1組3位決定戦も木村九段が制しています。
2014年度の第55期、2016年度の第57期本棋戦七番勝負で相まみえた両者。結果はいずれも4-3のフルセットで羽生王位(当時)の防衛というものでした。他にも2008年度の第56期王座戦五番勝負、2009年度の第80期棋聖戦五番勝負、2度の竜王戦挑戦者決定三番勝負と、番勝負でことごとく羽生九段に敗れている木村九段ですが、竜王戦本戦入りの一番に続いて、コツコツと借りを返したいところです。
羽生九段としても負けてはいられません。若手の躍進著しい現在の棋界、その筆頭格の永瀬叡王を下して「夢のタイトル通算100期」へのチャレンジまであと1勝となりました。40代決戦を制し、その扉を自ら開くか。羽生vs木村、好局必至の挑戦者決定戦は6日に行われます。