斎藤慎太郎王座への挑戦権を争う第67期王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦の藤井聡太七段―佐々木大地五段戦が6月3日、東京・将棋会館で行われ、佐々木五段が勝って羽生善治九段の待つ2回戦に進出しました。佐々木五段の先手で、互いに飛車の上の歩を敵陣目掛けて突いてゆく「相掛かり」の戦型から、終盤の競り合いを制しました。

藤井七段 前期の成績ベスト4超えならず

次はレジェンド・羽生九段と! コンスタントに高勝率をマークする佐々木五段

佐々木五段は24歳。2016年4月プロデビュー。ただし奨励会三段リーグで2位以内に入ったのではなく、2014年度前期の第55回と、2015年度の第58回で次点となり「三段リーグ戦で、2回次点を取った者はフリークラスに編入することができる」規定によりプロ入りしました。フリークラス棋士は順位戦への参加資格がなく、また10年以内に規定の成績を挙げないと引退となりますが、佐々木五段は「良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上」の条件を2017年2月にクリアし、晴れて順位戦にも参加でき、「10年引退」のしばりがない棋士となりました。フリークラス脱出までの期間はわずか10カ月。これは史上最速の記録となっています。

勝率は常に高く、デビュー期の2016年度は25勝10敗[0.7142]で全棋士中6位、2017年度は36勝20敗[0.6428]、2018年度には46勝13敗[0.7796]で4位にランクイン。2018年度は勝数で藤井七段を1勝上回り、最多勝利賞を受賞しました。

タイトル戦線においては2018年度の第59期王位戦で予選を抜けて挑戦者決定リーグ入り。1勝4敗で陥落となりましたが、翌第60期で再び予選を抜けて2期連続のリーグ入りを果たし、木村一基九段、稲葉陽八段、長谷部浩平四段を破り3勝2敗と健闘を見せました(※王位リーグは2人残留、4人陥落のルールで、佐々木五段は勝ち越しながら惜しくも陥落)。

2回戦でぶつかる羽生九段とは初手合。本戦準々決勝で棋界のレジェンドとのファーストコンタクト、十分な準備をもって挑むに違いありません。

敗れた藤井七段は前期第59期のベスト4を超えることは叶いませんでした。本戦シードの権利を持ち、挑戦権に最も近い棋戦とも目されていただけに、残念な思いのファンも多いことと思います。5月28日に棋王戦予選決勝の対都成竜馬五段戦、31日に竜王戦ランキング戦3組決勝の対菅井竜也七段戦、そして6月3日の本対局と、立て続けに要所の対局があり、勝星は対菅井七段戦のみとなりました。現役高校生には酷なスケジュールだったかもしれませんが、多忙は今も昔も勝っている棋士の宿命でもあり、これは仕方がありません。苦しい1週間となりましたが、何と言っても現役最年少棋士。その若さで敗戦を力に変えることでしょう。