2017年7月にUSB 3.2のSpecificationが発表された、という話は意外に知られていない。まあ当時はUSB 3.0がメインで、USB 3.1ですらほとんど普及していなかったことに加えて、USB 3.1よりもUSB Type-Cの普及に向けて実装が増え始めてきたという時期と重なり、関心の方向はUSB Type-Cの方に集まっていたから無理もない。
USB 3.2とは何か? というと、USB 3.1と同じく10Gbpsの信号速度だが、2レーンを同時に利用することで20Gbpsで通信できるというものである。
図1がUSB 3.1とUSB 3.2における構造の違いを図にしたものだ。
第3世代Ryzenの補足記事で、USB 3.1のポートを2つまとめてUSB 3.2にできないのか? という質問を出した。これは、単独のUSB 3.1のポートを2つ並べただけではUSB 3.2にならず、MAC/Transaction/...の上位層は2ポートで連携するような仕組みを取らないといけないので、そうした仕組みを用意していないのか? という質問だったわけだが、まぁ予想通りそうしたものはなかった。
そんなUSB 3.2だが、2019年になってやっと製品が出始めた(Photo01)。台湾ASMediaは「ASM3242」というHost Controller(Photo02,03)、それと「ASM2364」というUSB 3.2 20G to PCIe NVMe SSD Bridge(Photo04)、およびUSB 3.2 20G to CF Express Bridgeの「AS2362」(Photo05)を発表しているが、同社によればすでに量産に入っており、マザーボードメーカーなどへの出荷も開始しているという。
COMPUTEX TAIPEI 2019でASMediaが動作デモを行っており、M.2 SSDには2GB/sec、CF Expressでは1GB/sec近くという、ほぼ理論帯域に近い性能が出ていた。
また、Speed Dragon社はHost Controller Card、SSD Enclosure、4ポートHubなどを現在試作中との話であった(Photo07)。
余談だが、他メーカーの反応はちょっと鈍い。VIA Labsはいまのところ予定がなく、おそらく2020年とのこと。Fresco Logicも現在IPを開発中という話であった。
ところで「USB 3.2 20Gbs」という表記だが、これは2018年10月に決まったもののさっぱり普及していないのだが、ここにきてやっとこの表記が使われ始めたようだ。仕様書上での名前とマーケティング名、実効速度をまとめると以下のようになる。
■仕様書上での名称:実効転送速度:マーケティング名
USB 3.2 Gen 1:5Gbps:SuperSpeed USB
USB 3.2 Gen 2:10Gbps:SuperSpeed USB 10Gbps
USB 3.2 Gen 1×2:10Gbps:なし
USB 3.2 Gen 2×2:20Gbps:SuperSpeed USB 20Gbps
USB 3.2のCertificationを取得したケーブルはまだ存在しない。物理的には、既存のUSB Type-CケーブルでUSB 3.1に対応するものはUSB 3.2 20Gbpsで利用できる「はず」であるが、なにしろCertification Programがまだ始まっていないので確認が取れないというのが実情である。
これについてULは「Certification Programが定まり次第、ウチもCertification Programを開始する」としており、またいくつかのケーブルメーカーも口をそろえて「いまのところCertification Programが始まっていないので何とも言えないが、始まり次第Certificationを取得する」としており、あとはUSB-IF側の作業待ちになっている。早くこれがスタートしてくれるといいのだが、おそらくはUSB4との絡みもあって調整に手間取っているものと思われる。
続くUSB4だが、少なくとも現時点ではまだSpecification 1.0も出ていないので、まだ様子見といった感じだ。ASMediaを含めて「現時点で具体的なプランはない」という説明であった。とりあえず2019年後半に出てくるマザーボードの中には1~2ポートのUSB 3.2 20Gbpsポートを搭載する製品が出てくると思われるが、USB4はまだだいぶ遠い先になりそうな感じであった。