6月4〜10日は「歯と口の健康週間」。これに先立ち、5月29日に、歯科医・歯科衛生士、歯科業界各社が連携して様々な情報を発信する「ブレス・ハザードプロジェクト」によるセミナーが開催された。
インバウンド観光客が急増する一方、日本人が先進国の中でもオーラルケア意識が低いと言われていることを背景に、今回のセミナーでは日本人の口臭の実態や各都道府県別の傾向などをまとめた『口臭白書2019』の発表が行われた。
口臭が原因で「職場に行くのが嫌になる」「偏頭痛を催す」人も
ブレス・ハザードプロジェクトはこのほど、全国47都道府県・4700人を対象とした口臭ケアに関する意識調査を実施した。加えて、口臭測定器を用いて首都圏200名を対象とした口臭の実態も調査。
今回のセミナーではまず、歯科衛生士として歯科予防活動の普及に携わる道廣香奈氏が登壇。日本人の口臭ケア意識と口臭レベルの実態の要点を紹介した。
「自分自身の口臭について気になった経験」の有無を意識調査で聞いたところ、9割が気になった経験を持つことが明らかに。特に男性では、口の中の悩みとして「歯並び」などを抑え「口臭」が第1位となった。
「周囲の口臭に悩まされるシーン」については、「仕事の打ち合わせ時」との声が圧倒的に高い割合という結果が得られた。道廣氏いわく「なかなか指摘できない相手と接する中で、『職場に行くのが嫌になる』『臭いだけで偏頭痛を催す』などの声もあり、多くの人が悩まされている」とのこと。
また、女性を中心に「デート相手の口臭が気になる」という声も多く、特に30代女性は過半数の人が「口臭が気になった経験がある」と回答。中には口臭が原因で破局したという人もおり、改めて男女間のコミュニケーション上で口臭が大きな問題となることが明らかになった。
さらに、口臭に関する正しい知識などを問い、各都道府県別に口臭意識の高さをランキング化した結果、徳島県が1位に。
この結果に対し、県民性研究の第一人者である矢野新一氏は、「阿波商人が、大阪をはじめ全国で活躍してきた徳島県。阿波商人として稼ぐためには、ビジネスの相手を説得し、競合相手に勝たなくてはいけません。その中で口への意識も高くなりやすかったのでしょう。また、商人気質は病気がひどくなって治療にお金や時間をかけるのは無駄でもったいないと捉えます。早めの対策でケアするほうが得と考え、予防する習慣が身についた可能性があります」とコメントを寄せている。
女性の約6割は「口臭予備軍」
口臭測定器を用いた実態調査とアンケート調査の傾向について、『口臭白書2019』では「口臭レベルが深刻なのは男性より女性」、「歯磨き回数と口臭は無関係」、「口臭は夫婦・恋人とのコミュニケーションに深い関係あり」とまとめている。
口臭レベルの測定値を見てみると、「周囲の人が気になる臭いの基準値」とされる50を超えたのは、全体の13.1%という結果に。男女で比較すると、同項目の女性の割合は男性の2倍以上となった。
全年代で最も割合が多かったのは測定値が30〜50未満の人で、特に若年層の女性では46.2%に上る。測定値30は周囲の人が気になる値ではないが、「臭いを発し始める要注意層」だという。
デート時に口臭が気になるという意見は約4割。パートナー間コミュニケーションと口臭測定値の関係を調査分析したところ、50の基準値をオーバーした比率は、未婚より既婚のほうが高かった。道廣氏は「未婚の時は口臭を気にしていたが、結婚すると口臭に気を使わなくなるという現実が読み取れます」と分析を述べた。
1日3回のテキトーな歯磨きより、1日1回の丁寧な歯磨きがいい?
セミナー後半では、日本歯周病学会理事などを務める歯科医の若林健史氏が、口臭の原因や対策について語った。
若林氏は「大きな問題となるのは虫歯や歯周病、舌の上に付着した舌苔(ぜったい)など、口の中のトラブルによる口臭がほとんど」と指摘。
歯周病は近年、全身の疾患との関わりも注目されているが、口臭予防の上でも重要なようだ。舌苔の臭い予防には、物理的に舌ブラシや歯ブラシでこそぎ取るのが有効だという。
若林氏は「女性は、思春期や妊娠期・出産期、更年期などでホルモンバランスが変化し、その度に口腔の細菌が増えやすい環境になる。どうしても歯周病リスクが高い」とも解説し、「マウスウォッシュなどを使うのもいいですが、歯間ブラシや歯ブラシでしっかり歯垢などを落とす。セルフケアでは限界もあるので、3カ月に一度は歯医者でメンテナンスを」と呼びかけた。
質疑応答の場面では、歯磨きの回数と口臭測定のデータについての質問も。若林氏は「細かい調査はこれから」と前置きした上で、「自分の歯磨きのクセを修正しないまま、毎回同じところが磨き残しになっている可能性もあると思います。とある研究では、歯磨きから24時間経つと細菌が歯垢をつくって悪さをしだすデータもあり、極端なことを言うと、1日3回テキトーに磨くより、24時間に1回きちんと歯磨きをするほうがいい」とアドバイスを述べた。