外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 5月の推移】

5月のドル/円相場は108.285~111.661円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.8%下落(ドル安・円高)した。

「合意間近」と見られていた米中通商協議が、日本のゴールデンウィーク終盤に突如として破綻。111円台で推移していたドル/円相場は、中国が対米報復関税を発表した13日には109.020円まで下落した。その後は本邦勢の押し目買いなどで下げ渋り、一時110円台半ばへと値を戻したが、世界景気減速懸念が広がり米長期金利の低下基調が鮮明になると再び軟化。

31日には、米国がメキシコに対し、不法移民対策が不十分だとして制裁関税の発動を発表した事を受けて世界的に株価が下落。米長期金利の低下に拍車がかかると108.20円台まで下値を切り下げた。

【ドル/円 6月の見通し】

6月のドル/円相場は、上下双方向に振れるリスクがありそうだ。米国発の貿易摩擦の影響で、世界景気後退(リセッション)への懸念が深まっており、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が高まっている。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、FF金利先物から算出する「Fed Watch」によると、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが行われる確率が5割を超えた(5月31日終了時点)。パウエル米FRB議長以下、FOMCの主要メンバーが、「利下げは検討していない」との見解を繰り返している事を考えれば、現時点では市場の利下げ織り込み度合いはやや過剰と言えるかもしれない。

年初と同じように、利下げ観測の後退によってドルが反発するシナリオを辿る可能性もあるだろう。ただし、米経済が足元で減速気味である事は疑いようがなく、今後さらに減速感が強まればFRBとしても金融緩和に舵を切るしかなくなる。7日の米5月雇用統計などが軟化すれば、ドルが続落する可能性も相応に高い。その意味でも、6月のドル/円は米国の重要統計に一喜一憂する事になりそうだ。

また、米重要統計の結果を受けてFRBが19日のFOMCでFF金利の道筋にどのような見方を示すか注目されよう。その他、米中首脳会談の開催も取り沙汰される6月末のG20首脳会議(サミット)に向けて、通商協議に進展が見られるのかどうかも重要だろう。

【6月の日米注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya