米Appleは6月3日 (現地時間)、「iPadOS」を発表した。これまでiOSに含む形で提供してきたiPad向けの機能を独立させたもの。macOS、iOS、watchOS、tvOSと共にAppleのプラットフォームを形成する新しいOSになる。iOSはiPhoneに軸足を置いてデザインされており、例えばホーム画面が広いスクリーンを効果的に使い切れていないなど、iPadに十分に最適化されていないところがあった。iPad用のiPadOSが用意されたことで、PCとも競合するiPad独自の進化が加速しそうだ。
iOS 12からのアップデートになるiPadOSでは、iPadの大きなディスプレイや汎用性を伸ばす強化が行われている。ホームスクリーンの1ページにより多くのアプリを並べられ、Today Viewを表示することも可能。ウイジェットにもアクセスしやすくなった。
大きな強化点の一つがマルチタスク機能だ。アプリを切り替えるマルチタスク画面を呼び出すような操作で、スライドオーバーでも使用したアプリの一覧を呼び出して、複数のアプリをすばやく切り替えられるようになった。またスプリットビューで複数のスペースに同じアプリを置ける。例えば、Safariとメールを組み合わせていて、別のスペースでSafariとPagesを組み合わせるようなことが可能だ。そうして様々なスペースにアプリが散らばっても、App Exposéを使って特定のアプリの使用状況を確認できる。
マルチタッチジェスチャーを使ってテキストを編集しやすくなる。指先で触れるような自然な操作でカーソルを動かしたり、テキストを選択可能。そして3本指のピンチインでコピー、ピンチアウトでペースト、3本指を左にスワイプするとUndoを行える。
ソフトウェアキーボードはピンチインすると、iPhone用のような小さなサイズに縮小してフローティング表示される。iOS 13で追加されるスワイプによるタイピング(QuickPath)を使うことで、片手だけのタイピングが可能になる。
わずか20msの描画遅延で自然が書き心地を実現していたApple Pencilが、iPadOSでは描画遅延が9msに短縮され、さらに快適になる。デザインが刷新されたツールパレットは、配置場所を変えたり、縮小することが可能。Webページやドキュメント、メールの全体のスクリーンショットをキャプチャして、フルページのマークアップを行える。
macOSのファインダーのような存在であるFilesアプリにコラム表示を追加、多くのiPadユーザーが求めていた外部ストレージ (USBドライブ、SDカード、HDD)内のファイルへのアクセスをサポートする。SMBを用いたファイルサーバーへの接続にも対応する。他にも、iCloud Driveのフォルダー共有、Zipの圧縮・解凍、ダウンロードフォルダ、PDFの作成・回転・マークアップ (Quick Actions)といった機能を備える。
Files強化と共にiPadユーザーからリクエストが多かったSafariのデスクトップモードでの動作が実現する。Google Docs、Squarespace、WordPressなどがiPadのSafariで快適に動作するようになる。
Macユーザーは「macOS Catalina」の「Sidecar」という機能を使うと、iPadをMacのサブディスプレイとして利用できる。
他にも、ダークモード、「写真」アプリのアップデート、Sign In with Apple、新しいマップ、パフォーマンスの向上といったiOS 13の新機能や強化をiPadOSでも利用できる。
Appleは3日にiPadOSの開発者プレビューをApple Developer Programのメンバー向けにリリース、7月にパブリックベータ・プログラムを開始する。正式版のリリースは2019年秋。対象デバイスは以下の通り。
- 12.9-inch iPad Pro
- 11-inch iPad Pro
- 10.5-inch iPad Pro
- 9.7-inch iPad Pro
- iPad (第5世代/第6世代)
- iPad mini (第5世代)
- iPad mini 4
- iPad Air (第3世代)
- iPad Air 2