「IFA」は例年9月初めにドイツ・ベルリンで開催される世界最大級の家電製品展示イベントです。2019年の本開催に先立って、世界55カ国・300人以上のメディア関係者(うち80%が編集長クラス)にその概要を説明する「IFA Global Press Conference (IFA GPC)」が4月下旬にスペイン・アンダルシア州で行われました。
最大のサプライズは、IFA NEXTのパートナー国発表
IFA GPCでは、IFAを主催するメッセ・ベルリンのCEO、クリスチャン・ゲーケ氏がIFA2019の開催概要を説明しました。IFA2019の日程は9月6日~11日。例年通り、メッセ・ベルリンを会場に開催されます。ちなみに2018年の出展社数は1,800以上、244,000人の一般入場者、152,480人のビジネス関係者、5,800人のジャーナリストが訪れたという大規模な見本市です。
ゲーケ氏のプレゼンテーションには、いくつかのサプライズ的な要素が含まれていましたが、中でも最大の驚きは、日本が「IFA NEXT」の初代パートナー国となったというもの。IFA NEXTは、スタートアップ企業などがイノベーションをアピールする場として2017年から設けられた非常にホットな展示ゾーンです。ゲーケ氏が発表したそのインパクトは日本から来た我々だけでなく、54カ国の報道関係者をもどよめかせました。
というのも、IFAにおいて(IFAに限らずグローバルマーケットにおいて)、日本のコンシューマー・エレクトロニクス産業の存在感は薄くなる一方。今年のIFA GPCで報道陣にプレゼンテーションを行った登壇企業をみても、TCL、ハイアール、中国資本の入ったドイツ・Metz、ハイセンスと中国企業のオンパレードでした。また、調査会社のIHSからは、4Kテレビ(UHD TV)の普及率において日本は北米の半分以下、西欧、中国にも引き離されるという報告を聞かされたばかり。そのような流れの中、急に「Japan」の名前がコールされたのですから、「え!? 日本www」と意外感にざわつくのも無理はありません。
世界へ羽ばたけ、日本のスタートアップ
今回のパートナーシップは、日本がカネを積んで強引に獲得したものではありませんが、「選ばれた」と表現するのもちょっと違うようです。経済産業省 商務情報政策局長の西山圭太氏は、2018年末にメッセ・ベルリンから日本の経済産業省にオファーがあったことを明かしつつ、「日本国内にもCEATECというイベントがあるが、日本の中で閉じてやっていたのでは(世界へのアピールが)難しいと感じていた。世界各国のメディアとコンタクトを続けてきたIFAの活動は良いと思った。ほっておいて、外国の方が日本に興味を持つ時代でもないので、こちらから出ていくことも必要」とその経緯を語りました。
西山氏によると、IFA NEXT出展スペースは国の予算で確保しており、これから出展企業を募っていくとのこと。出展を希望するスタートアップは、まず経産省情報産業課にコンタクトを取りましょう。なお今年1月、米ラスベガスで開催されたCESにおいては、「J-Startup」の名称のもと22社のスタートアップがまとまって出展しましたが、IFA NEXTにおいて同じ打ち出し方をするかは未定とのことです。
メッセ・ベルリンのIFAグローバル統轄本部長 イエンズ・ハイテッカー氏は、「90年代、日本の家電メーカーは存在感を放っていた。当然、日本のスタートアップにも可能性を感じているが、彼らには国際的なステージが必要だと思った。他国を恐れずに外へ出て、イノベーションをオープンに伝えていってほしい。今回のパートナーシップは、その良い機会となるはず」と、日本がかつての輝きを取り戻すきっかけになればと期待を寄せていました。
IFA GPCでの注目ポイント
以下、4月に行われたIFA GPC 2019にて、筆者が「おっ」と感じたトピックをフラッシュでお伝えします。9月のIFA2019本番が楽しみですね。
基調講演はファーウェイ vs クアルコム
IFA2019の基調講演は渦中のファーウェイとクアルコムが激突! ……といっても同時に登壇して対談するわけではありませんが、5G戦略をめぐってどのようなプレゼンテーションが両社から行われるのか興味津々です。
ゲーケ氏がカンファレンスの壇上で、基調講演のファーストスピーカにファーウェイ CEOのリチャード・ユー氏を選んだことについて、「カネを積まれたから選んだわけはありませんよ」と、きわどいブラックジョークを飛ばしたのには脱帽しました。ハイテッカー氏も、「もちろん、米国と中国の軋轢は認識している。オープンにディスカッションしてほしい」と企図したオファーであることを認めています。
うわっ…日本の4Kテレビ普及率、低すぎ
調査会社 IHSによる4Kテレビ(UHD TV)についてのレポートでは、日本の普及率が将来的にも低調であることが示されました。五輪イヤーの2020年でも15%を下回り、2022年でも30%に到達しません。これは、北米に比べて1/2、西欧よりも中国よりも低い数字です。
ハイセンス、EURO2020もスポンサード
欧州のテレビ機器で急成長している中国ハイセンスは、2018年サッカーロシアW杯に続き、2020年のサッカー欧州選手権(EURO2020)においても公式パートナー契約を結んだことをアピールしました。
ブラックフライデーの売上、年々拡大
Amazonのセールによって、日本でも浸透しつつある「ブラックフライデー」。クリスマスが近づく11月第4金曜日、ネット通販のセールスが年々拡大していることが調査会社 GfKのデータによって示されました。2013年のクリスマスピークに比べて、2018年のブラックフライデーは+88%。ほぼ倍増しています。
ゲーミングPCが世界的に絶好調
これも同じくGfKの調査データ。PC製品のカテゴリではゲーミングPCおよびゲーミングデバイスの成長が顕著であると報告されました。PS4など家庭用ゲーム機が伝統的に強い日本でも、eスポーツの盛り上がりをきっかけにPC市場が盛り上がるといいですね。
Bluetoothオーディオ高成長、スマホは鈍化
GfKの調査データをもう一つ。このグラフによると、スマホの売上前年比は+2%とごくわずかな上昇。大きく拡大しているのは、ヘッドホン(イヤホンも含む)の+37%と、Bluetoothスピーカーの+14%。ヘッドホンのうち、完全ワイヤレスイヤホンだけに絞ると数字はどうだったか気になりますね。