ある日突然やってくるお通夜・お葬式。地域によって慣習が若干異なりますが、どの地域であっても通用する基本的なお通夜のマナー・服装について、のべ4,000人以上のビジネスマンにアドバイスしてきた服のコンサルタントが教えます。

  • お通夜のマナーを理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    お通夜のマナーを理解していますか?

お通夜の歴史

お通夜の歴史は仏教の元祖であるブッダが亡くなったときにさかのぼります。もともとは故人の現世さいごの夜を親しかった人たちで思い出話を語り合う場でした。こういう背景からも分かるように、親しい人はお通夜と翌日の告別式に参加しますし、故人との関わりがそれほど深くない人はお通夜より告別式に参加するといわれてきました。

ところが、昨今ではこの習慣もあいまいになり、仕事終わりに参加しやすいお通夜だけ参加しておくという雰囲気も一般的になりました。本来は、葬儀・告別式にどうしても都合がつかない場合は、お通夜のみ出席します。この時、受付や世話役の人に告別式に出席できない断りを伝えますが、喪主に直接伝えるほどではありません。

一方、会社を代表する場合、関係が深かった人と代表はお通夜と告別式に参加し、他の人たちは告別式だけ参加します。つまり、葬儀・告別式に出るからといって、必ずしもお通夜に出席する必要はないということです。どちらか一方にしか参加できない場合、また、親しい仲ではなかった場合、葬儀・告別式に参加するほうが本来は一般的です。

お通夜の服装

お通夜といえば「冠婚葬祭でいうところの礼服」、喪服が基本だと思われがちですが、実は黒いビジネススーツとは別物です。そして、お通夜に限っては平服であってもマナー違反にはなりません。喪服は黒いビジネススーツよりも漆黒という印象です。

お通夜における服装趣旨は「故人が亡くなったことに対する哀悼をささげる」ということ。その結果、「お通夜=喪服」というように紐づけられるようになったようです。

地味なダークスーツであれば平服であっても参加可能です。ただし、平服OKといっても、男性の場合、ジャケパンはNGです。最低限、上下同一生地のスーツである必要があります。また、裾の仕上げはシングル一択。カジュアルに崩したダブルは避けたいところです。

ワイシャツとネクタイは浸透していると思いますが、白いシャツに黒いネクタイ。そして、光り物であるネクタイピンやカフスは避けましょう。また、足元に注意が必要です。靴と靴下は黒のみを選べます。また、黒であってもエナメルのような光沢あるものはもちろんNG。

一方、女性はどうでしょうか? 黒・濃紺で無地のシンプルなスーツやワンピースを基本として、ネックレスは真珠、ピアス・イヤリングは小粒のタイプを選びます。黒いストッキングに黒い靴でヒールも高すぎず3~5センチくらいのものが基本です。また、黒靴であっても金具など装飾が派手なものもNGです。

  • お通夜の服装イメージ

    お通夜の服装イメージ

ところで、喪章をご存知でしょうか? 遺族側も弔問側も黒い喪服で見分けがつきません。そこで喪章を着けることで喪主を分かりやすくしています。喪主だけが着ける場合もあれば、家族全員が着ける場合もあります。腕章タイプやリボンタイプがありますが、どちらも左側に着けることがポイントです。これは仏教の考え方によるところが大きいようです。参列者側が着けることはありません。

また、男女問わず、よくあるNGですが、コートやバッグは殺生をイメージする革素材を避けましょう。

次に女性のメイクについてです。女性のメイクは片化粧といわれるように薄めのメイクが基本になります。口紅は赤みが強いものは使わず、薄っすら色がつく程度を選びましょう。チークも不要です。とはいえ、ノーメイクだと男性がヒゲをそっていないみたいなもので、身だしなみマナー違反になってしまいます。失礼がない程度に薄っすらメイクはしましょう。

ただし、目的は華やかにすることではなく、失礼がないようにという具合です。

お通夜の流れ

お通夜で必要なものは、失礼がない服装と香典です。このとき、新札はNGです。お通夜・葬式では新札を選びません。死を予想し準備していたという意味にあたってしまうからです。そして、ご霊前と書かれた香典を入れた封筒に、「ふくさ」と呼ばれる包みに入れて持参します。ふくさは香典や結婚式のお祝いの封筒を包む入れ物です。紫色にしておけば男女兼用、また、結婚式でも生かせます。

あと、数珠はマストアイテムではありません。宗派によって数珠の様式も変わり、もし、選ぶならば自分の宗派のものを持参します。

そして、会場に着いたら受付で記帳します。「心よりお悔やみ申し上げます」「この度はご愁傷さまです」など、言葉とともに記帳しましょう。その流れで香典を受付の人に「お納めください」、「お供えください」という言葉とともに渡します。

お悔やみの言葉として「突然のことで言葉も見つかりません、お悔やみ申し上げます」という言葉を遺族に投げかけますが、これが立場を問わず、いちばん使いやすい言い回しではないでしょうか。

また、お焼香のやり方は宗派によって変わりますが、仏教全般では抹香と呼ばれる粉状のお香をたくのが一般的です。まずはお坊さんと遺族の前で一礼し、焼香台の前でもう一礼します。右手で抹香を小さくとり、額の前にもっていき香炉の炭のうえに静かに振りかけます。合掌後、遺族に一礼し席に戻ります。

お通夜が終わった後、「通夜振る舞い」と呼ばれる食事の席があります。地域によって若干慣習は異なりますが、ご案内があった場合は積極的に参加することが礼儀になります。といっても、故人に関係ない話題をしたり、大声で盛り上がったりすることはマナー違反です。故人にまつわるエピソードとともに故人を偲び、故人との関係性によって30分くらいで退席するとスムーズです。

予期せぬ時に訪れるお通夜。とはいえ、故人をしのぶ雰囲気の場で恥をかくわけにもいきません。その服装やマナーについては事前に調べておくに限りますね。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)