第32期竜王戦ランキング戦1組3位決定戦の羽生善治九段―木村一基九段戦が5月30日、東京・将棋会館で行われ、木村九段が勝って決勝トーナメント入りを決めました。羽生九段はこの対局に通算勝数歴代単独1位となる1434勝が懸かっていましたが、記録達成は次局以降へと持ち越されました。

羽生九段の歴代単独1位1434勝は持ち越しに

実力もさることながらユーモアに富んだ解説に定評がありファンの多い木村九段

対局は木村九段の先手で、序盤から飛車角が盤上を乱舞する激しい戦い「横歩取り」戦法へと進みました。両者激しく攻め合い、手数が70手に達する前に局面はすでに終盤戦。先手の木村九段は自玉も危険な状態でありながら読みを入れてさらに踏み込み、81手までにて相手玉を仕留めました。

木村九段は2008年度の第21期以来7回目の決勝トーナメント入り。2001年度の第14期、2005年度の第18期、2007年度の第20期、第21期で挑戦者決定三番勝負に進出しています。うち第18期では挑戦権を獲得しましたが、七番勝負では渡辺明竜王に0勝4敗で敗れています。

他に2008年度の第50期王位戦、第56期王座戦、2009年度の第80期棋聖戦、2014年度の第55期王位戦、2016年度の第57期王位戦と実に6回ものタイトル挑戦の経験を持ちますが、惜しくもタイトル奪取には至っていません。順位戦においては前期第77期B級1組で昇級を決め、間もなく始まる第78期を含め最高クラスのA級在籍通算5期。実力十分でありながらタイトルに手が届かないのは棋界の不思議のひとつです。

やわらかな口調、かつユーモアをふんだんに盛り込んだ解説にも定評があり、ファンが多い木村九段。決勝トーナメントは挑戦権獲得まで4勝が必要な位置からのスタートとなります。初戴冠を熱望するファンの期待に応えるべく、まずは初戦、対佐藤天彦九段戦での勝利を目指します。

敗れた羽生九段は通算勝数における大記録達成とともに、もうひとつの大記録・タイトル通算獲得100期も他棋戦でのチャレンジとなりました。次戦は6月4日、タイトル挑戦に直結する要所、第60期王位戦挑戦者決定リーグプレーオフの対永瀬拓矢叡王戦となります。