NTT東日本が、農業×ICTの専業会社「NTTアグリテクノロジー」を7月1日に誕生させる。
IoT/AIの活用により効率よく大規模圃場(ほじょう)を管理する『次世代施設農園』を自らも運営しつつ、そこで培ったトータルソリューションを全国の農業生産者に提供していきたい考えだ。
農業従事者は減っているが?
NTT東日本の酒井大雅氏が登壇して新会社設立の狙いについて説明した。酒井氏は、まず市場環境について「国内の農業従事者は1985年には350万人いましたが、2015年には175万人まで減りました。この約30年間で半減し、しかも現農家の8割は60歳以上と高齢化が進んでいます」と切り出す。
その一方で、法人経営体数は増加傾向にあるという。「担い手農家の法人化や改正農地法により、農業法人はこの30年間で(3,000社から2万3,000社へと)7倍超に増えました」。つまり個人が管理していた小規模圃場が、法人の経営する大規模圃場に集約される傾向が読み取れる。
圃場は大きくなるが、農業従事者は減っている。そこで必要となるのは、より一層の業務効率化だ。NTT東日本では2018年よりIoTデバイス・クラウドの活用により省力化と作物品質の向上、高い生産性を実現する「農業IoTパッケージ」を展開してきたが、この取り組みをさらに進化させ、次世代施設園芸ソリューションとして確立することを考えた。
ところでNTT東日本の目指す次世代施設園芸とは、1.高度な環境制御技術で生産性を向上し、2.従業員の適正配置や作業の効率化により大規模経営を可能にした、3.地域エネルギーの活用で安定した経営を続けられる農業のこと。なお農業経営に関しては、豊富なノウハウを有するサラダボウル社と協業し、「生産者目線で助言をいただく」(酒井氏)ことも決まっている。
次世代施設園芸は、地域の活性化と街づくりにも大きく貢献する。NTTアグリテクノロジーでは、地域の雇用創出、周辺インフラの整備、物流の活性化、地域エネルギーの活用、定住人口の増加、耕作放棄地の有効活用、関連産業への経済効果の好循環を狙っている。
同社ではトータルソリューションの提供に先がけ、まずは自分たちで運営することを是としている。「山梨県中央市に約1haの施設面積を確保しました。太陽型次世代施設園芸の実証ファームをつくり、リーフレタスやきゅうりなどを栽培します。ここをショーケースにして、多くのお客様にICTを活用した未来の農業の姿を見ていただけたら」と酒井氏。
NTT東日本本社ビルの社屋内に設置する形で、社員5名程度でスタートする同社だが、5年後に10億円、10年後に100億円といった規模の農産物流通を目指している。