中小企業で働いている人は、給料をアップさせるためには残業代は欠かせないと考えている人が多くいます。しかし、時間は有限であり限界があります。そこで、残業代で給料アップをするという考え方を変える必要があります。

仕事の捉え方・考え方を少し変えることで、残業を減らし、さらに、給料をアップすることも可能になります。実際に、社員数10人以下の中小企業でもあるわが社で実際にやっている取り組みの幾つかをここでご紹介したいと思います。

  • 残業を減らし、給料をアップさせるには?

キーナンバーを「見える化」する

社内にはいろいろな数字が存在します。特に売り上げとして数字が上がるまでのプロセスには、大小数多くの数字がどこの会社にもあります。会社の業績をアップするためには、まず、この数字を因数分解することからはじめます。ポストイットなどを使って因数分解が終了したら、並べられた数字を俯瞰します。そして、関係する人たちで考えるのです。「キーナンバーはどれだろう?」と。

ここで言うキーナンバーとは「感度の良い数字」ということです。つまり、その数字を少しだけ増やすことで、他の数字も連動して確実にアップする数字のこと(例えば弊社の場合メルマガの開封率)を指します。

ボーリングで例えるなら、一番右奥の10番ピンを倒してセンターピンの1番ピンが倒れることはありません。でも、センターピンの1番ピンを倒すことで10番のピンが倒れる可能性は存在します。ですから、この場合のキーナンバーはセンターピンの1番を狙うということになります。

このように因数分解をしてキーナンバーを調べてみると、はっきりと見えてくる数字が現れます。チームの人数などによっても変わりますが、キーナンバーの数は3〜5ぐらいになることが多いのです。

このキーナンバーさえはっきりしたら、あとはこの数字をアップさせるためには具体的に何をいつ実施するかを決め、行動します。そして、このキーナンバーを関係者全員が見える場所に、見える化として掲げます。この数字を毎日全員が目にすることで、働く人の意識や行動が変わりはじめます。

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1年間を12カ月ではなく52週単位で考える

会社の業績が思わしくない理由のひとつとして、対応が遅いということがあります。お客様に対する対応、計画に対する進捗修正の対応などことです。この対応が遅いために、時間がかかり過ぎ、1年間という間に業績を達成させることができないのです。でも、これも考え方を変えるだけで、対応が早くなり、従来以上の成果を上げることもできます。

ではどんな考え方を変えるのか? それは、1年を12カ月として考えるのではなく、52週として考えることです。30日を1サイクルとした12カ月では対応が遅くなります。遅くなった分だけ手遅れとなり、いくら修正をしても計画まで戻すことは難しくなることが多いのです。

それを、7日間を1サイクルとした52週にすることで、対応が早くなります。早く対応できる分だけ、計画との修正も数多く頻繁にすることが可能になります。

年間52回、上記のキーナンバーを常にチェックすることで、計画と進捗の差を限りなくゼロにすることができます。計画を達成するためには、進捗チェックをどれだけ細かくするかで決まるといっても、過言ではないと思います。

マニュアルなどで再現性を高め巨人の肩に乗る

中小企業の生産性が低い理由のひとつに、仕事が属人的であることが挙げられます。属人的とは、その人にしかわからない仕事や業務があることを指します。つまり、人に仕事が付いている状態のことです。

社内にマニュアルやチェックリストが存在しないため、再現性のある仕事が少なく、担当する人によってやり方も柔軟に変わる「我流」で業務が行われている状態のことです。

そもそも「マニュアル」という言葉に、日本人は良い印象を持っている人が少なくありません。縛られてる、つまらない、幼稚、個性がないなどがその理由のようです。

でも本当にそうでしょうか? 私が社長を務めているウィルウェイでは、マニュアルのことを「先人たちの涙と汗の知恵の結晶」と教えています。だから、「ぜひ、見せてください!」と社員たちは言ってきます。

万有引力で有名なアイザック・ニュートンは、こう言っています。「私がより遠くまで見渡せたとすれば、それは巨人の肩の上に乗っているからです」と。「巨人の肩に乗る」とは、過去の先人の知恵などを身に付けて、すぐに取り出せる状態にしてあることを指します。

つまり、先人たちが残してくれた知恵をベースに、時代に合わせてそれを書き換える過程で、初めてイノベーションやオリジナリティーが生み出せるということです。

属人的で人に仕事が付いている環境が続く限り、安定的な成長は見込めません。なぜなら、人に依存し続けるため、人に左右され続けるからです。マニュアル・チェックリスト・テンプレートなどを会社の文化として活用することで、その仕事を誰が行ってもある一定レベルの成果を期待できます。

さらに、時代に合わせて書き加えることで、仕事はさらに改善され安定的な成長を見込むことができます。先人たちの知恵には、それほどの価値があることを知り、会社の財産として引き継ぎ続ける文化が高い生産性を生み出すのです。

働き方改革を成功させるためには、これらのような働く人の考え方を改革する必要があると私は考えています。同じ人が、同じことを、同じやり方をしていたのでは、同じ結果になるだけです。

その中の構成要素を変えないと、違う結果はもたらされません。仕事でいえば、人とこと(仕事)は変えられません。でも、やり方(考え方)は変えることができます。働く人全員が、今回導入される働き方改革をきっかけと考え、新しい考え方・やり方に挑戦できるかどうかに全てはかかっているのです。

著者プロフィール:金村秀一(かねむら・ひでかず)

ウィルウェイグループ代表取締役社長。成功し続ける社長のための経営塾『100年塾』塾長。1973年東京生まれ。東京国際大学卒。1995年弱冠21歳の時に創業。企業のWEB制作や顧客管理、マーケティングサポート、飲食業界、人材派遣業界など会社の成長ステージに合わせて事業を展開し、労働生産性は中小企業の3倍と高い生産性を実現。これまで四半世紀の経営経験から得たノウハウと、右肩上がりの高収益企業を創造する経営計画書による経営の仕組みを、社員30人未満の小さな会社の社長を対象とした経営塾『100年塾』で2012年から主宰。著書は累計3万部を超える。最新刊に『右肩上がりの会社が必ずやっている現場ルール』(自由国民社)。