費用を払うと一定期間、製品やサービスを利用できる「サブスクリプションサービス」。「定額制」や「サブスク」などと言われていて、主に音楽や動画配信サービスなどで利用している人も多いことでしょう。この「サブスク」、なんと住まいの世界にも広がりつつあります。どのようなサービスなのか、解説していきましょう。

家も「定額住み放題!」そんな時代になる?

今まで、家を借りる・買うといえば、とても大掛かりなものでした。住みたいと希望する物件を見学し、気に入ったら申込み、審査をへて契約。引っ越したあとに電気・ガス・水道の手続きをし、さらに家具家電を購入して、日用生活品、食器などを揃えて……となるとひと苦労。なかでも、初期費用の負担は大きく、ひとり暮らしをはじめるにあたっても最低10万円から数十万円は必要となります。

一方で、この数年、世界的に「シェアリング・エコノミー」の流れが起き、所有せずにシェアして使うという流れが広まりつつありました。そのため、家具・家電のそろった「シェアハウス」に暮らすという選択肢も今や当たり前となっています。

そんななか、2018年末から2019年に入り、住まいやホステル・別荘の「サブスクリプションサービス」が次々と登場。基本的には毎月、定額を支払えばいろいろな施設に宿泊できるというもので、一定の場所に「定住」するイメージが今後、変わる可能性があります。

たとえば、世界を舞台にした定額制住居サービス「HafH(ハーフ)」「トークンハウス」はすでにサービスを開始しています。「HafH(ハーフ)」はブランド1号店が長崎にオープン、今後、拠点が増えれば、毎月8万2000円で全国の拠点に住み放題になります。どこも家具家電付きで荷物を揃える必要もありません。まずは一泊、旅行感覚で「お試し」で泊まれるのも面白いですね。

「トークンハウス」も同様の住まいのサブスクサービスです。こちらは現在、カンボジアのプノンペンにシェアハウスがあり、今後、アジアを中心に拠点が広がる予定です。トークンハウスのユニークな点は、コミュニティ内で使用できるトークンTKCを発行し、それを使用して拠点を確保できるというもの。将来的には誰もが「世界一周できる社会」を目指しているので、旅、なかでも世界一周に興味がある人はまずは応募してみることをおすすめします。

地方にも都市部にも。住まい方の常識が変わる?

住まいの拠点を1カ所に限定せず、2カ所、3カ所と複数持ち、旅するように暮らす「多拠点生活」に対応したサービスも登場しています。たとえばゲストハウス使い放題の「Hostel Pass」や、共有別荘・共有スペースの「ハンモサーフィン」、多拠点に住み放題となる「ADDress」はそんなサービスです。

「Hostel Pass」は毎月1万5000円と手頃な値段で、日本全国の登録ホステルが泊まり放題に。現在、北海道から宮城、東京、神奈川、京都、石川、福岡などのホステルが宿泊可能になっています。1回に利用できるのは2泊までの「多拠点PASS」、無制限に予約できる「ホステル暮らしPASS」など、利用ペースにあわせて3種類のプランが用意されているので、自分のしたい暮らしに合わせて選べるのがうれしい!

一方で、地方に眠る「空き家」を資源としてもっと活用しようというのが「ハンモサーフィン」で、毎月1万円で登録されている共有別荘や共有スペースが利用できます。現在、四国を中心に全国19か所の拠点を展開しています。また、これからですが、多拠点に住み放題となる「ADDress」もサービス開始予定となっています(現在、新規の会員は募集停止中)。

さらに都市向けの賃貸住宅にも変化の兆しがあります。「OYO LIFE」は、敷金・礼金・仲介手数料が不要で、家具・wi-fi付きのマンションが1か月から契約できます。スマホで契約が完結できるとあって、今までにないスピード感が魅力です。

こうした変化の背景には、今までの不動産の賃貸・売買のスタイルが時代に合わなくなっていること、スマホやタブレット、PCがあれば場所を問わずに働けるようになったこと、活用されていない空き家が増えていることなど、複合的な要因があります。

もちろん、すべての住まいが「住み放題」になるわけではありませんが、「住んでみたい街に、お試し感覚で住める」「毎月、引っ越しする」などが気軽にできるように。これから「家に定住する」そんな、イメージも変わっていくかもしれません。

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。