小田急電鉄は23日、ロマンスカー・GSE(70000形)が2019年の鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞したと発表した。同社車両のブルーリボン賞は2009年のロマンスカー・MSE(60000形)以来10年ぶり、通算8度目の受賞となる。
鉄道友の会は前年に営業運転を開始した新造・改造車両の中から、会員の投票にもとづき選考委員会が最優秀と認める車両をブルーリボン賞、優秀と認める車両をローレル賞に選定している。今年は10車種が選考対象車両にノミネートされ、有効投票数の約62.8%の会員から支持を得た小田急電鉄のロマンスカー・GSE(70000形)がブルーリボン賞に選ばれた。
ロマンスカー・GSE(70000形)は2018年3月17日に就役。「箱根につづく時間(とき)を優雅に走るロマンスカー」をコンセプトに開発され、愛称の「GSE」は「Graceful Super Express」の頭文字から命名された。可動式ホーム柵への対応を考慮し、20m級ボギー方式を採用した7両編成(4M3T)となり、車体はアルミ製ダブルスキン構造で、薔薇(ばら)の色を基調とした「ローズバーミリオン」を主体に鮮やかな塗装を施し、車体側面のロマンスカー伝統色「バーミリオンオレンジ」を配した。
展望席は全16席あり、センターピラーレスの大型3D曲面ガラスと座席配置の見直しにより、眺望性が向上。先頭車の一般席に荷棚を設けないことで開放感が増し、先頭車全体が展望スペースと感じさせるデザインになっているという。荷棚のある中間車も素材の工夫で閉塞感を軽減させ、あわせて高さ1mの連続窓と人工大理石・ガラス材の多用により、明るく開放感のある車内空間を創出している。
腰掛は幅を拡大し、座面を高くするなど、座り心地と立ち上がりやすさの両立・向上を図り、ユニバーサル仕様を追求した。腰掛の下に大型荷物を収納できるスペースを確保し、4号車を除く各号車の車端部にラゲージスペースを設置している。バリアフリー対策として車いすスペース・ゆったりスペースなどを設け、客室内およびデッキ部の防犯カメラ、高音質ステレオ放送装置、車内Wi-Fiといった付帯設備も充実させている。
走行装置にフルSiCモジュールVVVFインバータ制御装置や全密閉式主電動機などを採用して使用電力量と騒音の低減を図ったほか、車体・台車間にフルアクティブサスペンション(動揺防止制御装置)を搭載して左右振動を軽減し、乗り心地も向上させた。
小田急線は昨年3月に代々木上原~登戸間の複々線化が完成し、その後のダイヤ改正でロマンスカー・GSE(70000形)を導入。新宿~小田原間60分以内を達成した箱根方面の特急列車を中心に運用されている。鉄道友の会はブルーリボン賞の選定にあたり、「展望席やスタイリッシュな車体デザインなど小田急ロマンスカーとしての伝統を継承しつつ、最新の設備・技術を惜しみなく導入してユニバーサルデザインの積極推進や環境負荷の低減を図るなど、現代の鉄道車両のトレンドリーダーにふさわしい極めて高い完成度に仕上げられていること」を評価した。
なお、小田急電鉄は5月25・26日の2日間、海老名電車基地内特設会場などで「小田急ファミリー鉄道展 2019」を開催。1958(昭和33)年の第1回ブルーリボン賞を受賞したロマンスカー・SE(3000形)、62回目となった今年のブルーリボン賞を受賞したロマンスカー・GSE(70000形)を基地内に展示する予定となっている。