東京都内で働くサラリーマンにとって、大阪・京都への出張は楽しみのひとつ。空いた時間に美味しいものを食べたり、プチ観光したりできれば、仕事のプレッシャーも跳ねのけられるはず。また、出張をきっかけに改めて旅行に出かける人も多いのでは? そんな旅の楽しさをより感じられるホテルが、大阪・京都それぞれにオープン。メディア限定のバスツアーが実施されたので参加してみた。
このバスツアーは、宿泊体験から旅行体験までをリデザインする「TravelTech」を掲げ、インバウンド向けのホテルブランド『STAY』を展開している株式会社TRASTAが新たにオープンさせた2つのホテル、大阪市北区中崎町の「STAY Vintage NAKAZAKI」と京都市下京区新町の「住亭(ステイ) SHIJO KARASUMA」のメディア向け内覧会として行われたもの。大阪、京都の順にホテルにご案内いただいた。
ノスタルジーに浸りながら時を過ごせる「STAY Vintage NAKAZAKI」
新大阪で新幹線を降りると、電車を乗り継いで中崎町駅で下車。中崎町は第2次世界大戦の被害を免れ、当時の昭和期のレトロな雰囲気を残したノスタルジックなムードを感じさせる街。今や全国どこに出張に出かけてもチェーン店が多く、あまり街ごとの違いを感じないが、この街には年季の入った建物や長年営業していそうな飲食店などもあり、まるで『三丁目の夕日』の世界そのままだ。そんな気分で駅から3分ほど歩いた路地に「STAY Vintage NAKAZAKI」が建っていた。「EAST館」「WEST館」の2棟があり、共にシンプルで温かみのある外観が、周囲の景観を壊さずに調和しており良い感じ。
「STAY Vintage NAKAZAKI」は、新ブランド「STAY Vintage」の1号店。それぞれの土地の文化や歴史を理解・尊重した「文化のリデザイン」をコンセプトとしており、ここ中崎町では、日本昭和初期・大正時代のレトロ感、ビンテージ感が味わえるホテルデザインとなっているのだとか。
まずはEAST館を案内していただいた。ロビーにはネイビーをテーマカラーとした本が書棚に並んでおり、日本全体や大阪の歴史を知ることができる書籍、写真集などが揃えられていた。5階建てで、総客室数は30室(5階はテラス&ラウンジ、喫煙スペース)。全室がモダンで風情ある和室となっている。自宅でも、出張でビジネスホテルに泊まるときもベッドという人も多いはず。畳の上に布団を敷いて寝るという昔ながらの日本文化を体感できるのは、外国からの観光客ならずとも嬉しいのでは。
また、各階にはレトロを意識した共用スペースが設けられていた。昭和テイストあふれる看板や駄菓子屋で売られているようなおもちゃ、手塚治虫『火の鳥』などの漫画本、クラシカルなレコードとプレイヤー等々、初めて見てもなぜか「懐かしいなあ」と感じてしまうものが展示されている。筆者は2Fに展示されていたボードゲームコーナーにしばし心を奪われてしまった。
一方、隣接したWEST館は女性的な要素を取り入れ、テーマカラーをワインレッドとしており、ロビーの書棚には草間彌生の作品集等、アート寄りの書物が並んでいた。
5階建てで総客室数は17室。こちらは1階にドミトリー(男女共用・女性専用)が用意されているのが特徴。2階~4階は4人で宿泊できる「スタンダードルーム」となっている。2段ベッド2つで構成された部屋は、童心に戻れそう。あのはしごを昇る感じがいいんだよなあ。
5階には、対照的に「デラックスツイン」が用意されていた。1フロアに1室のみで、大きめのツインベッドに和室もついている。さらに坪庭を眺めながら入れる浴室からもあるなど、これ以上ない贅沢さ。こちらの共有スペースには、色彩や四季、美意識などをテーマとした本が置かれていた。
ゆったりと住むように泊まれる「住亭 SHIJO KARASUMA」
続いて、京都へとバスで移動して「住亭 SHIJO KARASUMA」へ。地下鉄烏丸線四条駅4番出口から徒歩8分ほどの場所にあり、静かな住宅街の中にある料亭を思わせる風格漂う外観を持つ建物だ。こちらのコンセプトは、「日本文化のリデザイン」。歴史ある京都にありながら、格式張ったものにならず、リラックスできるバランスを大切にしているという。お客さんを迎える玄関には、住亭オリジナルの藍染の暖簾が。「ホテルを訪れるお客さまが暖簾をくぐる度に、日本での滞在が色濃く残るように」との思いを込めて、TRASTAの社員たちが手作業で独自に染めたものなんだとか。そんなスタッフたちのおもてなしの心が伝わってきて、とてもアットホームな雰囲気で落ち着けそうなホテルだ。
全5階、総客室数は20室でスタンダードツイン、スーペリアツイン、和洋室の3タイプで構成されている。筆者は実際にスタンダードツインに宿泊させていただいたのだが、天井が高く部屋は相当広々としており、心からゆっくり寛ぐことができた。ベッドのサイズも申し分なし。体の大きな欧米のお客さんでもかなりゆったりできそうだ。寝心地も最高だったので、翌日は快適な朝を迎えることができた。
ホテルスタッフの接客もとても気持ちの良い対応だった。世界中から観光客が訪れる土地だけに、地元に詳しいスタッフや、外国人のスタッフもおり、柔軟に対応できるように努めていくそうだ。
内覧会の後には、株式会社TRASTAのCEO木地貴雄氏と、特別ゲストとしてサブスクリプション家具を展開する株式会社クラスの代表であり、人気恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン シーズン1』に出演していたことでも知られる久保裕丈氏が登壇して、"旅のスタイル×旅のビジネス"をテーマにしたトークショーも実施された。
「STAY Vintage NAKAZAKI」「住亭 SHIJO KARASUMA」共に、日本初となる全室サブスクリプション家具を導入している。ベッドなどの家具を所有せずに定額制で利用することにより、ホテルのコスト削減を実現し、よりよいサービスや料金に還元されているようだ。トークショーでは、木地氏、久保氏それぞれの旅のスタイルが紹介され、旅行先での食事、アクティビティなどをチェックする上で宿泊先を重視していることなど、リラックスしたムードで意見が交わされた。
また、株式会社TRASTAのCOO越島悠介氏より、2019年5月末にローンチが予定されている独自のTravelTechとして、「世界のホテルからチェックイン時間をなくす」スマホサービス「CUICIN(クイッキン)」の概要が公開された。
チェックインする度に名前、住所、電話番号などを書かされることなく、スマホひとつで簡単にチェックインすることができ、一度会員登録しておけばCUICIN導入ホテルに宿泊する際は、それ以降も簡単にチェックインできるというもの(2019年秋までに外販スタート予定)。
さらに、ホテルのアメニティが少なくなった際にIoTにより自動的にオーダーするシステムを導入することで、従業員の業務負担を減らす取り組みを行っていることも紹介された。こうした取り組みからも、異国の地を訪れた観光客や、遠くから訪れたお客さんをより良いサービスでおもてなししたい、というホテル側の思いを感じることができた。
旅行や出張の際には、宿泊先のホテルはとりあえず寝ることができれば良い、なんていう気持ちで決めてしまう場合も多い。だが、せっかく訪れた旅先ならば、宿泊も思い出のひとつにしたい。そんな気持ちにさせてくれた、2つのホテルだった。