昨年コンビ結成30年を迎えたお笑いコンビ・さまぁ~ず。大竹一樹と三村マサカズは互いに50代に突入し、もはやベテランの域に達しつつも、貪欲に笑いを求め舞台に立ち続ける。なぜ彼らは舞台にこだわるのか――二人が日常の出来事や家族のことなどについて、舞台の上で客を前にしてフリートークを繰り広げるバラエティー番組『さまぁ~ず×さまぁ~ず』(テレビ朝日系)収録後に直撃して話を聞いた。
――12年目に突入した『さまぁ~ず×さまぁ~ず』ですが、他にもいろいろな番組に出ているお二人にとって、他の番組とは違う部分はどこですか?
三村:これはもう全然違いますね。やっぱりお客さんの前で喋るということで、毎回ウケるかどうか心配してますし、何も話がないときもしょっちゅうあるんですよ(笑)。
大竹:今日もそうだったね(笑)。
三村:でも、なんだかんだでまずは30分間、自分たちの力で作らないと番組にならない。もちろん編集とかいろいろあるけど、そういう意味では他の番組とは違いますよね。自分たちで事を起こさなかったらゼロですから。
大竹:何もないですからね。
三村:自分らがやる気なかったら終わりですよ(笑)。
大竹:それに、客前で喋るだけ、っていう番組もあんまりないですよね。ラジオともまた違いますし。お客さんに楽しんで帰っていただくという状況がね。
三村:ちょっと50代っぽい意見を言うと、これ言うと割とお客さんが引くんだ、とか、「三村さんってそんな偉そうなの?」っていう空気が、直で伝わってくる(笑)。
大竹:舞台に出た瞬間、お客さんの数がわかりますから。160人なのか150人なのか(笑)。
三村:今日はどうだった?
大竹:150人。休日だったから地方から来て緊張している初めてのお客さんが多かった、と思う(笑)。そんな風に毎回雰囲気が違うのも面白いです。
――不安がありながらも、常に舞台に立っていたい気持ちのほうが勝るという。
三村:だから、逆にこの番組がなくなっちゃうとちょっとヤバいですよね。ボケちゃうというか(笑)、ふわっとしちゃうというか。生活の一部になってる。
大竹:これはいつも言ってますけど、時間帯とか関係なく、ずっと続けて欲しいと。朝でも何時でもいいから。だって、街で嫌なことがあってもこの番組で喋ることでストレス発散になりますから(笑)。若い頃は嫌なことがあったら「帰ります」ってバーンと言ってそのままだったけど、今は「この人はどうするんだろう?」とか「この後どうなっていくんだろう?」と、先を見られるようになったというか。後でネタになるから。
三村:プラマイゼロっていう。
大竹:嫌なことは嫌なんですけど(笑)、『さま×さま』があるから、と思って我慢できるようになりましたね。
――そう考えると『さま×さま』は二人にとって大きな存在ですね。
三村:大きいですよ。
大竹:三村さんの家の話とかも、仕事と関係ないから単純に聞くのが好きなんですよ。娘がどうしたとか、家で怒られたとか。仕事は一緒でも相方の生活までは見ることができないので。
三村:楽屋でもプライベートのことって聞きづらいけど、舞台だったら聞けるっていうのはありますよね。
――昨年、コンビ結成30周年を迎えましたが、二人の間で変化はありますか?
三村:いやぁ……特に振り返らなかったですしねぇ。
大竹:体力くらいですかね。収録の合間に少し寝るようになったけど(笑)、舞台に上がると10年前、20年前と何も変わってない感じがしますね。
三村:いや、20年前に比べたらもうちょっと喋れるようにはなってる(笑)。
大竹:まあね。その意味では少し進歩してると思いながらやってますけど。
三村:あとはもう、この関係や状況に慣れちゃった、というのはあるかもしれないですね。若い頃から楽屋も別々だったりするとまた違うんだろうけど。
大竹:僕ら2年に1回コントの舞台もやるんですけど、この番組は毎週ですし、打ち合わせもないですから。
――二人とも50代ということについて何か実感は?
三村:数字としては重いですけど、実感はないですね。
大竹:オレもそうだけど、そう思う自分と周りのギャップは多少あるかもしれない。
三村:あれって……50代の人ってよくやっちゃうのかな? 若い人と仕事の話がしたいとき、向こうはLINEで送ってきてるんだけど、こっちは細かいニュアンスを丁寧に伝えようとすると10行くらいになっちゃうんで、めんどくさいから電話しちゃえ……って電話したときの、その人の引き方(笑)。「LINEしたのに電話かけてくるの?」みたいな。あれはもうダメなのかな?
大竹:ダメでしょう。重いです(笑)。
三村:それは……実感してます(笑)。
――若い頃と比べて健康に気をつけるようにはなりましたか?
大竹:なってるつもりだけど、なってないかもしれないですね。
三村:明日早いのに「飲みたい」が勝っちゃうんだよね(笑)。
大竹:そこは変わってない。
三村:変わったといえば、チェイサーに水を置くようになった。周りも気をつけてくれるのか、何も言わなくてもそっと置くようになりましたね(笑)。
大竹:一杯飲んで、次の間に飲むものがない、「あ、水あんじゃん」と(笑)。つなぎの水。
――チェイサーに水を置かれるようになったら、50代のサインということですかね。
大竹:そうでしょうね。それか「飲んでるおまえが嫌い」「飲みすぎんじゃねえぞ」っていう無言の合図(笑)。あと、昔はロケで転んだりしても笑ってくれたけど、今は「大丈夫ですか!」ってお爺ちゃんが転んだかのような勢いでみんな駆け寄ってくる。
三村:一応「大丈夫」って言うんだけど、ホントはちょっと痛い(笑)。
大竹:「心配される」っていうのは年齢の一個の重みかもしれないですね。
三村:テレビでもベテランの方が転ぶと笑いじゃなくて心配しちゃうしね。
大竹:あと、5回くらい連続した咳(笑)。
三村:急に痩せたり急に太ったりしないようにしたいね。
大竹:「心配させない」がテーマですね、オレらの(笑)。
――そのあたりを踏まえ、これからの『さま×さま』はどうなっていくと思いますか。
三村:まぁ、老いてく話は当然、出てくると思います(笑)。今年で52歳になりますけど、そういう年代の人の考えてることしか伝えられないから。若くもなれないし。
大竹:ケガした病気したなんて話は今でもけっこうしてますしね。「体痛い」とか。でも、客前に立てるうちはずっと立ち続けたい。もちろん、コントもやり続けたいですけどね。
三村:落語家さんと一緒にすると失礼ですけど、まだまだ上達する気がするんですよね。「フリートーク芸」は。
大竹:(年齢)なりの、ものがあるよね。
三村:その意味では50歳よりも60歳のほうがもっと話が面白くなる気がする。
――では、そこからさらに飛んで、70歳、80歳の『さま×さま』も期待できそうですか?
大竹:それも面白いでしょうね。その時は確実に座ってるでしょうけど(笑)。
三村:どっちが先に座るかだよね(笑)。片方が座りだしたら「なんで座ってんの?」って。その頃は舞台もバリアフリーになって緩やかな坂になってると思う(笑)。