西日本鉄道の2019年度事業戦略説明会が20日、首都圏の報道関係者向けに都内で実施された。第15次中期経営計画の説明、未来を見据えたモビリティサービスの実現に関する取組みの紹介をはじめ、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の利用状況・予約状況や「天神大牟田線への有料座席制度の導入」について説明する場面もあった。
同社の第15次中期経営計画では、重点戦略のひとつに「グループ一体となった沿線の魅力向上と観光インバウンド需要の取り込み」を挙げている。具体策として、地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の運行に加え、「住みたくなる沿線づくり」に向けた「交通ネットワークの強化・再整備(連節バスの更なる導入、乗継施策の実施)」「天神大牟田線への有料座席制度の導入」などが紹介された。
事業戦略説明会では、同社代表取締役社長執行役員の倉富純男氏が第15次中期経営計画について説明。その後の質疑応答で「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の質問に答え、3月23日の運行開始から2カ月が経過した現在の利用状況について、「相席方式を採っていないので100%ではないものの、実質満席で動いています」と話した。来月以降の予約状況も、当初の見込みより上々に推移しているという。
西鉄福岡(天神)~大牟田間で運行されるランチの旅・ディナーの旅に続き、6月1日から大宰府行の「地域を味わうブランチの旅」も運行開始する。新元号の発表以来、太宰府市が「令和」ゆかりの地として注目を集め、大宰府駅や都府楼前駅の利用者が増えているとした上で、「ブランチの旅もまずまずの予約状況。『令和』というフォローの風が吹いているので、これと『THE RAIL KITCHEN CHIKUGO』をうまく組み合わせ、より良い商品・サービスを提供し、天神大牟田線の回遊にもつなげたい」と述べた。「極端に言うと、駅名を『令和』にしてもいいのではないか。それくらいの気持ちで知恵を出し合っているところです」との発言もあった。
倉富社長は「天神大牟田線への有料座席制度の導入」にも触れ、「私のイメージでは、夕方以降のラッシュが終わった後、久留米以南の方々が1杯飲んでも安心して座って帰れるような列車があるといいよね、ということで発想していました。そこからさらに知恵を出し、『朝にもこういった列車を入れられないか』など、いろいろな検討をいま進めています」とコメント。車両については「クロスシートのタイプもあるので、既存の車両がベースになると思います」と話した。
具体的な導入時期は明らかにしなかったが、「1~2年のうちに決定するのではないか」と倉富社長。天神大牟田線は2020年度に雑餉隈駅付近から下大利駅付近まで高架化を予定している。「そこで大幅なダイヤ改正が必要となります。おおむねあと2年先、おそらく春のダイヤ改正くらいではなかろうかと思っています」とのことだった。
■持続可能なバス事業へ、他社と協業も
今回の事業戦略説明会では、バス業界における運転士不足の問題に加え、技術革新やモビリティの進化などで業界全体の環境も変化する中、西鉄のバス事業を持続させるための将来ビジョンとその取組みについても紹介された。
自動車事業本部を担当する西日本鉄道取締役常務執行役員の清水信彦氏は、同社の描く将来ビジョンについて、「交通ネットワークを都市部の『幹線』と『支線』、都市周辺部の『地域交通』、過疎地域などの『補完的交通システム』という4つの階層に分け、それぞれに応じた交通モードや役割を分担することで、持続可能な公共交通ネットワークを構築するというものです」と説明。「新たなモビリティサービスの創出」「お互いの強みを活かせる企業・団体との協業」を基本戦略に挙げた。
また、他社と連携したおもな取組みとして、日立製作所と協業したバスダイヤ運行計画支援システム、トヨタ自動車と協業したマルチモーダルモビリティサービス「my route」、三菱商事と協業したAI活用型オンデマンドサービス「のるーと」、SBドライブと協業したバス車内安全監視AIシステムの4つが紹介された。
幹線交通(鉄道・路線バス)を補完する役割を持ち、路線バスとタクシーの中間的なサービスという「のるーと」は、4月25日から福岡市東区のアイランドシティ地区で運行開始。2019年度下期に西鉄の鉄道沿線でも運行開始する予定となっている。
その他、福岡空港ターミナル間連絡バスの自動運転化にも取り組み、昨年4月に行われた小型バスの実証実験に続き、2023年頃に予定される全区間専用道化・短絡化に向け、段階的に実証実験を行いながら自動運転バスの導入に挑戦するという。