「デスクワーク系の仕事は全部なくなるが営業という仕事はなくならない」「生活レベルを上げて幸せになった人を見たことがない」「スキルアップは"コスパ"で決めるべき」――といった刺激的な文言で話題の書籍『自分は自分、バカはバカ。』(税込1,404円)。
著者のひろゆき氏はご存知、2ちゃんねるやニコニコ動画などを世に送り出したネット業界の著名人だ。現在はフランスに在住し、英語圏最大の掲示板「4chan」の管理人を務めるなどグローバルに活躍している。
ひろゆき氏に若手社会人に参考となる「日本で生き抜くため」の生存戦略やヒントを聞いたので、2回に分けて紹介したい。
営業は生き残る
――ひろゆきさんは著書の中で「AIやRPAなどのテクノロジーにより将来的にデスクワーク系の仕事はなくなる」と書かれています。
そうですね。総務や経理なんかはかなり厳しいでしょうね。
――その一方、「人を相手にモノを売る仕事」すなわち「営業」については淘汰されないとのことですよね。
営業というと飛び込み営業や勧誘電話を想像しがちですが、僕が考える営業は人間相手にモノを売る行為すべてです。ブログで商品を紹介してアフィリエイトを貼るのも営業です。もちろん、生き残るのは営業だけではないですよ。たとえば動物園の飼育係なんかもAIには難しいですから、淘汰されないでしょう。
――ちなみに私はライターですが、どうご覧になりますか。
きついと思いますよ。AIによる記事の自動生成の精度が上がってきているし、オンラインではクラウドワークなども普及してきていて、もう止められません。今後、ライターで家を建てる、みたいなのは厳しいと思いますよ。
YouTuberとなるには
――なるほど……。他に淘汰されない職業としてはクリエイティブな職業でしょうか。たとえば最近生まれたクリエイティブな職業としてはYouTuberなどもあります。
YouTuberに関しては規模は大きくなり続けるでしょうね。コンテンツって、昔つくられた面白い作品を楽しみ続けるタイプもいれば、新しく今生まれるものを楽しむタイプもいて、YouTubeファンは後者です。そういう層はどの時代にも一定数必ずいますから、YouTubeを楽しむ人は増えていくでしょう。何より無料ですからね(笑)。
――たしかにYouTuberの勢いは衰えませんね。子どものなりたい職業でも変わらず上位ですし、ついにYouTubeコースを新設する専門学校も出てきました。
うーん、でも専門学校で教えられるかというとそれはちょっと違うと思いますね。映像編集技術は学べるでしょうけど、それよりもYouTubeで伸びるかは本人のセンスでしょう。はじめしゃちょーのように毎日動画の企画を思いつくセンスを専門学校で教えられるかというと……。
たとえばライターの場合は専門学校がたくさんあって、そこではライティング技術も教えていますが、それよりも業界出身の先生から得られるコネクションが大事ですよね。だけどYouTuberに関しては学校にもコネクションがありません。仮にコネクションがあっても、じゃあUUUMに知り合いがいて所属できたとして、それで再生回数が伸びるかというと、そんなことはないわけですよね。
野球選手を専門学校で育成できないのと似ていると思いますよ。
――業界としては伸びるけれど、センスが問われる職業故に目指すのは難しいということですね。
まぁでも、学校で古典や漢文みたいに無駄なものを教えるくらいなら動画の撮影・編集技術を教えたほうがいいんじゃないですか。今生きている人って、ほぼ写真を撮りますよね。そういう日常的なスキルについて教えることは自然なことだと思いますよ。
お勧めのプログラミング言語
――学校教育でいうと、プログラミング教育も始まります。
生徒が興味を持つなら手を出して損はないと思うのですが、興味がないのに学校でプログラムを学ぶことに対してはどうかなあと思いますけどね。
――もしこれから学ぶとしたらお勧めの言語などはありますか?
うーん、どうですかね。プログラムはあくまで何かアプリケーションをつくるための手段にすぎませんからね。つくれるなら何でもいいんです。それに、何か一つの言語をマスターすると他の言語にも移行しやすいですからね。何の言語を学ぶか考えるくらいならさっさと書いたほうがいいですよ。
あと、はやりの言語って廃れるのも早いんですよ。何年かに一度、はやりの言語が出てきて、結局使われなくなるっていうのをずっと見てきましたからね。新しい言語は処理速度が速くなったりするんですが、ミドルウェアとかなかったり、バグも大変だったりで、待っていれば枯れた言語の方も速くなって、結局PHPで良かったじゃんってなりますから(笑)。
生き抜くためのスキルの見分け方
――今のお話を社会で生き抜くためのスキルという点に移して考えると、スキルも汎用性が大事ということになるでしょうか。著書でも「スキルはコスパで選ぶべき」と書かれていましたね。
スキルについては「それがやりたいことなのか」「給料につながるのか」の2軸で考えるのがお勧めです。好きなことをやる分にはスキルのコスパとか考えなくていいんですよ。たとえば手当が出る資格を取れば確実に給料が上がるわけですからね。明確なメリットがあります。だけど、たとえば僕が料理がうまくなったとしても業務上なんの意味もないわけですからね。
今後も残る仕事や、必要となるスキルの見分け方について具体的に説明してくれたひろゆき氏。次回は、日本の社会変化と会社で生存するための心構えについて紹介したい。
取材協力:ひろゆき
本名・西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカのアーカンソー州に留学。1999年にインターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。東京プラス株式会社代表取締役、有限会社未来検索ブラジル取締役など、多くの企業に携わり、企画立案やサービス運営、プログラマーとしても活躍する。2005年に株式会社ニワンゴ取締役管理人に就任。2006年、「ニコニコ動画」を開始し、大反響を呼ぶ。2009年「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人となった。