東京2020大会開催まで残り500日を切った。およそ半世紀ぶりの「TOKYO」での五輪の足音が聞こえ始めている中、協賛企業もオリンピック・パラリンピック競技大会の魅力を伝えるべく、体験型イベントやキャンペーンを全国各地で実施している。

久光製薬もまた、そんな盛り上がりを支える協賛企業の1社。今回は、東京2020大会のオフィシャルパートナーとして活動を行ってきた同社のオリンピック・パラリンピック推進室室長に、協賛を始めてから現在に至る1年間の取り組み、そして今後の展望を伺った。

  • 久光製薬の東京2020オリンピック・パラリンピック推進室室長

    久光製薬の東京2020オリンピック・パラリンピック推進室室長

――東京2020大会のオフィシャルパートナーとなったきっかけとは?

2013年、第125次IOC総会で、2020年のオリンピック・パラリンピック開催地として東京が選出されました。日本、そして東京でオリンピックを行う機会はそうそう巡ってくるものではありません。当社は代表的な商品である「サロンパス」を約40カ国に輸出しており、世界のみなさまにご利用いただいています。東京2020大会は、我々の取り組みと商品を世界に向けて発信していく、またとないチャンスであると考えました。

これまで五輪の協賛企業の中に、医薬品カテゴリで協賛した企業は存在してませんでした。その理由は、薬であるがゆえのドーピング問題をいかにクリアするかという「壁」があったからです。東京が開催地に決まった瞬間から協賛に向けた活動を行ってきまして、はれて2018年2月6日にオフィシャルパートナーとなることができました。

――東京2020大会に向けた久光製薬の取り組みと反応について教えてください。

オフィシャルパートナーとなった2月6日に、日経新聞に「貼るを、未来へ。」というメッセージとともに、協賛コンセプトの内容を掲載しました。そして東京2020大会を幅広く認知していただくために、イベントの協賛をはじめとした地道な活動を続けてきました。「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」などへの参加もその一環です。

現在、当社の社員も東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に出向しております。医薬品というカテゴリ―でオリンピックにかかわれるのは日本では当社だけということもあり、取引先の皆さまにも期待感をもって迎えていただいています。

社員のモチベーションも高まっています。オリンピック・パラリンピックの協賛という一大イベントに主体的にかかわる機会は、自分たちが仕事をしている中でもおそらく一生に一度しかないでしょう。ボランティアなどの参加募集にも積極的に応募してくれる社員が多く、我々にとっても東京2020は元気になれる要素です。大会本番でも、当社の社員がいろいろな場所で活躍してくれるのではないかなと思います。

当社では、なによりも一般のお客様にメッセージが伝わることに重点を置いて活動しています。応援のお手紙やグッズが欲しいという問い合わせをいただく機会も増えました。久光製薬がオリンピック・パラリンピックに協力しているということ、そして東京2020大会の認知が進むのであれば、当社にとってこれほどうれしいことはありません。

――東京2020大会を通じてどのようなことを訴えていきたいですか?

日本には、手をかざして撫でてあげたり、さすってあげたりすることで痛みを和らげる“手当て”という、温かい文化があります。そのような「貼って“手当て”をすることで癒しや安心感を与えることができたら」という考えで作っているのが、我々の貼り薬です。

実は「サロンパス」のような鎮痛消炎貼付剤、いわゆる”湿布”は海外のどこでも手に入るものではありません。東京2020大会では、世界中から様々な方が日本にいらっしゃるでしょう。この機会に、貼って“手当て”をする文化とそのための薬を体験していただきたい。そして我々の活動を通じて、日本の良い文化を世界に広げていきたい、発信していきたいと思います。

――「貼るを、未来へ。」の“未来”にはどのような思いが込められているのでしょうか。

いろんな解釈をしていただいて良いと私は思っています。貼り薬の新たな価値を生み出すという意味も、貼り薬そのものが未来に向けて新たに進化していくという意味もあるでしょう。また“手当てする”という行為を通じて未来の人々の健康に寄与していきたいという願いや、久光製薬がそのような未来に向けて活動していきたいという思いもあります。

あいまいなワードかもしれませんが、さまざまな立場の社員一人ひとりが、その意味を自ら考え、未来に向けた可能性を模索していける言葉だと捉えています。当社の基本方針は「お客様第一主義」です。「貼るを、未来へ。」の“未来”にはお客様がいるということを忘れないようにしながら、このメッセージを伝えていきたいですね。

  • 「『貼るを、未来へ。』の“未来”にはお客様がいることを忘れてはいけない」と語る

    「『貼るを、未来へ。』の“未来”にはお客様がいることを忘れてはいけない」と語る

――今後、久光製薬で予定されている取り組みがあればお聞かせください。

2018年10月に佐賀県鳥栖市の西公園に建設中のミュージアムの仮囲部分に設置した「久光製薬 仮囲いアートプロジェクト」に続く第2弾として、2019年2月に茨城県つくば市の筑波研究所の一角に「久光製薬アートプロジェクト」を展示しました。

また現在、東京2020大会の関連グッズなどが抽選で当たる「久光製薬 HELLO! TOKYO 2020『貼るを、未来へ。』キャンペーン! 第2弾」も6月30日まで開催しています。第1弾同様、どなたでも応募できる形になっております。

さらに、地場の幼稚園や小学校の子どもたちが描いたアートを展示するこのプロジェクトをより一層広げようと計画しております。当社の支店がある地域を中心に全国各地に展開し、東京だけでなく、日本全体で東京2020大会を応援していく機運を作っていきたいと思っています。

――東京2020大会以降はどのような目標を掲げているのでしょうか?

東京2020大会は我々の思いをお客様に届ける大きな機会ではありますが、これをスタートとして「貼る」という治療方法の可能性や「貼る文化」を世界中に伝え、皆さまのQOL向上を目指したいと考えています。「貼るを、未来へ。」というメッセージを通じて、当社の理念をみなさまに知っていただくきっかけになってほしいですね。

そして東京2020大会終了後には、我々がこの理念を形にできるようにがんばっていかなければならないでしょう。全社員が同じ方向を向きながら、“貼って手当てをする”ことの良さを世界の人々に伝えていくための活動を、より進化させていきたいと思います。

  • 全社をあげて東京2020大会を支援している久光製薬の取り組みに今後も注目したい

    全社をあげて東京2020大会を支援している久光製薬の取り組みに今後も注目したい