3,000万円を超えるランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」で、オフロードを走ってみたらどうなるのか。通常では、ほぼ100%使用しないと思われる状況だが、ウルス本来の性能は発揮してみたい。こうした疑問と希望にしっかりと答えてくれるのが、このメーカーの良いところだ。栃木県にある自動車走行試験施設「GKNドライブライン ジャパン プルービンググラウンド」で開催されたウルスのオフロード試乗会に参加し、その実力を探ってみた。

ランボルギーニ「ウルス」のオフロード試乗会に参加!(撮影:原アキラ)

2018年に日本デビューしたウルス。スペインの闘牛に非常に近い外観を持つ大型牛「ウルス」から採られたその車名は、闘牛の世界に由来するという同社の伝統を引き継ぐ。ボディーサイズは全長5,112mm、全幅2,016mm、全高1,638mm、ホイールベース3,003mm、最低地上高158mm~248mmという堂々たる体躯を誇り、乾燥重量は2,200キロに達する。

フロントに搭載する4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力650ps(478kW)/6,000rpm、最大トルク850Nm/2,250~4,500rpmを発生。8速ATを介して4輪を駆動し、停止状態から時速100キロまではわずか3.6秒で加速する。最高速度は時速305キロ、時速100キロからの制動距離は33.7メートルという高性能車だ。

今回の試乗メニューは、オンロードで加減速やハンドリングをテストした後、オフロードでうねり路、登降路、水路、砂利の一般道走行を行うというもの。スタッフによるインストラクションを終えると、直ちにプログラム開始となった。

まずはオンロード、猛然たる加速と水際立った制動力を堪能

まずは全長1,800メートルの舗装された外周路を使用したオンロードだ。急加速・急減速のテストでは、200メートルほどの直線で時速130キロまで加速し、フルブレーキをかける。重さ2トンを超えるウルスのボディが、わずかなノーズダイブを伴って平然とストップする様は圧巻。前440mm、後370mmという、世界最大級の直径を持つカーボンブレーキがいい仕事をしている。

オンロードでの急加速とブレーキングは、さすがランボルギーニといったところ(撮影:原アキラ)

次は裏手の直線に移動し、ストップ状態からアクセルペダルを床まで踏みつけて全開加速を試した。650psのV8が炸裂し、目の前のデジタルメーターは、スピードを表示する数字が読みきれないほどの速さで増え続けていく。たった500メートルほどの間で時速215キロを超えるという、まさに圧倒的な加速力を確認してブレーキを踏んだ。

続いて走ったのは、18~85R(「R」とは曲率のこと)の大小のコーナーが連続する全長1,036メートルのハンドリング路。講師を務めるレーシングドライバーの高木虎之介氏がスーパースポーツカー「アヴェンタドール SVJ」を駆り、それをウルスで追っかけるという趣向だ。

ハンドリング路では高木虎之介氏が駆る「アヴェンタドール SVJ」を「ウルス」で追いかけた(撮影:原アキラ)

高木氏はこちらの腕を見極めながら車速を調整してくれるものの、かなりのハイペースでグイグイと進んでいく。ここでは、高い着座位置による視界のよさ、低速域からの圧倒的なトルク、カーボンブレーキによる車速コントロールのしやすさ、後輪駆動(4WS)を備えた4WDシステム、ロールをほとんど発生させないアクティブエアサスなどの相乗効果により、スポーツカーに負けない速さを十分に体験できた。

急坂も水路もいとわない超高級車「ウルス」

次は「Tamburo」(タンブーロ、クルマの設定を変更するための装置)で設定を「TERRA」(イタリア語で「大地」の意)に合わせ、オフロードコースに侵入する。高さ15センチメートルのでこぼこが連続するうねり路をウルスは、きしみ音など一切出さずにさらりと通過し、ボディの堅固さをきっちりと示してくれた。

「タンブーロ」で砂利道などに適した走行モード「TERRA」を選び、オフロードへ(撮影:原アキラ)
うねり路をさらりと通過する「ウルス」(画像提供:ランボルギーニ)

次は、滑りやすい土の急坂の上り下りだ。50%勾配(約30度)という壁のような斜面の途中で、一旦停止した後に再スタートするのだが、その際、タイヤは空転することなく、ジワリと車体を押し上げる。また、下りでは「ヒルディセントコントロール」(急坂を下る際、速度を自動で抑制してくれる機能)が効くので、ブレーキを踏むことなく、一定速度を保って降下できた。大きなボンネットのせいで直前の路面が見えなくても、コンソールのボタン1つでフロントカメラが作動する。その画面を見れば、自分の行きたい方向が確認できる。

壁のような斜面で一旦停止後に再スタートしても、タイヤが空転することはなかった(画像提供:ランボルギーニ)

最後は深さ30~40センチメートル、長さ30メートルの水路へ突入する。3,000万円のピカピカの新車でジャブジャブやるのは少し気が引けたが、めったに体験することのできないシチュエーションだ。波を蹴立てて、ウルスはあっという間に走破してしまった。

少し気が引けたが、「ウルス」で水路に突入した(画像提供:ランボルギーニ)

手の込んだ試乗会を開催するランボルギーニの考えとは

その後は施設外の一般道へ移動。イタリア人スタッフたちは、どうしたら面白い試乗ができるのかを常に考えていて、そのルートは近くを流れる思川の堤防道路や、田畑の中を抜けるあぜ道などが用意されていた。普段なら農作業の軽トラックなどが利用するような道路を、土煙を上げながら大型SUVのウルスが編隊を組んで駆け抜けていくのだからたまらない。運転する我々もそうだが、それを見た地元の人たちもびっくりしたはずだ。

一般道でも走りは全く安定していて、不自然な車体の動きは一切感じられなかった。「ここを曲がるの?」とちょっと心配になるような狭い右左折時でも、後輪操舵の4WSが効果を発揮して、一発で曲がり切ってしまうほど小回りが利くのには感心した。

一般道を疾走する「ウルス」。狭い道の右左折時には意外なほど小回りが利いた(画像提供:ランボルギーニ)

走り終えたウルスは当然、ホコリで真っ白け。ボンネットを開けてみると、エンジンルームまでもがそんな状態だった。それを全く気にせず、走りを楽しませてくれたランボルギーニのスタッフには大感謝だ。

オフロード試乗会を終えた「ウルス」のエンジンルーム(撮影:原アキラ)

同社はユーザー向けにこうしたイベントを随時開催している。例えオーナーになったとしても、普段は絶対に走らない今回のような場所を体験すれば、クルマに対する信頼度も一気に高まる。そして、メニューをこなした後は、修了証まで手渡されるのだ。

修了証まで用意してあるのには感心した(撮影:原アキラ)

ウルスの価格はスタンダードで2,779万9,200円。荒れ地を走るための走行モードである「TERRA」や「SABBIA」(イタリア語で「砂」の意)がオプション装備となっているほか、ボディカラーをはじめとするオプション品は数限りない。購入する場合、好みを100%反映すると、車両価格は3,000万円を大きくオーバーするだろう。それでも、ウルスは世界中で人気車種になっている。ランボルギーニは生産拠点のサンタアガタ工場(イタリア)を2倍の16万平方メートルに拡大し、新たに従業員を500人規模で雇い入れたそうだ。

(原アキラ)