高見泰地叡王に永瀬拓矢七段が挑戦する第4期叡王戦七番勝負第4局が5月11日、広島県廿日市市「みやじまの宿 岩惣」で行われ、永瀬七段が勝ってシリーズ成績を4-0とし、初タイトル「叡王」を獲得しました。
他棋戦でも好調を維持 高まる複数冠への期待
永瀬新叡王は1992年生まれの26歳。2009年10月に17歳で四段プロデビュー。2012年度には若手棋戦の第2期加古川青流戦と第43期新人王戦でダブル優勝を果たしています。
タイトル戦においては、2016年度の第87期棋聖戦五番勝負、2017年度の第43期棋王戦五番勝負に挑戦者として名乗りを挙げましたが、前者は羽生善治棋聖(当時)、後者は渡辺明棋王にいずれもフルセットで敗れました。この第4期叡王戦七番勝負が三度目の正直、念願のタイトル初戴冠となりました。
将棋に対する努力を惜しまず、ストイックに自身の棋力向上を求めることで知られる永瀬七段は、プロ4年目にして若手の登竜門的棋戦に優勝し、周囲に将来を嘱望されながらも、自身のスタイルに満足せず、さらなる勝利を求めて戦術的モデルチェンジを重ねた棋士でもあります。
デビュー当初は昔ながらの「受け身の振り飛車」を好み、優勢になれば相手の攻めの芽をすべて丁寧に摘んでゆくような、いわゆる「受け将棋」でしたが、ダブル優勝の2012年度頃からは現在では振り飛車の主流となっている「攻撃的振り飛車」を取り入れ、2013年ごろを境に居飛車党への転身を試みます。そして、叡王戦七番勝負の4局がそうであったように、今や完全に「居飛車」を主戦場とするようになりました。
たゆまぬ努力でひとつの勲章を手にした永瀬新叡王は、現在進行中の第32期竜王戦ランキング1組では決勝に進出、第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組では唯一負け無しの3-0、またシード権を持つ第67期王座戦の挑戦者決定戦も始まり、他棋戦でも挑戦権獲得、複数冠への期待が高まるところです。棋界地図の若返りが徐々に進む中、20代でタイトルホルダーとなった永瀬新叡王のこれからの活躍に注目です。