タッチダウンに向けた準備を開始
はやぶさ2の今後の運用方針については、津田雄一プロジェクトマネージャが説明した。現在、リュウグウは太陽に接近しており、地表の温度が高くなることから、タッチダウン可能な時期は7月初めまでと決まっている。実施するかどうかは今後検討していくが、時間的な余裕はあまりない。実施する前提で、運用を進めていくという。
運用名は「ピンポイントタッチダウン」(PPTD)。第1回目のタッチダウン(TD1-L08E1)もピンポイントタッチダウンだったのだが、この運用名は打ち上げ前から決まっていたものとのことで、技術的にはTD1-L08E1と同等のタッチダウンとなる模様だ。
TD1と同様に、PPTDでも低高度からの観測運用を行い、まず地表を詳しく調査する。1回目の降下運用(PPTD-TM1)は5月14日~16日に実施し、タッチダウンの目印となるターゲットマーカーを投下する予定だ。
着陸候補地点は、従来のS01エリアに加えて、今回、新たに「C01」「L14」という2つのエリアが発表された。3エリアの中から、比較的地形が平坦と考えられている地点が抽出されており、S01は5カ所、C01とL14は3カ所ずつの合計11カ所。直径はいずれも6~12mとなり、1回目に着陸したL08-E1と同等以上の広さはある。
C01は人工クレーターが作られたエリア。その中の右下の候補地点は、まさにクレーター内部の窪地だ。そしてL14は、S01に比べると、衝突地点からやや離れるものの、候補地点の大きさは広め。ただ、まだ観測の解像度は粗いため、今後の低高度観測により、着陸に支障があるサイズの岩が見つかる可能性はある。
PPTD-TM1では、まずS01エリアの観測を行い、中央より少し北東寄りの場所にターゲットマーカーを投下する。3つのエリアのうち、最初にS01に向かうのは、衝突点に近く、イジェクタを採取できる可能性が高いこと、そして3エリアの中では最も情報量が多くて降下しやすいという理由があるからだ。
PPTD-TM1のあと、2回目を5月末、3回目を6月前半と、最大3回の降下運用を行う予定だが、どこに降下するのか、追加のターゲットマーカーを投下するかどうかは、1回目の結果を見てから判断する。
特に注目したいのは、今回の降下でターゲットマーカーがどこに着地するかということだ。TD1では、狙った場所から15m離れた場所に落ちたものの、そのすぐ近くにL08-E1があったおかげで、タッチダウンを成功させることができた。今回の候補地点もすべて小さいので、ターゲットマーカーへの距離が大きなファクターとなるだろう。
ピンポイントタッチダウンは、ターゲットマーカーからの距離が精度に大きく影響する。クレーター内へのタッチダウンを狙う場合は、2回目以降の降下でターゲットマーカーを追加投下する可能性もあるが、2つのターゲットマーカーが視野に入ると、はやぶさ2が混乱する恐れがある。
技術的には3個までなら認識できるはずだが、これ以上、新たな技術チャレンジは避けたい。津田プロマネによると、ターゲットマーカー同士は「30m以上は離れていて欲しい」とのこと。衝突点が予想以上にS01に近かったため、追加で投下するかどうかは、なかなか悩ましい判断となりそうだ。