Dell Technologiesは、米国ラスベガスで4月29日~5月2日、プライべートイベント「Dell Technologies World 2019」を開催。この中で、多くのストレージのソリューションが発表された。DellとEMCの統合から1年半が経過したが、今後、ストレージのポートフォリオはどうなっていくのか? Dell EMC SVP & CTO Storage Division Sudhir Srinivasan氏に話を聞いた。

  • Dell EMC SVP & CTO Storage Division Sudhir Srinivasan氏

成長の大きなストレージは何か?

Srinivasan氏:非構造のIsilonは非常に伸びている。ミッドレンジの部分では、UnityやSCが伸びており、Unityだけでも、他社の売上よりも大きい。SCも2桁成長している。Unityは、コストパフォーマンスを考えて投入している製品で、顧客自身でインストールやアップグレードができ、シンプルで使いやすいことが伸びている理由だ。届いてから、15分で使い始めることができる。

NVMe対応の製品は数多く登場しているが、NVMe over Fabricsへの対応は?

Srinivasan氏:NVMe over Fabricへの対応は、今年の後半になる予定だ。最初はPowerMaxを使ったものになる。接続はFiber Channelで、レイテンシを低くし、よりI/Oが必要なアプリ向けが主な用途となる。例えば、マシンラーニングやデータアナリティクスだ。データ量は少ないが、I/Oのスピードが求められるようなケースだ。これはオンプレミス用だ。

PowerProtectという新シリーズを発表したが、Data Domainとの違いは何か?

Srinivasan氏:PowerProtectは、フルに統合されたバックアップアプライアンスだ。バックアップを管理するソフトも統合した。PowerProtecを導入すれば、他のソフトは必要ない。オールインワンのバックアップソリューションだ。中小の企業は、利便性の高いものを望むので、こういったパッケージ化されたものを好む傾向にある。ただ、大企業はスケールすることも必要なので、今後もData Domainを選択するケースがあるだろう。そのため、今後も違うセグメントに向け、両方を提供していく。

IoTの時代になり、データが爆発的に増えるが、ストレージに新たなテクノロジーが必要になるのか?

Srinivasan氏:基調講演でCTOのJohn Roeseがエッジ(Edge)の話をしていたが、エッジには2つのタイプがある。1つはFar Edgeと呼ばれるセンサーのようなものを管理するものと、Near Edgeと呼ばれるブランチオフィスなどを想定しているものだ。また、街中の外灯を管理するようなボックスもNear Edgeと呼んでいる。

Near Edgeには、機器を管理するためのIT機器が置かれる。そのため、Near Edgeのストレージには、Software-Definedのものや、HCIが合っていると思っている。

一方、Far Edgeには、これと異なる要求がある。デバイスは安価で、ストレージはそんなにたくさん必要ない。ネットワークもそれほど信頼できるものではない。この分野は、非常に分散化したネットワークとなり、それらを管理できるSoftware-Definedのストレージが必要になる。新たなタイプのストレージが必要になるとは思わないが、一律でデータを保存する必要はなく、ストレージはスマートになる必要がある。例えば、監視カメラのようなものは、通常は何もなく、何かが起きると変化がある。その前後のデータは捨ててかまわないだろう。そのため、データのどこが必要な部分かを判断するテクノロジーを使うことで、保存しないデータを判断できる。ただ、その判断はストレージではなく、アプリ側の問題だ。

5Gの時代になって、変化することはあるのか?

Srinivasan氏:現在はまだ、データ量は抑えられているが、5Gの世界になれば、データ量はものすごいものになる。とくに、Far EdgeとNear Edgeの間のデータが増える。Far EdgeとNear Edgeの間ネットワークの信頼性が高まれば、データはかなりの部分がNear Edgで処理できる。データは非常に分散した状態になる。

DellとEMCが統合されて、ストレージのブランドも増えたが、今後は整理される方向にいくのか?

Srinivasan氏:昨年、ストレージのブランドを整理するというアナウンスをしたが、販売セグメントごとにストレージのブランドを1つにするというのがわれわれのゴールだ。セグメントというのは、ハイエンド、ミッドレンジ、エントリー、非構造という分類になる。ただ、急にはできないので、既存のブランドは今後も長く、市場に残っていくだろう。ハイエンドにはPowerMaxがあり、エントリーにはPowerVaultがある。大きな変化が起こるのはミッドレンジで、ミッドレンジは複数あるので、1本化しないといけないと思っている。ただ、それを実現するには、3~5年かかるだろう。

ストレージにおいて、他社との差別化ポイントはどういった部分か?

Srinivasan氏:一番大きな差別化ポイントは、すべての領域でポートフォリオを持っている点だ。すべてのワークロードにおいて、同じアーキテクチャが通用するとは思っていない。メインフレームからコンテナまで、すべてをまかなえるストレージを持っているのはわれわれだけだ。たとえば、用途によってはスピードよりも、信頼性が求められるケースがあり、そういった用途には、信頼性が高いものを用意している。一方、価格が優先されるような市場には、別のアーキテクチャを使って提供している。非構造ではスケールが重要になる。今回、Isilonでは、最大252ノード、58PBまで拡張できることをアナウンスした。他社では、これは実現できない。市場ごとに違った製品を出せるというが他社との大きな違いだ。小さなベンダーがNVMeに特化したストレージを早期に出すこともあるが、われわれは、顧客に安心して使ってもらえる安定したものなってからリリースする。そのため、新たなテクノロジーを搭載する場合は、まず、1つのプロダクトに搭載し、コモディティ化したら、他のプロダクトにも展開していく。出すタイミングだけで、判断してほしくない。

顧客ごとの異なる要求や他社の動向もある中で、搭載する新機能の優先順位はどのように決定しているのか?

簡単だ。顧客ニーズだ。現在、各国から非常に多くのリクエストが来ている。そんな中、どの機能を搭載すればビジネスになるのか、売上がどれくらいになるのか、リージョンからの意向を加味して考えている。競合企業がやっているからという理由で、新機能を搭載するようなことはしていない。顧客が必要な時に提供する。すべてのストレージ製品を見るプロダクトマネージメントチームを発足させている。そのチームが、この機能はこのプロダクトに先に入れようとか、この国向けに入れようということを決めている。