ソフトバンクは5月8日、2019年3月期の連結決算を発表しました。それによれば、売上高は過去最高の3兆7,463億円(前年同期比5%増)、営業利益も過去最高益となる7,194億円(同13%増)でした。同日にソフトバンクが開催した記者説明会では、ヤフー(Yahoo! JAPAN)を連結子会社化すると発表があったほか、ドコモや楽天など競合他社との「値下げ合戦」についても言及がありました。
料金は値下げするの?
折しも先月(4月)、NTTドコモは最大4割の値下げを実現するという新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表しました。これで大手3社による「分離プラン」が出そろいました。ソフトバンクは3キャリアでもっとも早く分離プランを導入していますが、他社のプランをみて、さらなる料金値下げに踏み切るのでしょうか?
決算説明会に登壇したソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏は冒頭、各社の料金プランを表にまとめたものを紹介しました。そのうえで宮内氏は、「ソフトバンクのウルトラギガモンスター+は、(ひと月に使える)データ通信容量が50GBで、SNS放題もついている。ギガバイトあたりの単価も3社のなかで最安の70円以下。これからも十分戦っていける料金設定になっています」と自信を見せました。基本的に今後も、大幅な料金値下げはしない考えです。
データ通信容量をさほど使わないライトユーザー向けに、ワイモバイルやLINEモバイルも展開しているソフトバンク。2018年度におけるスマートフォンの累計契約数の純増数は、トータルで195万件(前年同期比10%増)となっており、3ブランドの順調な成長ぶりがうかがえます。
記者団から、市場や競合他社の動きによっては値下げもあり得るのか、と問われたときも、宮内氏は「我々は3年前から、苦労して格安スマホをやってきたし、大容量データプランも思い切った料金で提供してきました。マーケットの状況によっては対応しますが、いまの状況では微修正で済むと思っています。本当に安いんです」と説明。
「製品もサービスも、全部が全部、ユニクロのように安くなくちゃダメということではないんです。要するにコストバリュー」だと説き、値段に見合ったサービスがあるソフトバンクを最上位にして、ワイモバイルやLINEモバイルといった3ブランドをうまく使い分けているとアピールしました。
ソフトバンクでは、ケータイからスマホに機種変更するユーザーが対象の新プラン「スマホデビュープラン」も6月12日から提供する予定(詳細は別記事を参照)。今後、日本の国民全員がスマホを持つ「1億総スマホ時代」がくるとして、その準備を着々と進めていくと語りました。
ヤフー子会社化の狙いは?
スマホデビュープランと同時に発表されたのが、ヤフーの子会社化でした。これまでソフトバンクとヤフーは、同じソフトバンクグループの兄弟会社として同列にあったわけですが、これからソフトバンクが持ち株比率を44.64%に上げて(2019年5月8日現在は12.08%)、ソフトバンクの連結子会社とします。これは通信事業、決済事業など、さまざまなサービスで競合となる楽天への対抗策とも考えられます。
ヤフー代表取締役社長の川邊健太郎氏は、「ソフトバンクとヤフーが一体となって事業を進め、我々しかつくれない巨大な便利、巨大なシナジーを生み出します。いま、闘志を燃やしています」と力説。両社では、5G×ビッグデータ×AIで生み出す新領域の事業に向け、シナジーを最大化していきたい考えです。
念頭のひとつに、PayPayもあるのでしょう。PayPayは、ソフトバンクとヤフーによる共同出資会社。宮内氏は、PayPayの累計登録者数が700万を突破し、「名称認知」「サービス理解」の分野でもナンバー1になったとアピールします。そのうえで、「PayPayを決済分野でナンバー1のプラットフォームにしたい。何があっても大成功させたい。これからも相当な覚悟で、ガンガン投資していきます」と怪気炎を上げます。
もっとも、PayPayの収益化にはまだ時間がかかる模様。宮内氏は「PayPayのようなサービスではじめから利益を得たいと思っていたら、大きくは伸びません。新しい技術を使ったサービスだと、最初は投資先行になる。堅実に伸ばしながらも投資していくということです」と説明していました。
ドコモの分離プラン発表や楽天のキャリア参入で、揺れる通信業界。今回のヤフー子会社化は、ソフトバンクの「次なる一手」といえそうです。