多様化が進むビジネスファッション。とはいえ、「それはやりすぎだろう!」とツッコミたくなるような新社会人が、あなたの周りにいるのではないでしょうか。
のべ4,500人を超えるビジネスマンの買い物に付き添い、トータルコーディネートのお手伝いをする服のコンサルタントが、「社会人としてNGな服装」についてお伝えします。
スーツのパンツ丈は短くしない
「スーツのズボンの丈が非常に短い新人がいた」(40代男性/IT関連技術職)
ビジネスファッションにおけるパンツの最適丈は意外と知られていません。というのも、時代によって正解は変わるからです。
転機は2010年でした。ここからパンツ丈は徐々に短くなりました。20代ではもはや定番といえる「私服のアンクル丈」。とはいえ、立っている状態で明らかにソックスが見えるスーツ姿は攻めすぎです。くるぶし程度の短いパンツ丈ですが、世代が異なるビジネスマンが所属する組織においては限度がありますよね。
ビジネスシーンでは「立っている状態でソックスが見えない程度」。ソックスは下着ですから、パンツから常に下着がのぞいているような違和感を相手に与えてしまいます。
ですが、昨今では長すぎもNG! 2000年代までは、座っている状態でソックスが見えない程度が基準でした。ところが、この長さでは立っているとき、弛んだスラックスの生地が革靴にかぶさってしまいだらしなく見えます。
「座っている状態ではソックスが見えてしまうけれども、立っている状態では見えない程度」、これがビジネスパンツ丈の新定番です。
パーティースーツを仕事着にしない
「普通のサラリーマンが着るスーツではなく、パーティーで着るようなスーツで新入社員研修に参加。『誰が採用したんだ!』と社内で騒ぎになったが、本人はまったく気にしていなかった」(50代男性/事務・企画関連)
服に対する捉え方は大きく分けて3つあります。快適さを追求する「衣食住の衣」としての服。個性を演出する「ファッション」としての服。一方、人とつながる「コミュニケーション」としての服。どうやら、この新入社員はビジネスファッションを、個性の演出として捉えてしまったようです。
ビジネスファッションという言葉にファッションというワードが含まれていますが、その本質はコミュニケーションとして服を着ること。フォーマル寄りであるスーツを着ることで「相手に対する敬意を示している」ことが伝わります。
ところが、昨今ではビジネスファッションの多様化が進みました。スーツを着てネクタイを締めることが必ずしもプラスとはいえない職業が生まれたからです。たとえば、私のクライアントにこんな方がいらっしゃいます。
あるゲーム会社にスーツを着て打ち合わせに行ったところ、冗談交じりに「スーツなんて着ないでくださいよ!」と言われたそうです。というのも、エンターテイメントを追求する会社では「堅い服装が良いとは考えない」からです。
ポイントは、相手に合わせ服装を変えること。時にはスーツではなくジャケパンを着たほうがスムーズに進む商談もあります。まさにビジネスファッションとは「コミュニケーション」の一部に含まれるのです。
色あせたスーツを着ない
「スーツが色あせていた」(60代女性/クリエイティブ関連)
これはあるあるですね。普段スーツを着ない人が久しぶりにクローゼットから出したとき、スーツ生地の劣化に気づかず着ているときに起こりがちです。一方、2着でスーツをまわしていると、毎日のように見ているからこそヨレに気づけないパターンもあり得ます。
同様に、シャツ袖の先端が度重なるクリーニング・洗濯によってほつれることもあります。また、スラックスの膝裏がテカテカになっているパターンも残念な印象です。座るとき椅子との摩擦で、スラックスの膝裏は繊維がつぶれテカテカになりますが、鏡で見られないからこそ、脱いだ時に確認するしかありません。
ところが、そもそもテカテカになるということを知らないサラリーマンが多いのです。だから、確認をしないのです。
さらに革靴の「かかとすり減り」問題! これは女性がよくチェックしています。というのも、女性のヒールは消耗が早いからこそ、靴のお直し屋さんを利用しかかとを直しているからです。一方、男性はかかとがすり減っても不便はない、という発想から靴のかかとに意識が向きません。
ただし、コミュニケーションという視点からこれらの問題を捉えると意識が変わるのではないでしょうか。ビジネスファッションにおいて清潔感が大事であることは誰もがよく知る話しです。そして、清潔感とは高級品を買う事ではなく、パリッとしたキレイな状態の服を身に着けることから始まります。
そういう意味で、スーツは3着で回したいところ。繊維を休ませるということも考えた作戦です。一方、靴も3足あれば最高です。「ビジネスファッションは3が重要だ!」と覚えましょう。とはいえ、限られた予算の中でまず用意するならば、靴は2足でも構いません。
派手なTシャツをワイシャツ下に着ない
「ワイシャツの下に派手なストライプのカラーTシャツを着てきた」(60代男性/その他)
ビジネスファッションで見落としがちなポイントが肌着です。肌着は見えないと考えがちですが、明るい色を基本とするワイシャツではこれが失敗の原因。基本透けるからこそ、普段着として着ているTシャツをインナーにすることは絶対に避けたいところです。
とくにクールビズ期間。ノーネクタイでワイシャツの第一ボタンを開けたとき、首元からのぞいた肌着は生活感を印象付けてしまいます。そして、生活感こそ清潔感の天敵だったのです。また、先入観で肌着は白だと決めてしまっている方もいることでしょう。
ところが、白いワイシャツに白い肌着を合わせたとき、実は透けます。だからこそ、肌着はベージュのVネックが基本です。
第一ボタンを開けても見えませんし、白いワイシャツから透けることもありません! ビジネスファッションの極意とはおしゃれをすることではなく、清潔感を作ること。ただ、そのために気を付けるべきチェックポイントは想像以上にいろいろあったのです。
著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)
エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)