「ヨコハマいちの名探偵、ミルキィホームズです!」

おなじみの口上もまだなく、カラフルな探偵服姿に身を包み4人が現れたのは、2010年のこと(プロジェクトは2009年よりスタート)。

そこから約10年。メディアミックス作品から飛び出した声優ユニットとして走り続けてきたミルキィホームズが、2019年1月28日の『ミルキィホームズ ファイナルライブ Q.E.D.』をもってその活動に幕を閉じた。

最後にどのようなステージを見せてくれるのか注目されたファイナルライブだったが、見せてくれたのは本当に彼女たちらしい姿だった。そこで改めて感じたミルキィホームズの魅力を交えて、ライブを振り返っていこう。

出演者はミルキィホームズ(三森すずこ、徳井青空、佐々木未来、橘田いずみ)、フェザーズ(愛美、伊藤彩沙)、小林オペラ(森嶋秀太)、スペシャルゲストにアルセーヌ/アンリエット・ミステール(明坂聡美)、明智小衣(南條愛乃)。

■ミルキィホームズの歴史と何より楽しさ溢れるライブ

ついに迎えたファイナルライブ。開演時間になり、スクリーンにはファイナルを発表した時の映像から紹介VTRが流れる。会場は「いよいよだ」という感傷とライブへの期待が入り混じった、何とも言えない熱気に包まれた。

そんな武道館のステージへ順番にリフトアップして登場したミルキィホームズの4人。苦楽を共にしてきた、お馴染みの探偵服姿は何度見てきたことだろうか。いつもの姿でファイナルのオープニングを飾るのは、こちらも幾度となく歌われてきた「正解はひとつ!じゃない!!」(TVアニメ『探偵オペラ ミルキィホームズ』OPテーマ)。ミルキィホームズを象徴する曲だからこそ1曲目にうってつけだ。

さらにTVアニメ第2幕のOPテーマ「ナゾ!ナゾ?Happiness!!」と続き、さながらミルキィホームズの歴史を歌やパフォーマンスで追体験していくような感覚に陥る。その時々のことが蘇って胸にこみ上げてくるものもあったが、それ以上にやっぱり彼女たちのステージは問答無用で楽しい。武道館が笑顔と楽しさで溢れていった。

TVアニメの主題歌を中心に展開した序盤の中、そこに挟まれるように披露された新曲が「びよんど THE ミルキィウェイ」。“TEAMミルキィ”が作詞したこの曲は、『前向いて 踏み出そう 「それぞれの未来へ!」』といったミルキィホームズとミルキアンの未来を感じさせるもの。『バカになれ』というフレーズも、実際にたくさんのバカをやってきたからこその言葉だろう。

そんな怒涛のステージでファイナルの幕を開けた彼女たちだが、MCでは「ついにこの日がきたね」と感慨深げな心境も吐露。前回(2012年5月開催)の武道館公演の話になると「6年あれば他に目移りしそうなのにね」と笑っていた。確かに他のライブにも行く人は多数いると思うが、ファイナルライブに駆けつけたミルキアンに見せたのは、いつもと変わらないミルキィホームズのライブならではの楽しさだった。

とはいえ、ファイナルだからこその“特別感”は当然あり、「ミルキィ A GO GO」の前には普段舞台裏でやっている掛け声をミルキアンと一緒にやる一幕も。さらに、個性がしっかり表れたソロパート、適度な難易度とキャッチーさを併せ持ったダンス……そんな“ミルキィホームズの原点”と言わんばかりの首尾一貫した楽しいパフォーマンスを繰り広げてく。

ソロ曲のコーナーでは、徳井さんはかつての武道館さながらに上空へと舞い上がって太陽となり、佐々木さんはトロッコを使ってペンライトで彩られた緑の草原へと降り立つ。三森さんがボクシンググローブをつけて満面の笑顔でパンチを繰り出せば、橘田さんはヴェール調のマントをまとい、青いバラを手に雰囲気たっぷりのステージで魅了するなど、4人がそれぞれの演出で驚かせてくれた。

10年前もそれぞれの色、個性はあった。だが、ミルキィホームズとしてだけでなく、それぞれが多岐にわたった活躍をしてきたからこそ輝く色になる。ミルキィというフィルターを通してもなお、個性が強く感じるようになったのも4人の成長の証なのだと感じた。

■ミルキィホームズの仲間たちもステージを彩る

ソロ曲のパートが終わり、改めて4人が揃って「ミルキィホームズがやって来る、イエィ!イエィ!イエィ!」を披露すると、そこからさらに怒涛の流れ。曲によって心地よい爽やかさや熱い疾走感、激しさなどさまざまな表情を見せるミルキィホームズ。

「楽しいね! ミルキィのライブって」。みんなが同じことを思ったであろう言葉をMCで口にすると、休ませる気など微塵もないと言わんばかりに今度は「ぐろーりーぐろーいん☆DAYS」(TVアニメ『ふたりはミルキィホームズ』OPテーマ)へ。

本作は“フェザーズ”の2人が加わったことでも意味深い作品だ。今回のステージでも「ちょっと待って下さい!」と愛美さんと伊藤さんが登場して、より重厚感と楽しさを増した“ミルキィホームズ シスターズ”として「ピンチにパンチ」、さらに“フェザーズ”の2人で「セイシュンビギナー!」を元気にお届け。初ステージでド緊張していたことを知っている人は、笑顔で完成度高く披露する2人の姿は感慨深かったのではないだろうか。

『ミルキィホームズ』シリーズを彩ったのは彼女たちだけではない。森嶋さん、明坂さん、南條さんがそれぞれ小林オペラ、アルセーヌ/アンリエット、明智小衣として登場し、魅力的なキャラクターたちのステージが繰り広げられた。

森嶋さんは暖かく包み込むように「ANSWER」を歌い、その凛々しい表情や気持ちを込めて会場をゆっくり見渡す姿も印象的。黒のオフショルダーに白のスカートで登場した明坂さんは、「Brilliant Wish ~華麗なる欲望~」の曲調変化に合わせて曲中でミニスカートにチェンジ。アンリエットとアルセーヌというふたつの顔で、カッコよさとセクシーさを携えた輝きを魅せつける。

ミルキィホームズのハイパワーなラッシュを受けて登場した南條さんは、大歓声に嬉しさを噛みしめるような表情を浮かべて「ココロノエデン」を披露。明智小衣の格好良さをステージで表現してくれた。

MCではステージ上に全員が集結。こうやって全員揃ったのは前回の武道館以来かもと笑うメンバーたちは、それぞれ『ミルキィホームズ』での思い出や愛を語る。相変わらずの自由なところもあり、愛美さんが舞台裏で「go,go!! ぱわふる」の掛け声がなかったのが残念だとこぼしたので、今度は出演者とミルキアン全員で掛け声をする嬉しい一幕があった。

そして森嶋さん、いや小林オペラが「後はまかせた!」とミルキィホームズの背中を押し、ライブはついにラストスパートへ。

「まだまだいけますか!」とみんなに気合を注入すると「プロローグは明日色」からさらに熱く楽しいステージが。楽曲によって色の違いはもちろんあるものの、最後だからということ関係なしに安心して身を任せて、心から楽しんでいるのが会場の空気から伝わってきた。一方で、最後だからこそ「Day by Day ~キミと一緒に」の歌詞はジーンとくるものがあった。

本編ラストは「毎日くらいまっくす☆」から「バイバイエール!」。ハイテンションに盛り上がり、ソロパートやみんなに手を振る4人は、最高の笑顔を浮かべる。「バイバイエール!」のサビにある「違う道を行くけど 何も変わらない」は、まさにこの瞬間のことに感じて感動ひとしお。いい意味で何も変わらない、これまでもそうだったようにきっとこれからもそうなのだとステージを通じて確信させてくれた。