キリングループが、医と食をつなぐ事業に注力する。キリンホールディングス 事業創造部は、2019年4月に「ヘルスサイエンス事業部」に名称を変更。

2018年に55億円だった売上を、2027年を目処に230億円規模にまで拡大したい考えだ。都内では24日、事業戦略説明会が開催された。

  • 医と食をつなぐ事業に注力 - キリングループの狙いとは?

    キリングループが、医と食をつなぐ事業に注力していく

キリンの強みを活かす

長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」において、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」と宣言した同グループ。登壇したヘルスサイエンス事業部の佐野環氏は「キリングループでは30年以上にわたり、免疫学の基盤研究を続けてきました。

その中で、プラズマ乳酸菌、KW乳酸菌といったユニークな価値を持つ乳酸菌も発見しています。これら科学的に裏付けされた技術ポートフォリオを活かし、免疫領域において、消費者のさらなるニーズに応えていきたい」とアピールする

注:CSVとはCreating Shared Value=消費者や社会と共有できる価値の創造、の略

  • キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 部長の佐野環氏

研究成果を順次、飲料事業、医療機関向け事業の新商品に落とし込み、市場に投入していく。例えば2017年秋にスタートしたiMUSE(イミューズ)ブランドは、プラズマ乳酸菌を使ったもの。現在では飲料、ヨーグルト、サプリメントなどの分野を横断する形で商品が展開されている。同様にKW乳酸菌を配合したサプリメント「Noale(ノアレ)」の販売も4月上旬から開始した。

  • プラズマ乳酸菌を使ったiMUSE、KW乳酸菌を使ったNoale。ウイルスの感染を防ぐのがプラズマ乳酸菌、アレルギーの炎症を緩和するのがKW乳酸菌、という位置づけだ

ちなみにNoaleはもともと、キリングループが開発した商品。ヤクルトに手放していた販売事業を買い戻し、この4月1日から再発売することになった。この経緯について、佐野氏は「KW乳酸菌をさらに発展させるため、ヤクルトさんが大事に販売されてきたNoaleを円満に譲り受けました」と笑顔を見せる。

さらなる事業拡大に向けて

事業拡大に備えて、キリンホールディングスではプラズマ乳酸菌、KW乳酸菌の原料を製造する工場「iMUSEヘルスサイエンスファクトリー」も新設した。4月25日から稼働させる。需要増を見越して機動的かつ柔軟に製造計画を立てられるため、乳酸菌原料を安定的に供給することが可能になるという。

  • iMUSEヘルスサイエンスファクトリーが新設された(所在地は、埼玉県狭山市大字上広瀬1254 小岩井乳業 東京工場内)

プラズマ乳酸菌、KW乳酸菌に続く「第3弾」の素材も検討段階に入った。また今後、健康に貢献する志を持つ企業とも積極的に連携していく構え。すでにヤフー社と労働パフォーマンスの向上を共同検証しているほか、カンロ社とのコラボ商品「ピュレサプリグミiMUSE」も4月2日から販売を開始している。

  • 健康に貢献する志を持つ企業と積極的に連携していく

事業展開は国内にとどまらない。2019年6月には東南アジアに研究拠点を開設。現地の課題を把握して、消費者のニーズに応えていくとする。また、健康管理の意識が高い北米への展開も視野に入れている。

  • 東南アジア、北米などにも事業を拡大していきたい考え

さらなる成長に向けて、協和発酵バイオ社の95%株式を取得した。バイオ社を事業の中核に据え、乳酸菌などの素材の活用、ECサイトにおける販売の強化、海外展開など、双方の強みを最大化していく方針だ。

  • さらなる成長に向けて、協和発酵バイオ社の95%株式を取得済み

質疑応答には、引き続き佐野氏が対応。ECの強化について聞かれると「健康に関するソリューションについては、そのときに欲しい、というニーズが顕在化しています。すぐに欲しい、明日欲しい、すぐに家族に飲んでもらいたいから、そうした声に対応できる販売方法としてECサイトの活用を考えています。キリンでも協和発酵バイオ社でもECサイトを運営しているし、Amazonの方が買いやすいという方もいらっしゃる。お客様がイチバンお買い求めやすい方法を調査した上で、展開できればと思っています」と回答した。