3月20日に発表されたH1チップ搭載の新型AirPods。製品の使い勝手にかかわる性能について、もう少し深掘りしていこう。

  • H1チップを搭載して機能強化を図った新しいAirPods。3月下旬の販売開始から品薄の状況が続いており、アップルストアではいま注文しても約1カ月後の納品となる

独自チップの進化

Appleによると、H1チップの「H」が意味するところは公式には明らかにしていないが、AirPodsの紹介ページには「H1 headphone chip」という表記がなされており、H1がヘッドフォン製品向けに用意されたシリーズであることがうかがえる。

これまでのAirPodsに採用されていたW1チップは、おそらく「Wireless」の「W」であると考えられ、Bluetooth接続とオーディオのデコードの役割を担っていたと考えてよい。Bluetoothは、実際の利用で30m程度をカバーできる100m通信の規格「Class 1」に対応していた。

  • 初代AirPodsはW1チップを搭載していたが、新しいAirPodsはH1チップに置き換えられた

Appleはその後、Wシリーズのチップを「W2」「W3」と発展させているが、AirPodsには採用せず、Apple Watchへの採用を進めていった。Apple Watch Series 3に搭載されたW2では、Wi-Fiの通信速度を85%高速化し、BluetoothとWi-Fiを50%以上省電力化した。最新のApple Watch Series 4にはW3チップが搭載され、Bluetooth 5.0をサポートした。

一方、今回第2世代のAirPodsに採用されたH1チップも、W3と同様にBluetooth 5.0を採用し、W1に比べて遅延を30%改善している。

Bluetooth 5.0は、低消費電力のLEにおいて従来の2倍の通信速度となる2Mbpsを実現し、通信範囲の拡大や低遅延などが果たされた。Bluetooth 5.0に対応したH1チップの搭載で、新AirPodsは通信速度(=帯域)の拡大と省電力性、そして低遅延という性能を新たに獲得した、と考えてよさそうだ。

Qi対応のワイヤレス充電ケース

第2世代のAirPodsには、ワイヤレス対応音充電ケースが付属してくる。これまでと同じように、左右のAirPodsを収納しながら充電できるケースで、Lightningケーブルによる充電にも対応するが、これに加えてケースの背面がQi規格でのワイヤレス充電に対応するようになった。

これにともなって、これまで上部のカバーを開けた内側にあった充電状態などを示すランプは、ケースの外側に移された。ランプの位置でケースの世代を見分けられるようになったわけだが、それ以外はヒンジのメッキの質感など、非常に細かい部分の違いしかない。

  • 新しいAirPodsのケースは、充電状況を示すインジケーターランプがケースの外側に移された

AirPodsケースは単体でも8,800円で販売されるので、これまでのAirPodsを使ってきた人はケースをワイヤレス充電対応に取り替えられる。ただ、もし1年半~2年ほど初代AirPodsを使い続けているならば、内蔵バッテリーが劣化してきて、音楽再生時間以上に通話時間が持たなくなってくる。2016年10月に使い始めた筆者のAirPodsは、音声通話時間が1時間も持たなくなったほどだ。

そのため、AirPodsを気に入っているならば、ケースを単体で買うのではなく、AirPodsごと買い替えてもよいかもしれない。前編の記事に書いたとおり、AirPodsに新たに採用されたH1チップのおかげで、音声通話時間が50%伸び、低遅延やHey Siriなどのメリットを享受できるからだ。

ワイヤレスケースの使いどころ

2016年に初代AirPodsが登場した際、ワイヤレス充電ケースは別途販売されることがすでにアナウンスされていた。しかし、それから2年以上が経過した新型AirPods発表のタイミングで、ようやく投入されることになった。

本来であれば、AirPodsのワイヤレス充電は、3台のデバイスを同時に充電できるAirPowerとセットで体験できるはずだった。しかし、AirPowerは2019年3月末の段階で開発中止が決定し、幻の製品となってしまった。これについては、別途まとめたいと思う。

  • ついに開発中止が決まってしまったAirPower

iPhone 8/X以降のiPhoneは、Qi規格でのワイヤレス充電に対応している。Apple Watchは、独自のワイヤレス充電器でしか充電できないものの、2015年の発売当時から非接触充電を実現していた。AirPodsは、Apple製品としては3つめのワイヤレス充電デバイスとなったわけだ。

AirPowerは、iPhoneやApple Watch、AirPodsを毎日使う人にとって理想的な充電ソリューションとなるはずで、待っていた人も多かったはずだ。AirPowerの登場を待ちきれず、1台だけ充電できるサードパーティー製のワイヤレス充電パッドを用意し、iPhoneだけをワイヤレス充電している人もいるだろう。

すでに、Qi対応のワイヤレス充電パッドを持っているなら、AirPodsケースを載せればすぐに充電が始まる。実際、これまでもAirPodsを充電するのは3日に1度程度で済んでいたことを考えれば、ふだんのiPhone充電の邪魔にならず、1台の充電パッドでも大きな不便はないだろう。

  • すでにiPhoneでQi対応ワイヤレス充電パッドを使っているなら、AirPodsでもそのまま使える