いいえ、無理です。現在流通しているスマートフォンは、いわゆる「4G」もしくはそれ以前のモバイル通信規格に対応しているものの、「5G」には対応していません。5Gに対応するためには、5G対応の「モデム」を搭載したスマートフォンが必須になります。
モデムとは、アナログ信号とデジタル信号を相互に変換する機器/集積回路です。デジタル機器間でデータのやり取りを行う場合、電圧の変化による信号を送受信しますが、それは数メートル、数十メートルといった近距離でのこと。長距離ではノイズなどの影響により電圧変化を正しく検知できなくなるため、データを交流信号に変換(変調)してから伝送を行います。モデムは、この一連の処理における中心的な役割を果たします。
しかし、通信規格が異なれば使用される周波数帯も異なり、モデムにも異なる処理への対応が要求されます。たとえば、4G用モデムは5Gの通信仕様に対応した変調処理が想定されていない設計のため、5Gのモバイル通信には対応できません。
スマートフォンのモデムは、独立して存在するICか、頭脳部分(SoC)に組み込まれる形になります。数ギガビット/秒というデータレートを実現するためには、高速/大容量に対応した変調処理が必要になるため、3Gよりも4G、4Gよりも5Gと、より高性能なモデムが求められます。つまり、スマートフォンを買い替えないかぎりは、新方式の通信規格には対応できません。
なお、「5G」と一口で言われますが、次世代の新技術が段階的に導入されることが5Gという技術体系の特長です。5Gの標準化を担う3GPPでは、最初に導入される仕様(リリース15)ではLTEとの連携を前提とした構成とし、すべての技術性能要件に対応した仕様(リリース16)を2019年末までに策定するとしています。スマートフォンの5G対応が本格化するのは、それ以降になります。