4月16日、NTTレゾナントはAI技術を活用したチャットボットの新サービスを発表した。ポータルサイトであるgooの技術を背景に、従来の法人向けのサービスを強化しつつ、新たに個人向けサービスにも参入する。
日本の人手不足などを背景に、ユーザーの問い合わせにAIが答えるチャットボットが大きく注目されている。その中でNTTレゾナントは既存業務の効率化にとどまらず、新たな付加価値の提供にチャットボットを応用していく構えだ。
「本音」を引き出す“チャットボットならでは”の魅力
チャットボットは、メッセージに反応して自動的に返事を返してくれる会話プログラムだ。かつては単純な受け答えしかできなかったが、ここ数年、機械学習などのAI技術を用いて学習を積み重ねることで、急速に進化している。
この分野において、検索エンジンやQ&Aサイト蓄積されたデータに基づく「gooのAI」技術を保有するNTTレゾナントは、企業向けにAI技術を用いたチャットボットをセミオーダーで提供するサービスを展開してきた。
たとえば日本テレビのドラマ向けには、登場人物を模したAIキャラクターとLINE上でチャットを楽しめるサービスを提供した。AIはドラマの内容を学習することで、設定に沿った受け答えができるという。
さらに今年の3月1日には、日本航空が就活生向けのAIチャットボットにgooのAI技術を採用した。実際のOB訪問では聞きにくい質問でも、AIが相手なら気軽に聞ける。日本航空は個人を特定しない形でデータを分析し、就活生たちの「本音」を探れるというわけだ。
さらにNTTレゾナントは、チャットボットを販促やマーケティングに活用する「対話AI型Web接客支援プラン」を発表。消費者と雑談しながら商品提案や販売につなげていく方向性を打ち出した。
その背景には、これまでチャットボットは問い合わせ業務の効率化など「守り」を主体に活用されてきたが、今後はニーズの発掘やアップセルなど「攻め」のツールとして訴求したいとの狙いがあるという。
個人向けサービスは成り立つか
次に、NTTレゾナントはコンシューマー向けのサービスも発表した。gooのAI技術を活用したチャットボットをエンドユーザーが簡単に作れる「goo botmaker( グー ボットメーカー)」だ。
これまで企業向けのチャットボットは、NTTレゾナントのAI技術者が開発してきた。goo botmakerは、これをエンドユーザーに開放するものだという。高度な作り込みは難しくなるが、多くのユーザーの集合知を利用して面白いボットを作り出す仕組みだ。
将来的には家族やペット、架空のキャラクターなどを自由にチャットボット化することも視野に入れる。ただ、こうしたサービスを広く提供するには権利関係などの課題が多いという。同社はまず、この取り組みの第1弾として6月公開予定のアニメ『フレームアームズ・ガール』とのコラボレーションする。
プロジェクト開始にあたって、NTTレゾナントはチャットボットに学習データを入力する「研究員」を100名募集。さらにそこから5,000円の参加費を徴収することで、ビジネスモデルやサブスクリプション化の可能性も検証するという。学習データは承認制にすることで、アニメの世界観を守っていく構えだ。
実際に100名のユーザーで魅力的なチャットボットを作れるかどうかは、手探りの部分が多い印象だ。だが、最近ではVTuberの人気が高まっているように、リアルとバーチャルの境目で活躍するキャラクターは増えている。gooのAI技術により、こうしたキャラクターたちが新たな進化を遂げる可能性が見えてきた。
(山口健太)