第32期竜王戦ランキング戦1組の戦いが佳境に入っています。
1組は16人の棋士が参加し、5人が広瀬章人竜王への挑戦権を争う決勝トーナメントに進出します。16人トーナメントの優勝者が1位、準優勝者が2位、準決勝敗退者同士で対局(いわゆる3位決定戦)し、勝者が3位となるのは他競技でも採用される一般的なトーナメントのルールと同じですが、2回戦の敗退者4人によるトーナメントの勝ち上がり者を4位、1回戦敗退者8人によるトーナメントの勝ち上がり者を5位とし、5人の本戦入り棋士が選ばれます。今期のランキング戦1組は16人のランキング戦でベスト4が出そろい、1回戦敗退者による5位決定戦も佐藤康光九段と久保利明九段が決勝まで勝ち上がり、あと1局で5位が決定するところまで進みました。
同じ本戦進出でも表の通り1位から5位までは挑戦権獲得への有利さが異なり、5位の棋士は5勝が必要なのに対し、1位(表では1組優勝)の棋士は3勝で挑戦権が獲得できる「スーパーシード」となっていますから、各棋士少しでも良い順位で本戦に進みたいところです。
ランキング戦ベスト4のメンバーおよび準決勝の組み合わせは渡辺明二冠―木村一基九段、羽生善治九段―永瀬拓矢七段。
渡辺二冠は竜王獲得11期、棋界で初めて「永世竜王」の称号を得ていて、本棋戦とは好相性。木村九段はタイトル挑戦6回も初戴冠に手が届いていませんが、今度こその気持ちで臨んでいることでしょう。両者のこれまでの対戦成績は渡辺二冠の11勝、木村九段の6勝。
羽生九段は前期31期七番勝負に敗れ失冠、タイトル通算100期の夢も持ち越しとなってしまいましたが、今期本戦まで1勝のところまで勝ち上がりました。ただし相手の永瀬七段をやや苦手としていて、これまでの対戦成績は羽生九段3勝、永瀬七段6勝となっています。第4期叡王戦七番勝負で高見泰地叡王に挑戦中、現在シリーズ成績を2勝0敗とし、初タイトル獲得まであと2勝と迫り勢いに乗る若手を抑えられるでしょうか。
4位決定戦にも触れておきましょう。1回戦の組み合わせは豊島将之二冠―山崎隆之八段(※4/16対局)、屋敷伸之九段―稲葉陽八段。この勝者同士の対局に勝った棋士が本戦進出となります。
渡辺二冠、豊島二冠がさらなるタイトルを狙うか、木村九段、悲願への再チャレンジか、勝ち上がり者唯一の20代・永瀬七段が駆け抜けるか、それとも、羽生九段が100期の夢を見るか……例年6月下旬頃に始まる本戦トーナメントを目指し、各棋士が最終決戦に臨みます。