通信チップの特許を巡って対立していた米Appleと米Qualcommは4月16日 (現地時間)、和解合意を発表した。全世界において2社の間の全ての訴訟を取り下げる。また、Qualcommからの特許ライセンスおよびチップセット供給の契約を締結したことも明らかにした。

スマートフォンに使用される無線通信技術のライセンス条件が不当であるとして、2017年にAppleがQualcommを提訴。Appleがライセンス料の支払いを停止し、パートナー企業のいくつかも同社に続いた。Qualcommの2018年10~12月期の売上高は前年同期比20%減。中国のスマートフォン需要の低迷もあったが、Appleとの訴訟に伴うライセンス収入の下振れも影響した。それに対して、Qualcommは同社の知的財産をAppleが侵害しているとして米国内外で訴えを起こし、中国やドイツではiPhoneの一部の機種の販売差し止め命令が下された。

詳細は明らかになっていないが、合意内容にはAppleからQualcommへの支払いが含まれる。 特許ライセンスの期間は2019年4月1日から6年で、2年間の延長オプションを含む。また、チップセットの供給合意は複数年に及ぶ。

Appleは提訴に踏み切る前から段階的にQualcomm製品の採用比率を引き下げ、2018年秋のiPhone新製品ではQualcomm製品を排除。長期戦の構えを示していた。それが一転、和解合意に達した背景にはスマートフォン市場の成長減速がある。

和解合意が、Qualcommの特許をライセンスするApple以外の企業にとっても、Qualcommの商慣習を巡る問題の改善につながるかは不明だが、次世代の高速通信規格「5G」への移行に関して和解は携帯産業全体から歓迎されている。携帯産業では2019年から5Gへの移行が芽ぶき始めており、5G対応の通信チップの開発はQualcommがリードしている。AppleがQualcommを排除したまま、他のメーカーまたは自社開発のチップセットを採用する計画を進めるなら、2020年のモデルでもiPhoneが5Gをサポートできない可能性が指摘されていた。LTEの時はAndroid端末に続いてiPhoneが対応したタイミングで普及が加速しただけに、iPhoneの5G対応の遅れが"次のモバイルの進化"に与える影響が危惧されていた。