3月某日、グローバル人事塾が経営層や人事責任者向けの勉強会を大阪で開催。50名ほどの参加者に向け、転職サイト「リクナビNEXT」の藤井薫編集長(以下、藤井さん)、「doda」の大浦征也編集長(以下、大浦さん)の2人による熱~いトークバトルが繰り広げられたので、トーク内容を紹介します。
2人の簡単な自己紹介のあと、対談へ進みます。参加者から聞きたいテーマを多数決で決め、その中で、参加者の中で人気が高かったのがこちら。
2020年以降の求人広告はどうなる
気になりますよね、実際のところどうなっていくんでしょうか? まずは大浦さん。
大浦さん「よく求人メディアの未来ってどうなるのか? とか、求人広告の価値って何なんだ? という話を問われることが多いのですが、前提、僕は求人媒体はなくならないと思っています」。
絶対に求人広告はなくならないと自信ある大浦さん。理由はというとー。
大浦さん「求人メディアという非日常の空間は、普段は触れない情報が飛び込んでくるので、それを日常的に扱うプロ(編集者)が可視化できるよう工夫をしています。採用に限らず『採用マーケティング』という形でプロモーションしている企業もあるんですが、基本的には求人サイトの価値は2つあって、1つは価格。工夫次第で、採用コストを押さえられる手法に価値を感じていただいている。
もう1つは、『自社がマーケットからどう見られているか』を知れることです。『採用できる、できない』、企業規模や採用ブランドに関わらず、自社の何が魅力なのか、何を改善しないといけないのか等の材料を得られることは、価値ではないでしょうか。ただ、今現在ある転職者と採用者をつなげるマッチングという形は変わっていくとは思います」
なるほど。求人メディアの価値は理解できました。では変わりゆく未来はどうなっていくのでしょうかー。
日常性をどうプロモーションできるか
大浦さん「日常性のある広告をいかにプロモーションできるかというキーワードかなと思います。では日常性とは何か? それは社内の雰囲気、どんな人がいてどんな人が活動しているか。そうした情報が、どうプロモーションされていくかという必要性があって、それがうまくいくと、採用につながっていくんじゃないかと。
『安く求人広告出して採用しましょう』じゃなくて、求人メディアは日常的に企業ブランディングをするプロモーションサイトっていう風になっていって、その日常性に共感を持った人たちが『なんとなく接点を持ち続ける』ということになって、場合によると、採用につながるかもしれない。あり方はそう変わっていくのかなと僕は思います。タレントアクイジションという考え方も同じようなことだと思います」。
今後の採用手法の決め手は「日常性」となるわけですね。大浦さんの求人広告の未来への話がだいぶ熱く響きましたが、藤井さんはどうなのでしょうか?
藤井さん「求人広告の役割は、(求職者と企業の)情報の非対称性の解消である、という原則は、情報が溢れた2020年でも、とても重要だと思います。現代は、オンラインで探せば、一見、すべての情報が手に入るようにみえますが、実は、一番肝心なところは手に入らない。つまり情報の非対称性は、2020年も解消されていないと思うんです」。
さすが藤井さん。発言が深いです。
藤井さん「では、デジタル化・AI化が進んでいく2020年以降の求人広告においても、依然として解消されない"情報の非対称性"、言い換えれば、一番手に入らない肝心な情報とは何でしょうか? ……それは、自らの外側の情報ではなく、自らの内側の情報なのです。
個人でいえば『一体、自分は何者で、自分は何を大事に、人生をどう歩んで行けばいいのか』という情報です。こうした答えは単にオンラインを検索しても載ってないですよね。『自分の目は、自分で見れない。自分の指は、自分で指せない』という言葉があるように、人生の岐路において、自分の人生に大事なものは見えづらいものです。
企業も同様です。『自分たちの会社は何者で、今後何を大事に歩んでいけばいいのか。経営戦略を加速する未来のリーダー人材をどう定義し、どう求心していけばいいのか』。これらも検索しても答えはないんです」。
それでは、答えが出ない中、今後、転職活動をする個人、ならびに採用活動をする企業はどうしていけばいいのでしょうか。
求人広告は鏡のようなもの
藤井さん「皆さんは、鏡という漢字をご存知ですよね。それを平仮名に開くと、か・が・みとなりますね。その3つの平仮名の真ん中にあるのが、"が"(我)。そして、それを挟んでいるのが、か・み(神)です。何だか、凄くスピリチュアルなものを感じませんか(笑)。
よく自分を映す鏡っていう言葉がありますが、まさに、求人広告は、 "神の視点的に(笑)"自らを客観的に映し出す"鏡"(神・我・見=か・が・み)のような価値があるのあだと思います。個人でいえば、求人広告の言葉に多く触れることで、自分の心は何に一番響くのか? 自分は本当は何をしたいか? が見えてくる。つまり、情報の非対称性の一番深いところにつき当たると思うんです」。
いや~藤井さん、かなり深い。求人広告は自分を映す鏡だということですね。
藤井さん「企業もそうだと思います。どんなに経営コンサルタントを使って戦略案を見たところで、自社の未来へのありたい姿は見えてこない。でも未来のリーダー人材採用のための求人広告でのターゲット設定やメッセージングに真剣に向き合うことで、本当は自社は何者で、何をしたい企業なのか? そして誰を欲しているのかが見えてくる。
このように、求人広告は、求職者個人や求人企業双方にとって、自らの深部にある本心を映す鏡になってくるんです。転職サイトの価値を実現する方法は、時代によって変わっていきますが、この鏡という価値は失わないと思います。そういった意味で求人広告は自分を映し出すようなメディアであるべきだと思っています」。
ということで、スピリチュアルな話ばかりになってしまったと照れる藤井さんですが、お2人のお話で採用手法の未来が見えてきました。
この後は、転職マーケットの未来についてトークが展開されましたが、これは次回でご紹介します。