佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦する第77期名人戦七番勝負は、第1局が4月10日(水)から東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われ、同日15時2分に58手で千日手が成立。翌11日に指し直し局が行われることになりました。
33年ぶりの1日目千日手という波乱の幕開けとなった第77期名人戦
千日手とは、お互いが同じ手順を繰り返すことにより、同一局面が4回出現したときに成立するもの。その対局は引き分けとなります。通常は、同日に休憩を挟んだ後に指し直しの対局を行うのですが、本局は2日間をかけて行う対局の1日目。名人戦対局規定に則って、指し直し局は翌11日に行われることになりました。なお対局規定によると、15時以前に千日手が成立した場合はその日のうちに指し直し局を行うことになっており、あと数分千日手成立が早ければ、同日に指し直し局が行われることになっていました。
2日制対局の1日目に千日手が成立したのは、昭和61年に行われた第35期王将戦七番勝負の第3局、中原誠王将-中村修六段戦以来、実に33年ぶりです。2日制のタイトル戦で千日手が成立することはしばしばあるのですが、そのほとんどは2日目に起こっており、1日目に千日手が成立するというのはかなりのレアケースなのです。
なぜ1日目の千日手が珍しいのでしょうか。かつてのタイトル戦は、1日目はじっくりと駒組みを行い、本格的な戦いは2日目にというペース配分が普通でした。しかし近年は、勝負どころでじっくりと持ち時間を使うため、課題となっているテーマ局面まではハイペースで進める時間配分が主流となっています。そのため、1日目の早い段階でのっぴきならない局面に進み、結果として本局のように佐藤名人が早い時間のうちに千日手を選ばざるを得ない状態になったのです。
つまり、33年ぶりに起こった1日目の千日手は、現代の将棋戦術が進化を続けていることのひとつの表れとも言えましょう。
誰もが予想外のスタートとなった第77期名人戦。第1局の指し直し局は11日に行われます。